タイトルからして仏頭推しのこの出開帳、実は東金堂の十二神将が揃って間近で拝めるというのも魅力的。いつもは東金堂で横一列に並んでいて、距離も遠いし薄暗いしでなかなかじっくりと見ることができない。
上野駅構内の美術展チケット売り場でチケットを買ってから芸大美術館に向かう。芸大美術館は2004年の興福寺国宝展以来だから9年ぶりだが、その時の印象がとても強くて、今でも館内のようすは結構記憶している。おそらく仏頭は3階の展示室におわしますに違いない。
到着は10時ちょい過ぎ。チケットを買い求める列を尻目にさっさと入場し、「順路は地下からでーす」という案内をものともせずにエレベータで3階に向かった。
3階の展示室にはすでに10人ほどの観覧客がいた。そしてそこは予想どおり、仏頭と十二神将だけのスペースとなっていた。いや、厳密には、仏頭の裏側に特別陳列の深大寺の釈迦如来があったが、そこはいかにも世界が違っていて、仲間外れの釈迦如来は居心地が悪そうだった。
ほかにも扉絵とかもあったけど、なんといっても3階の濃密空間が良かった。満足、満足。
絵ハガキを4枚買ってから、ミュージアムカフェに移動。地ビールセット(曽爾高原ビールと、柿の奈良漬・きびなごのつまみセット)を飲んでから、相棒は大和豚のグリル、自分は大和鶏の照り焼き丼を食べて満腹になってから家に帰った。
(東京藝術大学大学美術館・2013年11月2日観覧)
自分はミュシャにはそれほど興味がない。テレ東の『美の巨人たち』の放送も観たけど、なんかあんまり入り込めなかった。が、運良く招待券をゲットしたので、まあ、観に行ってもいいかな、と思った。
なかなか土日の都合がつかないうちに、会期末が近づいてきた。そこで金曜の仕事上がりに相棒と待ち合わせて行くことにした。美術展はちゃちゃっと切り上げて、そのあとにどっか旨いメシでも食いに行くとしよう。
終業と同時にダッシュしたら、横浜そごうには18時前には着いた。ディナーの予約は19時半なので、時間はたっぷりだ。会場は、空いてるかと思ったら、まあまあの込み具合。やはり仕事上がりっぽい人が多かった。
入ってすぐは、ぽくない絵ばかり。まだ自己のスタイルを確立する前の作品みたいだ。
しかし進むとやがて、いかにもミュシャなキレイキレイ系の絵が登場してきた。ふうん、と思いつつ眺めていると、コーナーを曲がったところで大ポスターが並んでいた。
それは「ジスモンダ」をはじめとする、サラ・ベルナールをフィーチャーした等身大くらいのポスターだった。これらはさすがに見応えがあった。
自分が感心したのは、画よりも総体的なデザインというか、フォントと全体との調和だ。レンガ調だったりポップ調だったりの文字が、背景に見事に溶け込んでいる。「第6回ソコル祭」などは、1862とか1912とかの数字が字としてではなく、完全な装飾デザインと化して配置されていた。
最後に会場をもう1周した。今まで食わず嫌いだったが、初めてミュシャをイイと思った。期待していなかった分、尚更よかった。
絵ハガキはどれも人物部分を大写しにしたものばかりで、自分にとって一番興味深い字の部分が見事にカットされていてガッカリ。そこでいっそのこと、と思い切って図録を買った。図録に掲載された図版は褪色が復原してあって、展示作品よりもキレイなので逆によかったかも。そのほか、数枚の絵ハガキと、ダロワイヨとのコラボ商品のチョコを買った。これはパッケージが「椿姫」のデザインの缶なのだ(これも文字部分がカットされているのがとても残念だ)。
さて、楽しみにしていたディナーはひっさびさのオ・プレチェネッラ。メインにいただいたドンブ産うずらのフォアグラリゾット詰めは濃厚で、どっしりと食べごたえがあった。満足な花金だった。
(そごう美術館・2013年11月29日観覧)
根津美術館に、孤篷庵所有の大名物にして国宝の井戸茶碗「喜左衛門」が来るので見に行くことにした。もしかしたら過去に見たことがあるかも知れないが、少なくとも、茶道具に興味を持ち始めたここ2年ほどの間には見ていない。
この冬、三井・五島・根津の3つの美術館がタイアップして『茶陶三昧』というキャンペーンを打っており、いずれかの入場半券を提示すれば他館の入場料が割引となる。10/14に三井美術館の「国宝卯花墻と桃山の名陶」を観に行ったので(この展覧会じたいは印象が薄く、そのあとに寄った貨幣博物館の方が面白かった)、その半券を使って、根津を割引きしてもらおうという算段だ。ちなみに五島は国宝がなかったのでパスした。
美術館に到着したのは開館直後。どうせ空いてるだろうと思ったらなかなかの賑わいだった。お茶会があるらしくて、そのついでの人が多いようなようす。
展示室に入ってすぐの単独ケースにお目当ての国宝喜左衛門を見つけ、ひとしきり眺めたが、なんだかよくわからん。とりあえず国宝を見るだけは見て、ほかのものを見ようと周りを見渡して、ぎょっとした。
展示されている茶碗はすべて井戸茶碗なのだ。どれもこれも、全部が全部、おんなじ茶碗にしか見えない・・・ こっ、これはレベルが高い。
しかたないので展示室の解説に頼った。てか、最初からこれ見れば良かったのだけれど。
曰く、大井戸茶碗の見どころは、轆轤目、竹節状の高台、高台内の兜巾(とは言っても鏡の上にでも展示しないと見えないし、この展覧会はそうではなかったのだけど)、枇杷色の釉、総釉、高台の
対して小井戸は、大井戸に比べて浅めの碗形、わずかに口径が小さく、高台も小さく低い。あとは大井戸と同じ。
いっぽう、青井戸茶碗というのもある。だが色は青とは限らず、むしろ共通するのは、高台から口径までがほぼ直線、高台が低い、轆轤が強いという点。また、釉薬のかからない火間が見られる。火間は釉薬を柄杓で掛けるとできる。大井戸も柄杓がけをすることはするが、丁寧に作るので、火間は見られない。
そんなこんなで、一回りして二回りめに入ると、おぼろげながらも味が分かったような気がしてきた。特に梅花皮はそれぞれの茶碗の違いが大きく出ていて面白かった。
というわけで、やっぱし茶碗は奥が深いのだということを改めて思い知ったのだった。とりあえず、我々ふたりは細川が一番よかったということで意見が一致した。
このほかの見ものとしては、展示室6の国宝「鶉図」があった。また、根津は青銅器もよい。
庭園の一角にある NEZUCAFE で数量限定のハンバーグとニース風サラダを食べ、新宿で買い物をしてから帰った。
(根津美術館・2013年12月7日観覧)