KATZLIN'S blog

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高野山の名宝2014-12-18 23:55

高野山の八大童子が10年ぶりに8人揃って出開帳というので、早割ペア券を買って待ち構えていた。実は、我々はその10年前の展覧会(「空海と高野山」東京国立博物館)も見に行っていて、ちゃんと図録も買ってある。チケット購入後に発表された出品リストを見てみると、その展覧会とかなりダブっていて笑えた。でも8人揃って拝める機会はそれ以来というのだから、べつに構わない。
看板


のんびりめに家を出て、クリスマス飾りのミッドタウンに着いたのは11時過ぎ。前の週に見に行った職場の同僚によると「そんなに混んでない、作品数が少ないからすぐ見終わる」という話。しかし3階の会場入り口に到達すると、ロッカーに人だかりが。しまった、こりゃあ出遅れたか。
と、焦ったが、仏像などの大きなものがメインなので、作品前に大行列、というようなことはなかった。

記憶とは適当なもので、10年前に全員にお目にかかっているはずだが、チラシになったりするアイドル的な矜羯羅(こんがら)童子と制多伽(せいたか)童子以外は覚えがない。というわけで新鮮な気持ちでの対面だった。
やはり矜羯羅、制多伽は素晴らしい。あと、恵光(えこう)もなかなかよい姿。鎌倉仏ならではの描写に惚れ惚れしてしまう。よく見ると、みんなアンクレットなんか着けてたりして可愛らしかったりもする。

ところでこの展覧会のチラシには『運慶作の国宝、八大童子勢ぞろい』とある。まるで8体とも運慶作のような表現だが、指徳(しとく)童子と阿耨達(あのくた)童子は室町期の後補である。指徳童子なんか姿がまんま四天王だし、阿耨達童子はヘンテコな竜みたいなのに乗っちゃってるところからして明らかに他の皆さんと違う。2人ともどう見たって「童子」に見えない。それになんてったって、出来が悪い。これで国宝はありえないでしょ、とか話していたら、案の定、(つけたり)だった。そりゃそうだ、鎌倉時代より後の国宝仏なんて聞いたことないもの。まあ附も国宝には違いないんだろうけど、言うなれば「おまけ」なのだから、さも国宝本体のように堂々と名乗るのはどうかなあと思う。いや、それ以前に、運慶作を標榜しているのが気にいらないのだけど。で、新薬師寺の十二神将の宮毘羅大将が1人だけ国宝指定されていないことを大っぴらにしているのを思い出して調べてみたら、附どころか、そもそも文化財指定されていないのだった。
しかし一番驚いたのは、帰宅後に高野山公式サイトを見て知ったのだけれど、あの指徳童子と阿耨達童子のお姿は、「秘要法品」なる書物にそのまんま同じ見本が載っている、ということなのだった。

同僚の証言どおり、確かにすぐに見終わってしまった。もう一周してから会場を出た。図録は10年前のものがあるので買わなかった。8人勢揃いしている絵ハガキを買って、帰った。
(サントリー美術館・2014年11月30日観覧)