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EPSON GT-X750 を Linux で使ってはみたものの2007-06-13 23:52

EPSON のスキャナ GT-X750 を購入」のエントリーにも書いたが、このスキャナを選んだ大きな理由は Linux で動くからだ。
エプソンは、関連会社のエプソン・アヴァシスが Linux 用ドライバを配布している。スキャナだけでなくプリンタなどのドライバも揃っている。

だが、結論から言うと、結局このスキャナは Windows で使うことになりそうだ。購入からこの結論に至るまでに1ヶ月。その間の事情を記しておく。


まずはエプソン純正の Linux 用ドライバ Iscan を試してみた。
エプソン・アヴァシスのサイトには、tar ソースと rpm パッケージはあるものの、肝心の deb パッケージがない(当方の使用ディストロは Debian 系の kubuntu)。そこでソースから入れようとしたがうまくいかなかった。しかたないので alien で rpm から deb パッケージをつくって $sudo dpkg -i でインストールした。ネットで得た情報でも Debian 系の人はそうしているようだった。GT-X750 用の追加ドライバも rpm を alien して入れた。sane パッケージは apt で楽勝。

インストールが完了してコンソールから $iscan とするが、USB スキャナはつないだだけだと root の所有となっているため、スキャナがないとか文句言われる。$sudo iscan で動かすことはできるが、ここはマニュアルにあるとおり、$sane-find-scanner してスキャナの接続先を調べ、$sudo chmod 0666 /proc/bus/usb/xxx/xxx みたいにしてパーミッションを変更するのがよい。接続のたびにこの作業が必要になるので、マニュアルには udev の rule を書けとか書いてあるけど、自分にはそんなスキルはない。まあそのへんはあとでじっくり考えることにしよう。まずはスキャンの出来具合が知りたいのだ。

で、Iscan を動かしてみる。しかし、紙スキャンは上出来だが、フィルムスキャンがトホホな代物だった。まず、期待していたホコリ除去機能がない。それどころか、褪色復元とかもない。売り物の機能がない、普通のフラットベッドスキャナとなってしまうのだ。純正ドライバなのに・・・
それになにより、一度に複数の範囲を選択してスキャンするということができないのが最大のトホホだ。Windows のドライバソフト(Epson Scan)だとコマの位置を自動で認識して複数のコマを選択してスキャンできたりするわけだが、Iscan ではそれができないのだ。このため、たとえば複数のコマを取り込むには、こんなふうに12コマ全体をひとつのファイルとしてスキャンしてからレタッチソフトでトリミングするか、または、コマごとにその都度範囲指定してスキャンするということになる。前者だとカラー調整が難しくなるので非現実的だし、後者だと七面倒。純正ドライバなのに・・・

Iscan でのできあがりはこんな感じだ。
iscan
出力 1600dpi で、tiff で出力できなかったので、pnm というので出力した。それを横幅480ピクセルのJPEGに変換した。自動露出補正で、撮影自体にPLフィルタを使っていることもあるが、結構こってりした色合いだ。ホコリ取りがないのでホコリが目立つ。うーん。


しかたない Windows で使うか、と思っていたら、ふとしたことから VueScan なるソフトの存在を知った。マルチプラットフォームで、Linux 版もある。ちゃんと複数コマのスキャンもできるらしい。有料ソフトだが、試用ができるのでとりあえず試してみることに。
本家サイトからダウンロードして解凍する。中にある vuescan てのが実行ファイル。特にインストール作業はいらない。

しかしこれをクリックしても動かず無言。コンソールから $vuescan と叩いたらセグフォールトとか言ってきた。ここで行き詰まって2週間近く試行錯誤を繰り返し、諦めかけたころにようやく ubuntu の scim ライブラリのバグが引き起こす現象らしいということがわかり、環境変数のおまじないをいれて、$export GTK_IM_MODULE=xim; vuescan としたら動いた。このあたりの情報はウェブには見当たらなかった。どうやら、IM が scim な非英語圏の ubuntu ユーザーで、Epson GT-X750 を VueScan で動かしている人はかなり少ないようだ。英語を使う人たちは scim 使わないからこんな苦労はしないのだ。ちなみに、このスキャナは海外では Epson Perfection 4490 という型番で売られているようで、検索エンジンではこっちの方がはるかに多くヒットする。VueScan のマニュアルを見て知った。

で、苦労して動かせるようになった VueScan だが、正直なところ使い勝手はあまりよくなかった。ヒストグラム表示がなくて、細かい色補正は数字を入力したりスライダーを使ったりするのが不便。また、自分は英語のソフトにはあまり抵抗感はないのだが、慣れていない人にはそれだけでもマイナスかもしれない。
問題なのはスキャン終了後もスキャナがグコグコッと小さな音を立て続けていること。壊れちゃうんじゃないかと不安になってしまう。

VueScan での画像。試用だとこんなふうに$マークが一面に入る。
vuescan
出力 1200dpi で、tiff 形式で出力したものを横480ピクセルのJPEGに変換。出力を 1600dpi にしたかったが、サイズは選択式で 1200dpi の次が 2400dpi だった。カラーモードは landscape。Iscan に比べて色がずいぶん薄い。また、ホコリ取りを Heavy にしたのだが取れていなくて、Iscan と同じところにホコリが見える(2列目の左から2番めの$マークの上と、1列目の右から2番めの$マークの下)。これはちょっと困る。アンシャープマスクもかけているのだが、それでもぼんやりとしている。
このソフト、ウェブ上では結構評判がいいし、実際に使っている人の画像なんか見ても凄く良いのだが、これではちょっと自分は使えない。もっと追い込めば良くなるのかもしれないけど、自分は$80も払ってそこまでやるほどのマニアではない。もっとお気楽にやりたいのだが。


というわけで、結局 Epson Scan での使用を余儀なくされたのである。当方の Windows 環境は VMware だが、それだとちょっと不安定なうえにメモリの容量が制限されるので、泣く泣くデュアルブートにした。
Epson Scan で不満なのはプレビュー画面が小さいこと。拡大して確認できないのはちょっと不便だ。が、そんなのは大した問題じゃない。そんなことより一番面倒なのは Windows を起動しなければいけないことだったりして。

で、Epson Scan での仕上りはというと。
Epson Scan
出力 1600dpi で作った tiff 画像を横480ピクセルのJPEGに変換。Digital ICE オン、自動露出補正、粒状化低減「中」。Digital ICE は強力で、Linux でスキャンしたあともフィルムはセットしたままでいたので、先の2枚と同じところにホコリが付いているはずだが、きれいにとれている。色合いも自然な感じだ。

結局これが一番きれいだと思うが、Digital ICE だと、出力1600dpiの場合1枚スキャンするのに5分くらいかかるのが難点。通常のホコリ除去とかを使わないと、人生がいくつあっても足りない。しかし Digital ICE の方が性能が良くて、次の2枚の写真のように、通常のホコリ除去モードではホコリと誤認識して塗りつぶしてしまうところも、Digital ICE だとちゃんと認識して表示されていた。
Digital ICE ホコリ除去強
先の3枚と同じ写真の、左側の一部をトリミングしたもの。ウェブページに使う程度の大きさに縮小すればどちらでも気にならないが、プリント用だとこの差は大きい。
同じ写真を Digital ICE Lite でもスキャンしてみたが、ノーマルの Digital ICE と変わらない(わからない)結果だった。なわけで、Digital ICE Lite を常用することになるのかなあ。

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