KATZLIN'S blog

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特別展「鳥獣戯画-京都 高山寺の至宝-」2015-05-10 23:35

鳥獣人物戯画は、前年の京都展のとき、京都に行って見ようかと思っていたところ、上野にも来るというので思いとどまった経緯がある。しかし京都での大混雑を知り、そんなんなら行かなくていいや、というヌルい考えでいた。

ところが、鳥獣人物戯画とは関係ないところで、東博本館の新指定国宝・重文展示に病草紙がお目見えという。
自分は美術好きではあるが、画集はたった4冊しか持っていない。で、そのうち2冊が日本の絵巻シリーズ「鳥獣人物戯画」と「餓鬼草紙・地獄草紙・病草紙・九相詩絵巻」である。つまり、東博で、この2つが同時に見られるということなのだ。なんか、見に行くほうがいいような気がしてきた。
(ちなみに、残りの2冊の画集はマグリットとブリューゲルで、2015年5月は、なんとこの4冊すべての絵が東京で展示されるという、個人的には惑星直列なみの巡りあわせの月なのである)

しかも、よくよく調べたら、鳥獣人物戯画については、前期だけだけど、断簡が勢揃いするという話。どうやらアメリカに渡ったものも里帰りするという。これってすっごいチャンスなのでは。
特に相棒は鳥獣人物戯画を見る気満々で、金曜の夜間開館を狙えばいいんじゃないかという話になり、仕事を早退けして上野に行くこととなった。


表慶館と看板
東博入館は17時半頃。会場の平成館への入場制限はなかった。半券を提示すれば再入場は可能というので、とりあえず鳥獣戯画展に入場。いつもは2階の南側のホールにある展覧会グッズ売り場は1階に置き、替わりに内臓のようにぐねぐねとした甲巻待ちの行列ができていた。
甲巻は120分、丁丙乙巻(ヘンテコだがこの順序に並んでいる)は30分の待ち列となっていたので、列のないものから見ることにした。やや遅れて相棒が到着した。華厳宗祖師絵伝といった国宝もあるが、鳥獣戯画の行列を考えると、なんか気が散ってしまう。

華厳宗祖師絵伝 義湘絵(高山寺・国宝)
No.105。一部屋丸々がこの絵巻の展示だった。絵もそんなに上手くないせいもあって、全場面展示は冗長すぎて、名シーンだけでいいと思ってしまった。だから空いているのかも、という気がしないでもない。そういう意味では、鳥獣人物戯画の引き立て役となってしまっているかもしれない。鳥獣人物戯画が気になったこともあるが、ここはすっ飛ばしてしまった。
鳥獣人物戯画断簡(東京国立博物館)
No.118。ずいぶん前だが東洋館の地下で見た記憶がある。田楽を描く甲巻16紙の前に入るという。この他にも失われた図があるという。この断簡を欠いて甲巻を継ぎ合わせた編集者が上手いなあと思うのだった。
鳥獣人物戯画断簡(個人)
No.119。益田家旧蔵。益田って?? と調べたら、実業家にして茶人の益田鈍翁とのこと。軸装としては横長すぎるという。レースで劣勢の猿が兎の耳を引っ張っちゃう描写なんかは、もう名人芸だ。こういう「あるある」な感じが、この絵巻の(特に甲巻の)魅力なんだろう。そういや甲巻の兎と蛙の相撲シーンでも、兎は耳をかじられているが、やっぱり弱点なのか。
鳥獣人物戯画断簡(個人)
No.120。アメリカからの里帰り断簡。鹿に振り落とされた猿のこの表情はどうだ。そういや甲巻で背中を痛めて柄杓の水で冷やしてもらっているのも猿だっけ。
鳥獣人物戯画断簡(MIHO MUSEUM)
No.121。この断簡は親子の描写が多いという。確かに。蛙親子の肩車がほんわかして凄くイイ。蛙の子ならオタマジャクシじゃないとおかしいとか、そういうツッコミは無粋である。昭和に発行された当家所蔵ウチの画集には「東京某家蔵」とあり、No.120とのつながりを暗示している。曰く、中央の驚いた猿の視線の先にはNo.120で猿を振り落とした鹿がいるというのだ。
鳥獣人物戯画断簡(MIHO MUSEUM)
No.122。丁巻の断簡。これは昭和の当家所蔵の画集には載ってない。4つの甲巻の断簡に比べると、やはり面白みに欠ける。
明恵上人樹上座禅像(高山寺・国宝)
No.25。自分にとっては、どっかで見たはずだが思い出せない、もしかしたら見たことないのかも知れない、という印象の絵。有名な隠れリスの居場所は解説パネルでばっちり分かっちゃうので謎解き的な趣向はイマイチなのだけど、リスがいる理由についても書いてあったのでまあいいか。
仏眼仏母像(高山寺・国宝)
No.49。白い美しい絵。余白の讃がどうとかはあまり興味がない。

18時過ぎに平成館を出て本館に行き、通常展と平成27年新指定国宝・重文の展示を鑑賞。彫刻部門が素晴らしいが、やっぱり鳥獣戯画展を考えて気が散ってしまった。

木造虚空蔵菩薩立像(醍醐寺・国宝)
平安時代の檀像。衣紋が見事。でっぷりとした躰がいかにも平安な仏像だ。どっかで見たことあるなあと思ったら、過去に東博「仏像展」でも見た、今まで聖観音として知られていた仏像のようだ。このときのチラシに横顔が載っている。
木造弥勒仏坐像(東大寺・国宝)
「試みの大仏」として有名な像。これまた平安仏っぽいおおらかさがイイ。これまた過去に東博「仏像展」でも見た。これまたチラシに横顔が載っている。ん、てことはこれまた一木なのか。
木造二天王立像(荒茂毘沙門堂管理組合・重文)
これも平安時代の仏像。平安期の天部の像はそんなに怖くないような気がする。にしても、これだけの平安仏が並ぶと、特別展のようなクオリティになってしまうのが凄い。まあ、だからこそ文化財に指定されたってことなんだろうけど。
病草紙断簡(文化庁、九博・重文)
全5点。当家所蔵の画集によると、病草紙には22編があるようだ(最近の説では21か?)。で、この展示はすべて画集にはないものばかりだった。なわけで、見て「あれ、知らないのばっかり」と、がっかりしたような、逆に新たなものを知って嬉しいような。「口より屎をする男」の詞書はまあまあ読めたものの、あとはちょっと難しかった。
土偶(富士見町井戸尻考古館・重文)
なんとも愛らしい土偶。先般の日本国宝展で土偶がフィーチャーされた記憶も新しいので、ちょっとツボにきた。重文指定の理由のひとつに保存状態がよいことがあげられている。
法隆寺金堂壁画写真ガラス原版(法隆寺・重文)
仏像写真では有名な便利堂の撮影した写真の原版。このまま焼失した壁画の画集が出版できそうな。
ヱーセルテレカラフ(個人蔵・重文)
幕末のもので、最古の国産電信機とのこと。電信機ってことはモールス信号とか、電報みたいなことができるわけ? それが幕末に、国内で作られていたってこと? ん、電信ってことは電気はどうしたんだろう?
いろいろ疑問や興味が湧いてはくるものの、モノが置いてあるだけで仕組みが分からない。管理している諫早市美術・歴史館ではレプリカを動かせるらしい。そういえばファクス機を実用化したのって日本が最初なんだったっけ。そういう技術の系譜の始まりってことなんだろうか。

本館を出て18時55分に平成館に戻ると、入場制限が始まっていた。
兎や猿の戯れる平成館前の池
入場に40分、甲巻が120分、丁丙乙巻も70分とか。全部見たらあと4時間弱かかる。最後は23時とか、これホントかね。もうこれで自分は鳥獣人物戯画は見る気がなくなった。係員は、20時を鳥獣戯画展への最終入場時間とすると案内していた。21時には他の展示は閉めるが、それまでに甲巻の列に並べば、見終わるまで開けているとのこと。だから、20時までに入って、まず他の展示を見てから最後に甲巻に並ぶように、と。

コーンがうら寂しい平成館前広場
入場には実際は30分もかからなかった。相棒が丁丙乙巻に並び、自分は別れて再び断簡を見た。このときは断簡前はほとんど人がいない状態で、心ゆくまで堪能できた。
またまた平成館を出て中庭で夜風にあたったあと、20時ちょっと前にまたまた平成館に戻った。このときはさすがにもう入場規制はなかった。2階に上がって待合のソファでまったりした。丁丙乙巻を見終えた相棒は20時24分に甲巻の待ち列についた。110分待ちの表示だった。ソファで本を読んだりしていたが、ふと、21時ぎりぎりに丁丙乙巻を見るといいんじゃね? と思い、20:50に行ってみたら、最後の10人くらいの固まりに入った。

鳥獣人物戯画 丁丙乙巻(高山寺・国宝)
No.117〜115。閉展間際ではあったが、じっくり鑑賞できたのはよかった。甲巻は数回は見た記憶・記録があるが、もしかしたら丁丙乙巻を見たのは初めてなのではないかという疑惑が生じた。甲巻に比べて影が薄くて覚えてないだけかもしれないけど。
特に丁巻が良かった。実物の筆使いによるものなのか、それともやっとの思いで見た絵巻に対する個人的な感傷なのか、写真だと落書きに見えるが(実際、落書きなんだろうけど)、実物を見ると生き生きとしていてなかなかイイのだ。これまで丁巻には興味が持てなかったけど、結構好きになった。

21時10分には丁丙乙巻を見終わり、またソファに座って閲覧用図録を眺めたりしていた。21時20分ごろ、ようやく相棒が甲巻の展示室に吸い込まれていくのが見えた。つまり、2階南側のホールに内臓のように並んでいた時間は1時間近かったわけだ。
さすがに手持ち無沙汰になったので、1階に降り、ショップで竹マグネット4種と絵ハガキ3枚を買って、博物館を出た。グッズも甲巻推しだった。先に帰るにも中途半端な時間なので、上野公園で音楽を聞きながら本を読んだり(電子書籍は暗くても読めるのがいいところだ)して相棒を待っていると、22時39分に相棒から甲巻を見終わったと連絡が入った。相棒の後ろにも大勢の人が並んでいたが、いったい最後は何時になっただろう。

夕食をとっていなかったので、売店でサンドイッチを買って小田急特急の車内で食べた。家に着いたのは0時を過ぎていた。
後期は、断簡も半分なくなっちゃうし、新指定国宝もないし、法隆寺宝物館は休館。しかし蛙と兎の相撲という超有名シーンが展示される。さてどうしよう。
(東京国立博物館・2015年5月8日観覧)