iPod 用に使っているイヤホンを買い替えた。新しく買ったのはオーディオテクニカの ATH-CK7。
自分が iPod
を買ったのはおよそ2年前で、第3世代のモデル。付属の白いイヤホンをつけているのがミーハーちっくに見えてイヤでしかたなかったのと、音質が悪いという評判だったので、
すぐに別のものを買った。ソニーの MDR-EX51LP という耳栓型のもので、たしか3,000円くらいだった。
シュアーとかのン万円もするようなのが欲しかったけど、どうせ電車で聴くんだし、なにより、圧縮音楽に金かけてもしょうがないと思い直してこれで妥協したのだった。
通勤時、同じ電車に声のよく通るおばさんがいて、しかもおしゃべりなもんだから(なぜか朝っぱらから時事問題を論じたりするのだ!!)、毎朝うるさいなあと思っていたのだが、耳栓でほぼシャットアウトでき読書にも集中できるようになって良かった良かったと思った。音質は密閉型である分、白イヤホンよりもよいと思った。
ところが最近になって、結構音洩れがしていると相棒に指摘され、イヤホンの買い替えを思い立ったのだった。イヤホンを外して聞いてみたときに音が聞こえないくらいの音量にしていたのだが、耳に装着すると音が増幅するのか、洩れてしまうようだ。
先日、コンビニで最新デジタルなんたらいう雑誌をふと手にとって見ると、イヤホン特集だった。この手の雑誌は提灯記事ばかりで好きではないのだが、ひまつぶしにぱらぱらめくってみた。
価格帯ごとに商品が載っていて、コメントの他に音楽ジャンルごとに★がついているのがいい。その中で、1万円未満のクラスながらジャズに5つ星(満点)がついていたのが ATH-CK7 だった(上位の機種にも5つ星はなかなか見当たらないのに!)。自分の iPod にはジャズしか入っていない。もうビビッときた。
翌日早速横浜のヨドバシに行き試聴。音源が小林明子「恋におちて」だったので果してジャズ向きのイヤホンかどうかわからなかったが、あれだけ周りが騒がしくても音楽に集中できる密閉性はよい。コードがY型なのが気に入らないが(自分は首掛けタイプが好み)、少し迷った末、買った。9,800円。
帰りの電車で早速つけかえて聴いてみた。よい。
帰宅して今度は今までの安いのととっかえひっかえして聞き比べてみた。中音と低音の解像度がよいのがわかる。埋もれていたベースの音が聞こえてきた。安いのは中音低音ひとまとめにしてぐちゃっと潰したように感じる。これが3,000円と10,000円の差なのだろう。よい。
ところが、音洩れの方はそんなに変わらないようだ。これはチト残念だが、よい音を手に入れたのでよしとしよう。
冬季にだけ製造されるモンドールというフランスのチーズが大好きだ。いわゆるウォッシュタイプのチーズで、以前は本でしかお目にかかれなかったが、ワインブームが起きた'90年代の中ごろから高級スーパーで見かけるようになった。
最近では賞味期限ぎりぎりまで待って、割引になってから買うようにしている。いちど、若いうちに買って冷蔵庫にしまっておいたことがあるのだが、もう冷蔵庫中が臭くて臭くてたまらなかった。並み居るウォッシュチーズの中でも匂いのキツさはトップクラスだ。ビニール袋に二重三重に入れても、どうしても匂いは漏れてしまう。
表面のカビが少なくなって赤みを帯びてきたら食べごろだ。表皮を切り取って、スプーンですくって食べる。中はとろとろになっている。蜂蜜くらいのとろり加減。スプーンは湯であたためて使う。そうすればスプーンからチーズが離れやすくなる。
ジャガイモに塗って食べても美味しいけど、ウチはそのままぺろりとやることが多い。味はこってり・まったり・まろやかクリーミーで、あの強烈な匂いからは想像もつかない。
ウチでは毎冬、最低でも1回はモンドールを食べる。今シーズンの1回目は2月の末のことだった。
食事のあとに2000年のコート・デュ・ローヌの赤と一緒に食べていた。赤ワインにとてもよく合う。そのうち、チーズの香りが日本酒の香りと似ていることに気付いた。で、試しに1杯飲んでみたらこれがどんぴしゃだった。酒は秋田県の「津月」という銘柄の純米吟醸、山田錦100%のきもと造りで芳醇系。
日本酒の香りの中には、雑巾のようなニュアンスのあまり好きではない香りがあるが、その匂いをこのチーズのカビ臭が上手く消してくれている。ん、てことはこの酒、悪くなっちゃってるのかな。これが老ね香っていうやつなんだろうか。でも2口3口と飲むとイヤじゃなくなってくる香り。
日本酒の香りの説明って、ワインみたいにストレートに「ライチの香り」とか「洋梨の香り」とか言わないから、検索してもよくわからない。
でもとにかく、意外な組み合わせが楽しめた。もうすぐモンドールの季節も終わりとなるが、機会があったらまた試してみたい。
愛知県への1泊2日の小旅行、初日の昼食はあらかじめチェックを入れていたカレー店の「ボンベイ」。
名古屋到着は11:30ごろだったが、ちゃんと場所をチェックしてこなかったので、迷った末に12時過ぎになってようやくたどりついた。名古屋の地下街は広くてワケわからん。凄い。
メニューはカレーのみで、したがってオーダーは「大盛り」「普通盛り」といったふうにいたってシンプル。そんなわけで注文してからすぐにカレーがやってくる。我々はふたりとも普通盛りをオーダーした。器もシンプル、盛り付けもシンプル。女性の分は、ごはんを気持ち少なくしてくれる。足りなかったら言ってください、とのこと。
カレーをごはんにかけて一口ほおばると、かなり酸っぱくて驚いた。そして後から辛さがやってくる。よく煮込んであるため具はほとんど形がなく、鶏肉は繊維のようになっていた。野菜からの水分だけで、水はまったく使っていないそうだ。たまに歯にコリコリするのはキャラウェイだろうか。
「やめられないとまらない」系の味で、空腹だったこともあって、ばくばく一気食いしてしまった。美味い。酸っぱさは今までに食べたカレーの中では一番だ。福神漬けならぬ沢庵が添えてあったが、これは果たしてカレーに合ったのだろうか、よくわからなかった。(2006年3月20日)
愛知県への旅行で犬山に泊まり、フレンチ創作料理・なり多で夕食をいただいた。
建物は江戸末期に建てられた旧奥村邸で、4年前までは郷土資料館だったという元呉服商の立派なもの。到着はまだ明るい17:30で、一番乗りだった。席は、インターネットの写真では掘りごたつになっているが、この日はいすとテーブルだった。庭に一番近い席にしてもらえた。内装も和のテイストで(あたりまえか)、仕切戸のステンドグラスなど、なかなか素敵だ。席も全席禁煙。
料理は、電話で予約したときにコースを選んでおいた。何種類かのコースがあるようだったが、中身を聞くのは面倒だったので、値段だけ聞いて一番高い8,000円のにしておいた(帰宅後ネットで見たらさらに高いコースもあるようだ)。3泊で出かける予定が1泊になってしまったので、その分の予算を食事につぎ込むことにしたのだ。
食前酒にシャンパーニュをグラスで注文。その場で抜栓してくれたのはいいが、いきなり暴発させてちょっと先行きが不安になった。
続いてワインの吟味に入る。名古屋から電車で30分とはいえ、地方都市なのでワインは期待していなかった。が、リストを見るとなかなかの品揃え。3,000円から8,000円くらいのものが中心だったが、高いものは40,000円台まであった。そんな中で、サッシカイアが18,000円('00年)とあったので、ちょっと迷ったが思い切って注文した。最近ショップで見かけるときは安くても15,000円はしていたので、レストランでのこの値段はびっくりするほど安く感じたのだ。
前菜が運ばれてきた。
きれいな盛り付けでちょっと嬉しくなる。これを見て、シャンパーニュが暴発したときの不安はどこかに吹き飛んだ。シャンパーニュも、しっかりとして美味かった(銘柄失念)。これがまたこの前菜群によくマッチして美味さアップ。上段中央は、カツオのたたきかと思ったらマグロの炙りだ。
前菜を楽しんでいるとサッシカイアが登場。こちらはブドウのバッジをつけた本物のソムリエ氏がやってきてサーブしてくれたのでほっとした。
味は、まあこの値段ならハズレはない。濃厚でいて華やか。文句なく美味い。久々に上等のカベルネを飲んだ。温度も冷たすぎず温すぎず、グラスもリーデルで満足。このエクストリームというシリーズは初めてだけど、香りが楽しめるグラスだと思った。
サーブしながらソムリエ氏は我々にどこから来たのかと尋ねてきた。地元の客にはこういうワインを注文する人はまずいないそうだ。それからこの建物の由来などを話してくれた。また、前菜の途中で赤ワインに移るか、もう1杯シャンパンを頼むか迷っていたら、見透かしたように白のハウスワインを「サービスです」とグラスで持ってきてくれた。これが絶妙のタイミングでまた気分が浮かれ出す。ハウスワインだけれども樽がしっかりしていて美味しい。よいハウスワインの店はよい店だ。
前菜盛り合わせの次はエスカルゴ料理。
この時点でサッシカイアをグラスに注いでもらい、ワインは赤白両方になった。エスカルゴと赤を合わせると、お互いを引き立てあう。白と合わせると、エスカルゴの臭みを消してすっきりと味わえる。ワインを変えるだけでまったく違う味わいになるのがおもしろい。
スープのクラムチャウダーはパイ包みだが、なんだか膨らみがイマイチだった。味は、まあ普通のクラムチャウダーで、なんだかぱっとしなかった。
魚料理は鯛。緑色のクリームソースで食べていたらイマイチだったが、トマトソースも一緒に混ぜたら塩味がプラスされて美味しくなった。ハマグリの潮の香りがが白ワインとよく合った(まだグラスワインを残していたのだ)。
肉料理はフィレ肉のステーキだ。
焼き方はレアを指定したが、ソースが濃厚なのでもっと生っぽくてもよかったかも。と、そう思えるくらい濃いソースだった。しょうゆとタマネギがベースになっているが、どろっとしているので最初大根かと思った。肉もよくサシが入っていて、甘くて柔らかかった。
なお、付け合せは、写真では光の加減でドライカレーみたいに見えるが、赤米だ。
えっ・・・
メインを食べ終わってさてデザートはなんだろうと思っていると、チーズが運ばれてきた。そういえば今日のコースの内容をちゃんと聞いてなかった。チーズが出るなんて知らなかったから、サッシカイアはメインに合わせて全部飲んじゃった。はてどうしよう、と思っていたら今度はソムリエ氏から赤ワインのサービスが。高いワインの後に安いワインを飲むのは反則だが背に腹はかえられない。しかしそれでもしっかりとしたワインで、ちゃんとチーズに負けないものだった。チーズはちゃんと確かめなかったが、ブリーとロックフォールのようだった。
デザートは、アイスクリームの上にフルーツとカスタードクリームかなんかを乗せて焼いたもの。アツアツと冷え冷えのコントラストがおもしろい。
コーヒーには泡が乗っていた。マイルドエスプレッソというのだろうか、あまり苦くはなかった。砂糖などの器も楽しい。
会計を済ませたところでソムリエ氏がやってきて、邸内をひととおり案内してくれた。豪商の家だけあって、広かった。
オープン4周年記念ということでバラの花をもらった。満足して店を後にし、ホテルに帰った。(2006年3月20日)
徽宗の「五色
ボストン・ギャラリーに入場するといきなり青銅器が。花鳥画とどういう関係があるのかと思ったら、き龍紋が花鳥デザインの萌芽だという。そりゃあチトこじつけだろうと思ったが、青銅器好きの自分としては、フックがにょきにょき飛び出た特異な形状が気になったのだった。結構珍しいお宝だと思う。
で、そのすぐあとにお目当ての五色鸚鵡図が。ふつう、展覧会の目玉は展示の中盤以降に配置することを考えると、なかなか大胆な構成だ。まあ時代を追っていくとどうしてもこうなってしまうのかもしれない(なにしろ1000年も昔の絵なのだから)。
で、ミョーに暗い一角に展示してある。古い絵画では当然の処置だが、それにしても暗い。単眼鏡を使ってどアップで見てみると、かなり劣化が進んでいるということがよくわかる。まあしかたないんだろう。
徽宗というと社会科の教科書なんかに載ったりする「桃鳩図」(国宝)で有名だが、この五色鸚鵡図はなんだか対を成しているように見えなくもない。なんというか気品があるように感じるのは、現代にも通じるような構図のセンスのせいだろうか。
あとはたらたらと流す。その間も、鳳凰の絵がグロかったり、四君子がきれいだったりと、期待していなかっただけに尚更おもしろかったりしたのだが、朝鮮のコーナーはこれまたこじつけくさいなあと思った。
朝鮮コーナーを過ぎると日本の花鳥画に。ここに狩野派の花鳥図屏風があった。パンフレットにも使われているところをみるとこれが目玉なのだろうか? でもまったく興味がわかなかった。徽宗の絵のほうがはるかに好きだ。
ラスト手前に広重と北斎が。この青が実に美しかった。相棒は、北斎の「芍薬とカナリア」の画中でカナリアを「カナアリ」と書いているのが気に入らないようだった。
展示一覧がなかったので(たぶん)、ちゃんとした題名を思い出せないのが残念。
花鳥画を後にしてオープン・ギャラリーとやらの「アメリカ近代写真のパイオニア」へ。アンセル・アダムズという写真家の展示があるようだ。かなり有名な人らしいが、門外漢の自分は知らなかった。
写真は正直言ってほとんど興味がなく、入場料を払ったのだから通り過ぎてでも見てやろうという感覚だった。さっと通り過ぎて早く昼飯食いに行こう、と思っていた。
がっ。これは非常に良かった。
何がよかったかというと、風景写真。人物の写真などもいくつかあったが、展示の多くは風景写真で、それも山の写真が多い。自分が山好きだからということもあろうが、この作品群には感銘を受けた。
すべてモノクロ写真だが、色がなめらかで深い。モノクロとはこんなに美しいものかと吃驚した。それが撮影技術によるものか、プリントの技術によるものかは分からないが、そんな屁理屈は抜きにして、とにかく美しい。黒澤明監督がモノクロにこだわってカラー映画をなかなか撮らなかったというのがわかった気がした。モノクロの中にこそ本物の色があるのだ(ちょっと大げさ)。
まず、ヨセミテのハーフ・ドームの岩壁(原題:Monolith, Face of Half Dome, 1927)。新聞紙くらいの大きさでプリントされたものがあり、目がくぎ付けになってなかなか立ち去れなくなってしまった。岩の迫力が凄まじい。そして空が、深く濃く、美しい。
また、冬の嵐のあと(原題:Clearing Winter Storm)の迫力が凄かった。これまたデカいプリントがあった。実際に山を歩いていると、ごくまれに、こんなふうに雲が晴れる劇的な瞬間に出会うことがある。こういうときの雲は驚くほどのスピードで晴れていくのだが、よくぞカメラに収めたものだ。撮影に関して本人のコメントがあって、それを読むとまた臨場感が増して興味深い。
ここがお決まりの撮影場所らしいが、この構図もまるで造ったようにキマっている。右手に滝があるところなんか出来すぎだ。
マッキンリー(原題:Mt. McKinley and Wonder Lake)は、白がきれいだ。雪山を撮ると白が光りすぎてとても難しいが、これはその現象を逆手にとっているようだ。山襞もくっきりとしてきれいで、マッキンリーの雄大さが増しているように思う。下にでっかく湖面を入れて、画面を2分割するような構図なのも自分のツボにくる。
ハコヤナギ(原題:Aspens, New Mexico(V))。とても有名な写真らしい。この構図とコントラストが絶妙だ。広重の浮世絵とかにありそうな感じ。これにも本人のコメントがあって、たまたま木の前を通りかかったときにピンときて撮影した、というようなことが書いてあった。一期一会、というところだろうか。
ほかに、自分の大好きな山のひとつである黒部五郎岳にそっくりな形の山の写真があったのだが、題名を忘れてしまった。これがえらく気に入ったので、非常に残念だ。花鳥画同様、こちらにも展示作品一覧表はなかった(たぶん)。
ミュージアム・ショップにはアンセル・アダムズの写真集が売っていた。何種類かあり、高いものは1万円近いお値段。とても欲しかったが、気に入った写真がすべて入っているものがない。ネットでじっくり探して通販で買ったほうがいいんじゃないかと思い直して、ハーフ・ドームとマッキンリーのハガキだけを買って美術館をあとにした。
さて、帰宅後にアンセル・アダムズについてネットで調べてみた。"The Ansel Adams Gallery" で写真がたくさん見られる。おお、冬の嵐もマッキンリーもみんなある。でもあのアメリカ版黒部五郎が見当たらない。
え、なんと1枚20ドルで買えるんですか。ほう、アメリカ国外にも発送可能とな。・・・
(名古屋ボストン美術館・2006年3月21日)
「つかさ」という店の名古屋コーチンは純系ということで、生粋の名古屋コーチンが味わえると思って行ってみた。時間は13:30で昼のピークは過ぎており、ちらほらと空席があった。
ふたりとも「つかさ膳」を注文し、単品料理の串焼き5本盛りと名古屋コーチンソーセージを追加した。
膳は、煮物などはごく普通。名古屋コーチンを使っているのは串焼き2本と、ささみの霜降りくらいだ。まず膳だけが運ばれ、あとから串焼き2本がやってきた。串焼きはやはり歯ごたえがある。でも焼きすぎたときの固さではなくて、ちゃんと旨みがある固さだ。噛みしめるとじゅうっと肉汁が出てくる。ささみは焼いたものと違って柔らかい。
串焼き5本盛りは、つくねなんかはやっぱり固くて、名古屋コーチンなんだなあと思った。手羽先は、さらにジューシーさが加わってよかった。
ソーセージは注文時にボイルするか焼くかを指定できる。焼きをお勧めされたので焼いてもらった。プリプリを超越した感じの食感。メニューに「幻の」と書いてあったので注文してしまったのだが、それにしてもこれ4本で1,500円は高いっす。
なんだか固い固いとばかり書いてしまったが、ほんとうにそんな印象なのだ。でも、もちろんイヤな固さではない。
おおむね満足だったが、残念だったのは酒の揃えがイマイチだったこと。といってもビールしか見ていないのだが、生がドライで、瓶もドライの他はよりによってクラシックラガ ーというのは酒好きには悲しいかぎりだった。(2006年3月21日)