KATZLIN'S blog

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小布施めぐり2007-05-09 20:46

4月28日、小布施町の隣の信州高山村で桜めぐりハイキングをすることになったが、天気予報が雨になってしまったのでハイキングを一日延期してこの日を小布施観光にあてることにした。
お目当ては、北斎が描いた岩松院の天井絵「八方睨み鳳凰図」である。天井絵は常識的に考えて持ち出すことは不可能なので、現地に行かないと見られない。実は本題のハイキングよりもこっちのほうが楽しみなのである。


朝一番の新幹線あさまで長野へ。長野電鉄に乗り換えて小布施駅に降り立ったのは8:40ごろだった。午前中は曇りで午後から雨の予報だったが、もうすでに降っていて気分が萎える。
岩松院の拝観は朝9時に始まるので、今から歩いていけばちょうどいいだろう。観光地をつないだ循環バスもあるようだが、始発は9:57でまだ1時間以上先だ。駅に置いてあった「信州おぶせマップ」なる観光絵地図をゲットし、小降りになったのを見計らって歩きだした。
寺へは駅前を左に出て道なりに行くだけ。道中にはぽつりぽつりと案内板もあるが、曲がらないので迷いようがない。30分もかからずに岩松院に到着した。途中で雨もあがってしまった。門前には桜の木がたくさんあったがほとんど散っていた。
岩松院

まだ朝早いためか境内は閑散としていた。拝観料を払いどきどきしながら本堂内へ進む。見上げると、凄まじい迫力で睨み付ける鳳凰がいた。極彩色といっていいのだろうが、赤が少なめなのと、青が深いせいか、決して派手ではなく不思議な落ち着きを感じる。150年前に描かれたまま、補色などはしていないという。トサカのあたりのごつごつが、油絵で特殊なマチエルを使ったときのようにちゃんと3Dになっている。寺のサイトの説明では「独特の技法で仕上げた」とあるが、どんな技法なんだろう?
30分も見上げていたらすっかり首が痛くなってしまった。

続いては隣の浄光寺へ。岩松院からは歩いて5分程度で、その道は遊歩道として整備されている。花桃が満開だった。
花桃
ここに寄ったのは駅前の観光案内を見て、薬師堂が国の重要文化財に指定されているというのを知ったから。門からお堂までは雰囲気のある緩やかな石段が続いていたが、市民サークルなのか教室なのか、ビデオカメラをかついだ人たちが跋扈していてちょっと興醒め。ちょうど日が差してきて、先ほどまでの雨を吸ったちょっと朽ちかけた茅葺の屋根からは水蒸気がもうもうとあがっていた。

1/25000地図を見ながら小布施ワイナリーへ。ここも北斎の天井絵とともに楽しみにしていたところ。浄光寺からは30分くらいかかった。
小布施ワイナリー
小布施ワイナリーは最近メディアで取り上げられることが多い。が、実物にはあまりお目にかかったことがない。ドメーヌ・ソガシリーズのシャルドネを一度飲んだことがあるだけだ。
一般の観光客向けのワイナリーではないし、観光地図にも載っていない。が、ワイン好きなら楽しめると思う。試飲アイテムが少なかったのがちょっと残念だったが、有料試飲では1杯300円で結構たっぷりと飲ませてくれ、チーズもいただいた。ヴィオニエやサンジョヴェーゼといった、国産では非常に珍しいセパージュのワインがあったりした(開いてなかったけど)。我々がブルゴーニュが好きだということを言うと「ではぜひブルゴーニュと比べてみてほしい」と、在庫僅少となったピノノワールを出してきてくれた。

じっくりワイン選びなどしていたら昼近くになってしまった。買ったワインは配送(合計12,000円以上だと配送無料)にしてもらってワイナリーを出た。
駅の方に行けばなにか食べるところがあるだろうと駅に向かった。歩きだしたら天気が急変し、大粒の雨が降ってきた。遠くに雷鳴まで聞こえる。蕎麦屋にでも逃げ込もうかとも思ったが、結局、事前にチェックしていたフランス食堂ヴァンヴェールという店に入った。
ギャレット
ランチのメニューから、自分は紅鱒とアボカドのギャレット、相棒は鶏のコンフィとモツァレラのギャレットを注文した。料理が運ばれてきて、意外にもヴォリュームがあったのでちょっと驚いた。紅鱒とアボカドのギャレットは、ソースがチーズ系の不思議な味で、ピンクペッパーがぴりりと効いていた。なかなか美味しくて、ランチでこれならディナーも期待できるところだが、残念ながら今宵は高山村に宿をとってある。
デザートまで食べ終わったところでちょうど小降りになったので、店を出た。

北斎館へと向かう道でようやく知ったのだが、小布施は、ベタな観光地だった。町の観光政策が実ったということのようだが、自分はこういうワザとらしく作られた街並みがどうも好きになれない。衝撃を受けつつ、作り物のチャラい演出のオシャレでステキな栗の小径から高井鴻山記念館に入った。
栗の小径 ゆう然楼から からくり
高井鴻山については、北斎を小布施に招いた豪商、という程度の知識しかなかったが、実は本人も絵を描いたりなどの多芸多才な人であるということを知った。また、「ゆう然楼」には幕末の志士たちが集まるなど、相当顔の広い人物だったようだ。そんなわけで、ゆう然楼には彼らのために抜け穴があったりするのだった。その隣に「碧軒」という茶室があって、これが北斎のアトリエとして使われていたということだった。わざわざ北斎のために鴻山が建てたというものだ。

次に北斎館へ。この周辺が一大観光基地となっており、土産物屋が軒を連ね、大型観光バスがひっきりなしに出入りしている。建物はどれもオシャレでステキだ。
北斎館
ここは北斎の肉筆画が多く展示されているのが売り。改築して版画の部屋も作ったということだが、それらの展示品は、まだ若いときに勝川春章の門下にいたころの美人画などが多く、北斎らしさを感じるものは少なくてちょっとがっかり。富獄三十六景くらいしか知らないような普通の観光客は、こんなの見てもおもしろくないだろうに。なぜこんなに人が集まるのかわからない。
また、映像ルームでドキュメンタリーが放映されていたがこれもイマイチだった。北斎の生涯や業績が紹介されるのかと思いきや、「北斎はこの絵を描いたとき、何を思ったのだろうか」みたいな抽象的なことばかり言っていて退屈だった。そんなわけで、映像は2編あったがもうひとつは見なかった。
見るべきものは屋台の天井絵だった。ひとつは鳳凰で、朝方見た岩松院の天井絵を小さくした感じだ。だが大きさの違いもあり、迫力ではかなわない。男浪は町の下水のマンホールにもデザインされていた。富獄三十六景の神奈川沖浪裏を連想する。

北斎館を出て駅に向かうが、まだちょっと時間があるのでお茶をしようということになった。
お茶
小布施といえば栗菓子だが、有名なのは和菓子ばかり。ここでは洋菓子を食べたいという相棒の要望により、とおり沿いのオシャレでステキな栗の木テラスという店にはいった。有名な桜井甘精堂の洋菓子部門で(建物もすぐ隣)、結構混んでいたがタイミングよく待たずに入れた。モンブランと栗のロールケーキとマロンシュークリームを注文した。栗はいかにも和栗な優しい味と香りがして美味しかった。それに、なんといってもマロンクリームが自分の好みにどんぴしゃだった。

駅に着いたのは16時過ぎ。長野方面への次の電車は特急列車。電車が来るまでの間、ホームの反対側にある「ながでん電車の広場」で退役した 保存車両を見学したりしてすごした。
小布施駅 展望車
やがてやってきた特急「湯けむり」はなんと小田急ロマンスカーのお古だった(そういえば、往きに乗った各駅停車は東急のお古だった)。特急料金は100円で、自由席。4両編成だけどがらっがらで、小田急では相当運が良くないと座れない展望車両に座ることができた。さすがに最前列は無理だったけど。

特急には1駅だけ乗って須坂で降り、バスに乗り換えて一路高山村へ。翌日の桜めぐりの記録はメインサイトの「信州高山村桜ハイキング」へ。

自分の中では小布施といえば、北斎・ワイン・栗なのだが、その全てを味わうことができた楽しい1日だった。が、あまりに観光地化していたのにはちょっとびっくりした。岩松院はとても静かだったが、これは朝一番に行ったためだろう。偶然だが運が良かった。
今回訪れた施設など(リンク先はそのウェブサイト)
岩松院
浄光寺
小布施ワイナリー
フランス食堂ヴァンヴェール
小布施堂
北斎館
栗の木テラス(桜井甘精堂
小布施町