KATZLIN'S blog

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山の社会学(文春新書)2004-12-07 22:08

題名に惹かれて買ってしまった。本を選ぶときはいつも巻頭言と目次と奥付と著者略歴には必ず目を通すのだが、待ち合わせに遅れそうだったので、よく見もせずに題名だけで買ったのだ。山好き且つ本好きの自分としては、こんな題名を見ては抛ってはおけない。そう、魔が差したのだ。

それまで読んでいた本を読み終わり、本書をいざ読もうと思ってあらためて目次を見ると、ぱっと見ではなんとなく山の環境(environment)について書かれている本のように見受けられた。ふむふむと思って「はじめに」から読みはじめると・・・ぜんっぜん違うじゃん。『山の社会学』というタイトルも、単なるエッセイではないとの思いで付けたという。なにこれ、ひょっとして、逆にこの本はエッセイなんだってこと? エッセイが読みたくて買ったんじゃないのに。
で、読み進めると、やはりエッセイだった(泣)。より正確には、新聞記者である筆者が、自分で取材したデータをエッセイ風にまとめた、という感じだろうか。「社会学」を名乗る以上、登山という一つの社会を論理的に解明しているものと期待したのに、論理もへったくれもない。聞いたこと・見たものを羅列して、ちょこっと感想が書いてある。まあ blog みたいなもんですね(笑)。そのつもりで読めばなんてこともないのだが。てか、そんな本だと知ってたらまず買わない。そんなのウェブにはいっぱい転がってて、タダで読める。

まあ、よく確かめもせずに買った自分が悪いといえば悪い。でもこれに「社会学」はいくらなんでもひどすぎる。途中で読むのをやめようと何度も思ったが、もったいなくてつい読んでしまった。後から思えば読んだ時間がもったいなかったか。途中からはもう、ツッコミを入れることを主眼に読んでいた。
それでも強いて収穫を挙げるとすれば、最終章「もう一つの登山の楽しみ」だろうか。日本アルプスの好展望台や、奇岩怪石観察の視点などについてのヒントが得られる。でも、それだけ。それに、そんなのはガイド本の領域だろう。

(菊地俊朗著、平成13年)(2004年11月28日読了)文春新書は奥付が和暦だということに初めて気づいた・・・

屋久島 ―四季・生命の輝き―2004-12-09 22:28

5.1chサラウンド放送のハイビジョン特集「世界自然遺産を行く」シリーズの第4弾は日本の屋久島。
いきなり雪のたくさん積もった映像に始まって、春・夏から秋へと、四季を通して見られた。(2時間のうち、秋は10分もなかったけど)。いくら標高が高いとはいえ、鹿児島より南にある島にあんなに雪が積もるというのは、知ってはいてもどうも違和感を覚える。有名な縄文杉も、冬は根元のほうが雪に埋もれていた。


日本アルプスや北海道などの東-北日本の山ばかり歩いているので、あまり馴染みのない花々も多くてたいへん興味深かった。
また、夏の終わりにつぼみをつけて冬を越し、8ヶ月後に咲くというヤクシマシャクナゲだとか、日本で一番多くアカウミガメが産卵にくるのは屋久島なんだとか、勉強になった(徳島あたりだと思ってた)。

5.1chのサラウンド感もなかなかよく、渓流を遠くから近くへと連続して映したシーンでは、音も遠くから近くへと移動する感覚があった。台風、とくに濁流なんかはかなりの迫力だった。試しにプロロジックIIで見てみたら、細かい風の音なんかが聞こえなくなってしまった。なるほど、ドキュメンタリー番組をサラウンドで放送するとこういう効果があるのか。
森田美由紀アナの声も聴き疲れのしないいい声だ。あまり声が低いとウチのヤマハTSS-15では音が割れてしまうのだが、一番低いぎりぎりのところにあるみたいだ。三國連太郎の語りも渋くて良かった。

屋久島は縦走してはみたいけど、遠いうえに雨が多いのがネックだ(梅雨時は日本の年間平均降水量の半分近くが1ヶ月で降る)。その気になるまでは録画したこの映像で楽しもうと思う。(NHK BS-hi/2004年12月9日放送)

紅葉の鎌倉散策2004-12-11 23:24

朝起きてみたら思いのほか天気が良かったので、久々に鎌倉にでも行こうという話になった。鎌倉はもうずいぶん長い間ご無沙汰だ。今時分は紅葉がきれいだろう。
鎌倉で一番紅葉が美しいのは、自分は覚園寺かくおんじだと思っている。今日はその覚園寺を中心に、二階堂のあたりをうろつこうということで出かけた。獅子舞のあたりも紅葉がすばらしいと聞くので、できれば寄ってみたい。

しかしいかんせん、起きるのが遅すぎた。鎌倉駅に着いたのは14時。覚園寺は毎正時に案内付きでの拝観で、所要時間は1時間(説明が長いのだ)。最終の15時の回に間に合った。しょうがない、今日は覚園寺だけ見られればいいや。


門前のもみじは散っているものとまだ青々としたものとが混在し、なんだかヘンだった。境内の紅葉もいまひとつだった。案内人の話では、今年はずいぶん紅葉が遅れており、ピークはまだまだ先だという。ひょっとすると12月下旬くらいになるのではないか、という話だった。しかし、覚園寺の拝観は年内は12月19日まで。ということで、今年は覚園寺の紅葉は見られないということに相成った。ただ逆に、例年この時期には落ちてしまっているというメタセコイアの黄葉が見られた。
国重文指定の本尊薬師如来三尊は、あまりぱっとしなかった。鎌倉後期の作なのだろうが、なんだか室町時代っぽい雑な印象を受けた。
なお、境内は一切の写真撮影は不可。なもんで、写真はありません。

16時に拝観終了。獅子舞の方に行こうと思ったがだんだん暗くなってきたので止めて、駅のほうに戻って夕食をとることにした。
10年くらい前は鎌倉にはよく行っていた。記憶をたどると、今回はどうやら21世紀になって初めてのようだった。そのころ何度か行ったシェ・ミヨシやらモンテ・コスタとか、お気に入りの店がなくなっていてちょっとショックだった。

そんな中でまだ頑張っている小町通の「る・ぽてぃろん」に入った。懐かしい。
今宵のコースはにんじんのムースのウニとゼリー寄せ、さといもとフォアグラとポルチーニのソテー、オマール海老の西京味噌焼き、牡蠣と青海苔のスープ、トリュフがたっぷり乗った真鯛ソテー、牛頬肉の煮込みにカリフラワーを添えたもの。ワインはボルドー、デザートはチョコレートケーキをいただいた。
いちおうフランス料理ということになるのだろうか。和食器に箸でいただく。目で見ても楽しめるのがいい。今日はオマール海老が美味しかった。味噌の風味とえびのぷりぷり感が堪らなかった。スープもちょっと変わった一品だった。汐の香りがよかった。チョコレートケーキは焼きたてのとろとろだった。至福のひとときだった。

OLたちの<レジスタンス> (中公新書)2004-12-16 00:18

60人の男女からの聞き取りをメインデータに、職場での男女の関係について書かれた本。聞き取り対象の抽出は完全無作為ではないが、それでもいろいろな声があっておもしろかった。

この本のキモは、OLは、単なる事務職であることにともなう自由と、その自由によって可能となるさまざまな「遊び」を楽しんでいるのだから、差別に真っ向から戦いを挑む必要がないということだ(31頁)。OLには企業内での権力も出世の希望もないが、逆にそのことによって、得られる自由は大きい。社内の噂話や、バレンタイン遊びなどなど。


しかし、OLたちはジェンダーを武器に優位を形成しようとすればするほど、ジェンダーの深みにはまってしまう。筆者はこれを「ジェンダーの落とし穴」と呼ぶ(176頁)。自分の弱さを武器にすることが、性差別を正当化する根拠となってしまうというのだ。
この説をいくつもの事例によって証明していく。女性側からだけの視点ではなく、男性の証言もあるのがその説を強化していると思った。女性・男性のどちらにも肩入れしていないところに好感を持った。

読み終えて、自分にはずいぶんとOLっぽいところがあるなあと思った(笑)。あーこういうことしてるよ、と思う事柄がいくつもあった。日本におけるバレンタインの起源の話も興味深かった。

(小笠原祐子著、1998年)(2004年12月2日読了)

ふたたび福本清三2004-12-16 00:50

録画しておいたTV朝日「忠臣蔵」の最終回を先ほど見た。

福本清三、やはり出ましたな・・・吉良方で。


第3話では赤穂藩士だった彼が、最終回では、最後まで抵抗する吉良方の侍になっているとは。藩取り潰しのあと、きっと食うや食わずの生活で、小林平八郎の浪人団募集を知り応募して(出身はおそらく偽ったに違いない)、その腕前が認められ、上野介の傍に付いて守り抜くよう指令を受けたのだ、という強引な解釈もできないことはない。

ま、そんな屁理屈はともかく、この徹底した大部屋俳優ぶりがいい。今回も見事な斬られっぷりだった。
そういえばNHK「最後の忠臣蔵」も、最後まで抵抗する吉良の侍だったっけ。

アナログレコードの愉しみ2004-12-20 00:38

自分はアナログレコードを1枚も持っていなかった。が、相棒がクラシックやらオフコースやらを数十枚持っているので、プレイヤーだけは持っている。ソニーのPS-V700という、聴ければいいや、という代物。ある日、相棒がオフコースを聴きたいと言い出したので、ベスト盤のCDも持っているがレコードで聴いてみようということになった。ここのところスピーカの音がめっきり良くなってきたので、アナログレコードがどう聴こえるのかという興味もあった。


「I Love You」のような静かな曲ではアナログの方が厚みがあっていい感じだった。これに比べるとCDは音がスカスカだ。情報量が違うというのだろうか。思ったよりも違いが出てきておもしろい。ふふん。
ちなみにCDプレイヤーは10年ほど前に19800円で買った Harman/Kardon 社の HD7500 というもの。当時このメーカーをよく知らずに買ったのだが、どうやら BMW のカーオーディオを手がけている会社らしい。まあ値段なりのプレイヤーなんだろう。

で、試しにジャズの中古レコードを買ってきた。「Miles Davis at Plugged Nickel」。これはもう大好きなアルバムで、普通の1枚CDと、7枚組のコンプリートセットも持っている。
早速聴き比べ。アナログ盤はスピーカの後ろの方から聞こえるようだ。そして音場が少し狭く、CDではスピーカの少し外まで音が広がっているのに対し、アナログはちょっと内側。これはライブ盤なのだが、CDがライブ会場の前の方の席だとすると、アナログは一番後ろから会場全体を眺めているような感じだった。また、CDではクリアすぎてちょっと耳に痛い感じもするトランペットの響きが、ちょうどよい具合にまろやかになった。ただ、その分緊張感が減る気がする。甲乙はつけられず、どちらもそれなりにおもしろいじゃないか。

こうなるともう我慢できなくなって、近場の大きな中古屋へ行った。欲しいものはたくさんあったが、ここは「お気に入りアルバムをCDと聴き比べる」という目的に徹し、絞りに絞って3枚をチョイス。その中で「Barry Harris at the Jazz Workshop」はCDと左右のチャンネルが逆になっていて、聴き慣れたものと全く違う新鮮さを味わった。うーん、拍手がへんなところから聞こえる。

CDが最初に出た頃、アナログレコードの方が音がいいとかマニアが言っているのを聞いて「へん、そんなわけねーだろう」と思っていた。しかし、たかだか19800円で買ったCDプレイヤーと10000円未満で買ったレコードプレイヤーで聴いただけだが、CDの方がよいとは必ずしも言えないということを知ってしまった。SACDやらDVDオーディオにも興味は持っていたが、なかなか普及が進まない新規格よりも、アナログの方が手っ取り早くナチュラルな音楽を聴けそうだ。

禁断の世界にとうとう踏み込んでしまった気がした。
しかし念願だったCDプレイヤーを買い換えることになったので(デノンDCD-1650SR)、しばらくはまたCDにハマることになりそうだ。果たして、ソニーの安物プレイヤーとレコードはグレードアップしたCDプレイヤーに太刀打ちできるのだろうか。