学生時代、古文書学を2年間聴講していた。当時は2週おきくらいに新しいテキストを読んでいたわけだが、卒業すると、博物館で目にする程度になってしまった。読む力は落ちていく一方だ。
この本はかわら版を含めた江戸時代の刷り物を、原文のまま読もうというものだ。かわら版紹介の本は何冊か読んだが、それらはかわら版を歴史・民俗の資料として紹介しているもので、その解説が中心。読み下し文も申し訳程度についているか、モノによってはなかったりする。読む練習に飢えている自分は少なからず不満だった。
この本を本屋で手に取ったときは、ようやく探していた本に出会えた気がして嬉しかった。何年も探していた本を古本屋で見つけたときのような気分だった。
読む練習だけでなく、豊富な刷り物の世界を楽しめた。読みながら、かわら版に抱いていた「ニュース」のイメージが粉々に吹き飛んだ。
たとえば「なまず絵」は、地震直後のものなのに災害を嘆くものがないという。なるほどギャグばかりだ。筆者は「なまず絵」に、
災害の恐れ・悲しみ・絶望を笑いとばして生き抜こうとする民衆の力強さを感じます
という。これを読んでいた9月は、台風やハリケーンの大きな被害が連日のように報じられていた。死者も出ているし、笑える状況ではない。こんな「なまず絵」みたいな報道は許されないだろう。
「読み」が中心なので歴史探求には物足りないが、それは百も承知。
いちおう初心者向けに、最初に変体仮名(筆者は「江戸かな」と呼ぶ主義らしい)の読みの練習をして、それから実際に読み下していく構成になっている。しかし、かわら版を読むには変体仮名がわからないとどうしようもないのは確かだが、それだけでは不十分だと思う。独特の言い回し、たとえば難しいというときの「
興福寺の宝物、しかも大好きな鎌倉期のものばかりが集合するというので、とても楽しみにしていた展覧会。
会場は上野公園に隣り合った芸大美術館。実は初めて入ったのだが、立派な建物でびっくりした。展示は地下2階と3階の2フロア4部屋で、\1,300の入場料の割には小規模と言える。しかし当初の期待以上にすばらしい展示で、入場料に見合った以上の内容だと思った。
開場時間の10時ジャストに到着するが、入口前には人がいなかった。空いてるじゃんラッキーと思い会場に入る。受け付けを済ませ、最初の展示室の地下2階へ。エレベータで降りると・・・ げっ、結構混んでる。東博で開催される展覧会ほどではないが、入り口付近は黒山の人だかりだった。
これはやばいと思い、地下の展示室はスルーして3階展示室に行くことにした。3階には国宝・重文級の仏像が集結してすばらしいという情報を事前に得ていたからだ。
3階の展示室はエレベータをおりてすぐ右。さすがに開館直後、まだ5人くらいしか人がいなかった。
広々とした3階を5周くらいは周っただろうか。徐々に人が増えてきた。そこであらためて地下の展示室に行くことにした。
地下はすごい人だった。人垣の後ろから流して見たが、あまり目を引くものはなかったので、再び3階に戻り、2周くらいまわった。
というわけで、ほとんど3階だけで1時間を過ごし、大満足して11時過ぎに会場を後にした。
無著・世親や仁王像が来ていることは知っていたが、谷啓が来ていたのは意外だったので嬉しかった。でも記念絵はがきになかったのは残念。あまり注目されないのだろうか。
また、これだけのスターが出開帳に出ているということは、今後1年間は興福寺に行ってもあまり面白くないだろうなあと思った。
西郷像のそばの馬料理「天國」でランチを食べてから帰った。熊本の店らしい。私は桜カツ定食を食べたのだが、もうちょっと獣くさくてもよかった。次はぜひステーキを食べたいと思ったが、休日の昼だというのにガラガラだったのでちょっと心配だ。
(東京藝術大学 大学美術館・2004年10月10日観覧)
またピカソかよ・・・
と、最初鼻にもかけていなかった展覧会。しかし、ふとしたことから招待券をゲットしてしまった。ピカソは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。でもピカソ展はしょっちゅうやってるので食傷気味だし、会場がアレだし・・・ 大丸東京のワインフェアに行くので、それじゃあついでに見てやるか、くらいの軽い気持ちで出かけた。
結論からいうと、よい展覧会だった。軽い気持ちだったので、カウンターパンチをくらった。
軽視していたのには訳がある。それは主催が東郷青児美術館だということ。
ここは、バブル絶頂期に、なんと会社の百周年記念だかで、ゴッホの「ひまわり」をン十億だかで落札して、しかもそれを神棚に祀るように飾っているという、成金根性丸出しの恥知らずのアホ美術館だ。主催の展覧会も、印象派みたいな一般受けするようなのばっか。そんな、蒐集にも企画にもポリシーのないところが主催するのだ、期待のしようもない。私が美術展を見に行くようになったのは高校生の頃だから、もうかれこれ20年近くになる。しかしそんなわけで、安田火災時代から、この美術館に足を踏み入れたことはなかった。若い頃は、金をもらっても行きたくないと思っていたくらいだ。
というわけで、カウンターパンチだったのだ。油彩が60点もあるというのが大きいと思う。
カタログは買わなかった。絵葉書を7枚買った。絵葉書は、実作品の寸法が載っているところはいいと思った。たっぷり1時間鑑賞して、会場をあとにしたのは11時過ぎだった。
昼食は高島屋に行った。本当は
(損保ジャパン東郷青児美術館・2004年10月23日観覧)
10月23日、半年に一度の、東京駅の大丸のワインフェアに行ってきた。今回、予約はブルゴーニュを中心に11本だった。
年々ボルドーがおもしろくなくなっていく。以前は古酒も結構あったのだが。ブルゴーニュも予約中心だし。ということで、勢い、会場ではアメリカやオーストラリアのものを中心に漁ることになった。
以下、印象。
フランスでは、その栽培の難しさ繊細さゆえに淘汰され、長い間見失われていた高級品種カルメネール、チリの恵まれた大地にて復活という説明だが、試飲したらちょっとミントみたいな香りが強かったのでNG。
イタリアの「幻の銘酒」のひとつイル・カベルロ。通常マグナムサイズしか造らない蔵元が唯一750mlに詰めた年で、イタリア・コレクター垂涎の品ということだが・・・ 限定3本、予約とれず。残念。
結局、会場で選んだのは5本とちょっと少なめだった。意外にもドイツワインが多かった。あと、ビールバーもあった。今回はワインを先に飲んでしまったのでパスした。そういえば有料試飲があまりおもしろくなかった。オールドボルドーに偏りすぎだと思った。あ、でもDRCのリシュブールとかもあった。でも1杯3,800円じゃ飲まないけど。
3本だけとはいえ、50万円のロマネ・コンティが売り切れってのは、どういうことなんだろうなあとか思ったりした秋の午後。
ちょっと前のYahoo Newsによれば。
新潟県中越地震による土砂災害で道路が寸断され、周囲から孤立した同県長岡市蓬平地区で26日、報道関係者6人が航空自衛隊のヘリコプターで救助された。県災害対策本部は「孤立地区に入り込んだ経緯は分からないが、自ら入り込み、帰りは救助ヘリというのであれば、救助活動の著しい妨げとなる」として、報道各社に抗議した。(時事通信) - 10月26日23時1分更新っつうことなんですけど・・・ まあ、「報道関係者」だから、TVとは限らないんですけどね・・・
私はネットを中心に情報を収集している。今回は2ちゃんねるがとても役立っている。なにぶん2ちゃんねるなもんで真偽は慎重に見極めなければいけない。しかしそれでも、明らかに、ボランティアで現地に行った人や被災者自身の書き込みと思えるものが数多くある。はてなの天漢日乗は、2ちゃんからこまめに情報を拾ってきて蓄積しており、ざっとチェックするのに便利なのでよく覗いている。帰宅してTVで1時間ニュースを見るのなら、ここと Yahoo News をチェックする方が情報量ははるかに多いし、巡回には1時間もかからない。
ごく控えめに言って、今回の震災に関しては、ネットでの情報の方がTVよりもはるかに多いと思う。
TVでは、避難所の映像や、避難所生活の苦労ばかりを放送している。もちろんそれは意義のあることだ。しかし、繰り返し繰り返し放送しなくていい。被災者の暮らし振りも気になるところではあるが、そこまでしつこく見せてくれなくていいと思うのだ。避難所の中を映しながら「プライバシーのない避難所では精神的疲労が・・・」って、余震に怯える顔やら寝顔やら、全国に晒してんのお前らだべ。見ているこっちが、まるで他人の家の中に入り込んでいるように感じてイヤな気分になり、思わずチャンネルを替えてしまう。もういいかげんにしてくれと言いたい。見ているこっちがそう思うんだから、見られている方はもっとイヤな思いをしているはずだ。
2ちゃんねるの書き込みによれば、どっかの民放では、友だちを亡くした小学生にインタビューして泣かせてしまったとか。亡くなった友だちのことを思い出させるようなことを聞いちまったんだそうだ。子ども相手なのに配慮が足りないっつうか、なんつうか・・・
にしても、いったいどういうつもりで放送したんだろう? そのテのインタビューって録画したものを放送するのが一般的だと思うのだが、だったら放送しないこともできる。いや、きっと生中継だったんだろう。まともな人間だったら、そんな残酷なシーンは放送できないはずだ。それを承知で放送するってのは厚顔無恥というか、鬼・・・
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