KATZLIN'S blog

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ユトリロとヴァラドン 母と子の物語2015-07-18 22:27

ユトリロとヴァラドン
ユトリロだけの展覧会だったらまず行かなかっただろう展覧会。ユトリロは暗い壁ばかりで好きでない。まったく興味がなかったが、相棒の職場の同僚の評価は高いという話だった。
そうこうしているうちにぶら美で取り上げられた。興味のないままに番組を見たら、ユトリロはともかく、ヴァラドンが良さそうだ。展示リストによるとユトリロ:ヴァラドン比はほぼ同数で、ヴァラドンはおまけ、ということはなさそうだ。さらにリストをよく見ると、ポンピドゥーセンター所蔵の作品が結構ある。へえ、だったら行ってみるか、という気になった。

スマホでチケット情報を探していたら、tixee なるもので前売りと同額で販売というので、勇気を出して使ってみた。「電子もぎり」って何だそりゃ?


夜間開館日である金曜にちょうど東京出張があったので、仕事あがりに相棒と落ちあい、大雨の損保ビルへと向かった。予想どおり、人は少なかった。
受付で恐る恐るスマホ画面を見せると、係員氏は tixee のシステムを知らず、ぱらぱらっとマニュアルを見たあと、裏に聞きに行った。もう一人係員氏が出てきて、無事に入場の運びとなった。うん、確かにこれは電子「もぎり」だ。

入り口から展示室への導入にはヴァラドンを中心とした相関図が掲示されていた。全盛期のトレンディドラマのようだ。
以下、印象に残った作品はすべてヴァラドンのもの。

画家の母
No.21。この場合の「画家」はヴァラドンのこと。顔の皺の深さが絶妙だった。
モーリシア・コキオの肖像
No.29。服の裾の垂れた飾りの描写に惹かれた。
裸婦の立像と猫
No.34。浮き出た背骨がシンプルな表現ながらもリアルに感じた。
黒いヴィーナス
No.35。ぶら美では、ゴーギャンみたいだという評価だったが、確かにモデルもポリネシア系だし、そう思える。この絵は縦が160cmあり、会場内でも一番大きいクラスで、人物もほぼ等身大だ。そして、上手い。
コルト通り12番地、モンマルトル
No.36。人物画中心と思ったら、風景画もなかなかイイ。
ユッテルの家族の肖像
No.39。3人並んだ表情の乏しい人物たち。キスリングに似ているような、似ていないような。
長椅子に座る裸婦
No.41。肌の色がブルーがかってて独特。
チャールズ・ウェイクフィールド=モリの肖像
No.42。椅子に肘をかけポーズをとる禿げた丸顔のおじさん。他の作品と違い、顔の輪郭の線が細めなのがまたいい。
窓辺のジェルメーヌ・ユッテル
No.44。チケットにあしらわれている作品。窓辺でいすに座り、窓枠に肘をかけて外を眺める女性の絵。緑の髪が美しい。窓外の緑ともマッチしているようだ。
自画像
No.45。鏡に写った自画像。線の使い方が上手いと思う。結構エラがはってる。

ヴァラドンのことは、これまで知らなかった。ひょんなことから好みの画家を知れたのが、なんか嬉しい。ぶら美でもデッサンが上手いと絶賛していたがそのとおり。静物画なんかも上手い。
この展覧会も、よくよく見るとサブタイトルに小さく「スュザンヌ・ヴァラドン生誕150年」とか入ってた。そういう点で、ヴァラドンひとりの展覧会にしたいけど、日本では知名度が低いからユトリロとセットにしたのだろうと思った。いや、待てよ、逆に、ユトリロひとりの展覧会にしたかったのに、数が集まらないからやむを得ずヴァラドンをセットにしたのかも知れない。そう、なんてったって、ここは安田火災東郷青児美術館なのだ。

ユトリロは流してチラ見だけした。やっぱり、風景がしっかりしているのに、その中の人物が子供のお絵描きなのが残念。ただ、薄暗い白い壁の印象しかなかったところ、色彩の時代とかいうのもあったのが意外だった。

図録を買うともれなくユトリロが付いてしまうので、絵ハガキを5枚買った。でも、うち1枚はユトリロの花の絵にした。新宿3丁目まで行ってお気に入りの店で夕食をとってから帰った。
(損保ジャパン日本興亜美術館・2015年6月19日観覧)