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北斎展2005-11-23 23:31

北斎展
自分は浮世絵は広重とか国芳が好みだが、相棒は北斎派。結構楽しみにしていたようだ。今日を逃すと最終日まで行けそうにないので、急遽出かけることにした。

何ヶ月か前に、NHKBSハイビジョン特集で「天才画家の肖像」と題した北斎の生涯を扱った番組を観たことがあった(他には広重など)。それによると、晩年は肉筆をずいぶんと描いていたようだった。版画は世に何枚も出回っていて、他にも見る機会も多いだろうが、肉筆はそれひとつしかない。そこで今回は肉筆画を中心に鑑賞することに決めた。
1995年に江戸東京博物館で「葛飾北斎展」があったのだが(画号ごとに6期に分けて展示という趣向が同じだ)、このときは展示品はすべて国内所蔵のものだった。今回は海外からも多くの品が里帰りするというのも楽しみだ。

前夜にネットで情報収集。だが肝心の東博のサイトがなぜか開かない。すでに見に行った人のブログを見るとすごい混雑のようだ。まあ、いつも我々は朝一番で行くので、心配はいらないだろう。

・・・・・・と、思ったのだが。


9:16、上野駅に着いてみると、公園口の美術展入場券売り場には行列が。プーシキン展もあるのでこの混雑なのだろう。入場券を2枚買って、早足で博物館に向かう。「当日2回券」なるものもあったが、そんなに長居はしないだろうと思いノーマルのチケットにした。

行列
9:26、博物館前に到着。なんとすでに開門していて、中を人々が歩いているではないか。会場である平成館の入り口からすでに行列ができており、最後尾についたのは入り口はるか手前、本館の向かって左脇を少し入ったところだった。うへー、こんなの初めてだ。5年前の国宝展のときだって、こんなにひどくなかった。
このまま帰って平日に仕事サボって見に来ようかとも思ったが、考えてるうちに入り口に到達してしまった。まーいいや、観ていくことにしよう。

展示は年代順になっているため、お目当ての最晩年は最後の方だ。また、第3室以降の方が北斎として有名なものが多く見応えがあるという情報もあった。というわけで入場後は迷わず第3室へ。いきなり北斎漫画などがあったが、人が群がっていて見ることあたわず。そのまま突き進むと富嶽三十六景があった。ここはまだ人波は少なかったので、ここからじっくり観ることにした。以下、印象に残ったもの。

富嶽三十六景
No.278-307。やはり青が美しい。
初摺りの説明があり、2枚の「凱風快晴」が並んでいた。摺りによる違いを味わうという趣向だ。東博のものと、もう一方はケルン東洋美術館の所蔵品。ケルンの方が明らかに出来がいい。富士山の山肌や、空のグラデーションがきれいなのだ(もう1枚、離れたところに展示されていたギメ美術館のも同様だった)。それにひきかえ東博のは色がくっきり分かれていて、単なる塗り絵に見えてしまう。しかし「凱風快晴」といえば、このくっきりしたイメージだ。だからこそ「赤富士」とも呼ばれるのだと思うのだが。
思うに、浮世絵の蒐集に当初熱心だったのは欧米の人たちで、その頃に良品が海外に流出してしまい、日本人が蒐集に乗り出したときには残り物しかなかったのではないだろうか。というわけで、所蔵者が海外のものをチェックして優先的に観るように方針転換。日本のものは今後も見る機会はあるだろう。
ちなみに帰宅後に95年の展覧会の図録を見てみたら、凱風快晴は東博と同じタイプの塗り絵系の摺りだった(江戸東京博物館所蔵)。
柳に烏図
No.472。肉筆。ボストン美術館所蔵で、本邦初公開とか。最初、奥から手前に飛んでくる烏のアニメーションかと思ったが、手前のヤツが他の1羽の頭に食いついているので、どうやら群れらしいということに気付いた。流れるような構成が見事だと思った。
にしても、カラスというには愛嬌がありすぎると思うがどうだろう。
流水に鴨図
No.488。肉筆。大英博物館所蔵。雄鴨の青色の質感がよかった。青首って言うくらいだから、青がきれいじゃないと鴨じゃない。

第3・4室を観終わって第1室に向かうとすでに溢れんばかりの人で、階下では入場制限もされているようだった。展示室内は人・人・人。ロクに見えないので1室・2室は素通りして再び3室に戻ったが、こちらもすでに人垣が3重になっていた。こりゃもうダメだと観念。カタログ(3,000円、高っ)と画号印Tシャツを買って脱出した。

行列 表慶館とユリノキ 本館とユリノキ
11時。外に出てみると行列はさらに増幅してたいへんなことになっていた。いくら祝日で行楽日和だからって、こりゃあいったいどういうことだ。それに北斎ってそんなに人気あるわけ?
東博のシンボルであるユリノキの黄葉をまったりと眺め、まだ11時をちょっと過ぎたばかりだが東洋館1Fのレストラン「ラコール」(以前の精養軒)で昼食。11時30分頃には満席になってしまったので、アブナイところだった。

禅院額字 表慶館ドーム
食事を終え、本館と東洋館をぐるりと観て回り、伊万里焼展で久々に表慶館が開いていたのでエントランスのドームだけ見上げてから、法隆寺館にも行った。東博フルコースは数年ぶりだ。
本館は企画展示の「コレクションの保存と修理」が面白かった。絵絹はわざと劣化させたものを使う等々。東洋館では最近流行の書を堪能。国宝の書跡がずらりと並ぶ。法隆寺館はお気に入りの竜首水瓶が九州に貸し出されて見られなかったのが残念だった。
にしても人が多い。特に外国人が多いのはいったいどうしたことか。と思っていたら、なんと留学生の無料開放日だったのだった。いつもは足音すらほとんど聞こえない東洋館に、あんなにたくさん人がいるのは初めて見た。

楽しめた展覧会だったが、ひとり1,500円は高いなあと思った。で、帰りの電車でちらしを読んでいると、2回券はペアで使うことができるとあり、衝撃を受けた。それならひとり1,300円だったのに。「『当日』2回券」とか書いてあるから、同じ日に2回出入りするためのチケットだと思ってしまったのだ。よくよく見てみると、「前売2回券」てのがあったから、『当日』てのはそれとの区別だったわけね。ま、リサーチ不足だったというわけで。
(東京国立博物館、2005年11月23日)

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