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国宝 三井寺展2009-02-19 23:59

三井寺の秘宝がずらりと公開されるという、マニア心をくすぐる展覧会。中には20年ぶりに公開されるというお宝も。開催を知ってからずっと待ち焦がれていた。
・・・はずだったのだが、すっかり忘れていて気がついたらすでに会期に入っていた。前売券も買えず、金券ショップに行ってもチケットは売っていなくて泣きそうになったが、チケット情報をよくよく見ると、18時以降の夜間入場は通常1,300円のところがなんと700円という超激安価格。しかも夜間開館日は水曜〜日曜の毎日というのがすばらしい。閉館時間は20時なので、2時間は見ていられる。経験的に、2時間もあればかなりたっぷりゆっくりできることはわかっているので、これを利用することにした。

一番の呼び物はやはり有名な黄不動なのだろうが、その黄不動は後期からの公開で、前期は五部心観が展示されている。これまた珍しい、見ておきたい秘宝だ。というわけで2回行くことにした。


サントリー美術館が東京ミッドタウンに移転してからは行くのは初めてだ。東京ミッドタウンなるところも初めて来たのだが、さすがに場所柄か、外国人の多いのには感心した。
16時過ぎに到着してひととおり見物して、地下の「東京ハヤシライス倶楽部」で、東京和牛A5番ハヤシライス(辛口)とお肉たっぷりハヤシライス(辛口)を二人で食べて腹ごしらえ。和牛ハヤシの方は肉が揚げてある感じで(部位は薄切りと推定)、バラ肉を煮込んだお肉たっぷりハヤシとは一味も二味も違った。辛口だったので最後にはちょっと汗が出てきた。
かなり満腹になってから3階の美術館へ向かった。

東京ミッドタウン
あまりの激安料金で18時を過ぎたら激しく混むんじゃないかと心配したけど、それほどではなかった。そこそこ人はいたけど行列まではできない感じで、気分よく入場。

智証大師坐像(御骨大師)(国宝)
頭の形が独特の智証大師円珍。霊骸というそうな。平安期の肖像彫刻は非常に珍しいが、純粋に造型として見た場合にはあまり面白みは感じられないかも。黒目の縁が赤いのがちょっと怖い感じもする。
智証大師坐像(中尊大師)(国宝)
週刊朝日百科「日本の国宝」第77巻の表紙を飾る像。こっちの方が御骨大師像よりも時代が下るのだとか。御骨大師像よりは彩色も残っており、ヒゲが描かれているのもよくわかる。
不動明王立像(黄不動尊)(重文)
チラシと垂れ幕にあしらわれている黄色い不動像。絵の黄不動を写したものというが、秘仏であるせいか、彩色がよく残っている。黄色の具合は絶妙で美しく、静かな佇まいの中に底知れぬ迫力を感じる。
五部心観(国宝)
大阪では唐から将来した完本の方が出ていたようだが、東京展では前欠本の展示。巻末に描かれている善無畏をようく見ると、筆が細かくて感心した。
病中言上書(国宝)
円珍自筆の書。『智証大師関係文書典籍』として国宝に一括で指定されているもののひとつだ。最後の2行は仮名としては最も古い遺例のひとつというが、さっぱり読めなかった。
ところで、円珍の筆跡を「枯れ枝のような」と評していた解説があってちょっぴり笑えた(どの作品の解説だか失念)。言い得て妙だ。
新羅明神坐像(国宝)
今展ではこれが一番見たかった。折に触れ円珍を助けたという異形の神、新羅明神。本などの写真で見ていてその風貌の奇妙さにばかり注目していたが、実物を見たら細くてしなやかな指に目がいった。腹のあたりは切金で装飾されているようだ。
なんだかあまり人気がないようで、文書に熱心に見入る人が多かったのに対して、この像は「ふうん」くらいで通り過ぎる人が多かったように思う。
伝船中湧現観音像(国宝)
世にも美しい絵画。絵なのに切金が使われている。全体が金色で、背景が薄暗いためにぼうっとして、「いま現れ出たばかり」という印象を受けた。
それにしてもどっかで見たことあるなあと思い帰宅後に調べてみたら、やはり5年前に東博で開催された『空海と高野山』展で見たようだ。
勧学院客殿障壁画 四季花木図(一之間)狩野光信筆(重文)
あまり話題にのぼらないが、三井寺は実は桃山障壁画の宝庫と言われている。話題にならないのは、おそらく非公開だからだと思う。自分は障壁画はあまり好きではないのだが、この桜の絵はいっぺんで気に入った。重厚でいて軽やかな感じがして、華やかなのにどこかしら侘しげな感じも受けた。
如意輪観音菩薩坐像(重文)
第3展示室の真ん中に鎮座ましまして、ひときわ目を引いた。流れるようなラインが実に美しい。
それにしても冠が大きい。こんなでっかい派手な冠は初めて見た。と思ったら実は後世のものなのだとか。三井寺公式サイトの本像紹介のページでは、流麗な本像には荷が勝ちすぎるようにも思われるとあるが、確かにそのとおりだ。

彫刻は数は多かったが、秘仏以外はさほどよいものがなかった。最後のフェノロサのコーナーははっきり言って要らないと思った。円珍と障壁画でまとめればよかったのに、おかげで焦点がぼやけてしまったように思った。まあ、フェノロサと三井寺が深い関係にあったのは知らなかったので、勉強にはなったけど。
また、会場が少し狭く感じる場所もあった。

そんなところがちょっと気にはなったが、しかしそれでもとてもよい展覧会だと思った。
なんと言っても、照明がすばらしかった。ほとんどの彫像の展示ケースは上部がすりガラスになっていて、その上からライトを当てているので、明かりが柔らかくて非常に見やすかった。最近の東博平成館あたりの大展覧会なんかだと、スポットライトをじかに当てて陰影を強調することが多く、角度によってはまぶしくてよく見えないようなことがままある。そういう演出も否定はしないし面白いと思うことも多いけど、やはり見やすいのが一番だと思う。余談だが、今度の東博の阿修羅展はみどころのひとつに露出展示を挙げているが、おそらくすっげー見にくい展示になると勝手に予想している。

そして、なにしろ人が少ないのがよかった。19時を過ぎたらますます人は減って、各部屋とも数えるほどに。10分ほどの映像を流しているコーナーではイスが20席ほどあったが、半分ほどしか埋まっていなかった。後期になって黄不動が来るとこうもいかないのかもしれないけど。

3周してから19:30過ぎに会場を出た。絵ハガキやらカタログやらは後期展に再びやってきたときに買うことにして、この日はそういったグッズ類は何も買わなかった。
外に出たら東京タワーが珍しい色になっていた。ミッドタウンには展望台がないので、六本木ヒルズに移動した。
バレンタインデーだったせいもあってめちゃ混みだったが、展望フロアに登らなくても1階のあたりで東京タワーが見えたのでそれで満足した。地下の「凛や」なる蕎麦屋で食事をし(越後和牛の炙りが旨かった)、帰路についた。
(サントリー美術館・2009年2月14日観覧)

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