茶碗のような焼物には前から興味はあったのだが、BSアニメ『へうげもの』を見始めてから茶道具全般に興味がわいてきた。畠山記念館に、関連番組の『へうげもの名品名席』で紹介された楽茶碗「早船」が出ているので、散歩がてら、見に行ってきた。
畠山記念館は、荏原製作所の創業者である畠山即翁が生前蒐集した日本美術を展示している。年に4回展示替えをしているようだ。この日は秋季展の期間だった。題して「茶人 畠山即翁の美の世界」。
最寄り駅は都営地下鉄の高輪台だが、五反田駅から歩いて行った。駅前の広い坂は相生坂といい、この下を地下鉄が通っている。歩きやすかったが、元々は急峻な坂道だったそうな。高輪台駅から先はちょっと道が分かりにくかったが、ある程度目星をつけておけば、あとは電信柱に付いている案内が頼りになるだろう。
入館はスリッパ履き替えなので、脱ぎにくい靴を履いていくとほんのちょっと面倒かもしれない。
記念館を出てから品川方面へ散歩。『タモリのTOKYO坂道美学入門』で知った高輪消防署二本榎分署が見えてきた。
レトロでいい。しげしげと眺めていると、入口の張り紙の下の方に「見学希望者は受付に・・・」の文字が。えっ、中を見せてくれるの。恐る恐る入るとすぐ受付があった。受付氏はすでに我々を察知していたらしく、「見学ですよね」と向こうから声をかけてもらえた。
内部見学は署員の案内つき。現役の公署でもあるし、へたなところに入られたり、怪我でもされたりするとマズイのだろう。しかも記念絵ハガキ付きである。それでももちろん、タダなのだ。
2階の踊り場を眺めてから3階へ。階段の手すりのシックながらも冷徹な印象の素材は、赤大理石とコンクリを混ぜ合わせたもので、それをピカピカに磨き出したものとのこと。円筒型の3階はかつての講堂で、現在はささやかな資料室となっており、古い消防用具などが置いてあった。それからバルコニーに出て望楼を見上げた。いい雰囲気だ。完成した頃は周囲に高い建物はなく、東京湾まで見渡せたとか。
最後は駐車場に降りて、消防署のイメージのあのすべり棒を見たり、停めてある消防車両を見たり。東京消防庁にも9台しかないというキッチン車両は中も見せてもらえた。なかなかない、よい体験だった。
桂坂を下りたあと、特に行くあてもないので、今度は高輪プリンスまでまた坂を登って旧宮家の邸宅だった貴賓館を眺めてからラウンジでケーキを食べたりしてのんびりしたあと、品川駅へ。途中ウィング高輪に秋田県のアンテナショップがあったので寄ってみると、「アンテナショップスイーツNo.1決定戦 ASS-1グランプリ」で1位をとったという「まち子姉さんのごま餅」なるものがあったので買って帰った。
(畠山記念館・2011年11月26日観覧)
休暇をとって買い物ついでに横浜みなとみらい地区を散歩。横浜税関の資料展示室と、海上保安庁の工作船展示館を見学した。
これらは国の業務の広報施設で、事業仕分けで打ちきられた丸の内のJAXA情報センターなどと同種のものといえる。もちろん、どちらも無料で見学できる。
まずは横浜税関資料展示室へ。
「クイーンのひろば」と名づけられたスペースに、麻薬や拳銃などの密輸防止と、模造品の輸入差止めに関する資料が展示されている。
密輸入の手口は大掛かりなものがいくつか紹介されていた。中古ボートの船底からは拳銃が見つかったり、バドワイザーの缶の中からは麻薬が見つかったり。缶ビールなんかは、乾燥大麻が軽いため、重量調整の重りまで入っていたという。
模造品は押収物が展示されていて、映画DVDだとか、大きなものとしてはバイクがあった。どれも中国からのものばかり。
実物と偽者を並べたコーナーでは、答えが別にカードになっていてクイズ形式。ルイ・ヴィトンは答えを知ってもどっちがどっちか見分けがつかなかったが、ハンティング・ワールドは一発で分かった。
2つめは海上保安資料館横浜館。税関からも近い。赤レンガ倉庫のすぐ海側にでっかく「工作船展示館」とあるのですぐ分かる。
2001年に起きた、九州南西海域工作船事件の工作船の展示室で、以前から見てみたいと思っていたのだ。
館内に入ると錆びついた船がいきなりそびえていて、ちょっとした感動というか、衝撃を受けた。許可のない写真撮影は禁止とあったので、受付の係員氏に恐る恐る申し出ると、自由に撮って構わないとの回答。聞いてみてよかった。
船体の弾痕などを見ながら後ろにまわる。横腹には宮崎の船と偽装するための木片や、工作員が所持していた金日成バッジなどが展示されていた。
船尾にまわると、またまた衝撃が。工作船は、後半部がミニ工作船の格納庫になっているのだ。そのミニ工作船も展示されていた。さらに水中スクーターなるものまであり、まるでマトリョーシカのようだ。潜水具を着た工作員がこの水中スクーターに乗って外国に侵入しようとしていたようだ。
対空機関銃も生々しい。この銃で、海上保安官が負傷させられた。命がけで日本を守る人たちがいるのだ。尖閣諸島事件もあったことだし、多くの国民にもっと知られるべき施設だと思った。
ところで今回、この2施設に行ったのは、平日じゃないと開いてないと思ったからだったのだが、帰宅してから調べたら、どちらも休日にも開いているみたいだった・・・
(2011年11月25日)
表題は、7月9日配信のYahooニュースの読売新聞の記事。
先月気になって書き留めておいたエントリー「環境省の山小屋トイレ設置補助が廃止ですとな」のその後の話題だ。曰く、
国立公園内などの山岳地帯で、山小屋の経営者らがトイレを設置する際、環境省が費用の一部を補助する制度が論議を呼んでいる。
省庁版の事業仕分けで、「廃止」と判断されたものの、登山関係者や自治体から「環境保護のために必要」と反発が出ているためだ。同省は12日に有識者らの検討会を開き、今後の方策を考える。(中略)
先月18日には、日本山岳会メンバーや山小屋経営者らが、同省に事業継続を求める要望書を提出した。
山梨県も幹部が同省に出向いて継続を訴えた。(中略)
こうした声を受け、同省は、12日からの検討会で、山岳トイレの整備や補助のあり方を再検討し、来年度の概算要求方針に反映させる考え。
自分は前回のエントリーで、廃止とされても実際には継続する事業もあるようだ、とは書いてはみたのだが、まさかホントにそうなるとは思ってもみなかった。だって、山奥のトイレだから。さすがにこれは、山なんか登らない大多数の人の理解は得られないだろうなあと思っていたのだ。
それが、なんですか、登山関係者や自治体が反発したら、再検討してくれるんですか。1ヶ月で方針転換とは見事っすね。はやぶさ後継機の仕分けとかと同じ方向なんですかね。
民主党政権になってから、陳情の類は民主党幹事長室に窓口が一本化され、各省庁では受け付けなくなったはず。小沢一郎の失脚でそのタガがゆるんだということなのだろうか。要望を申し入れたのが山岳会だってことだけど、もしこれが山岳ガイド協会だったりしたら、会長が自民党のあの人なもんだから、拒否されちゃったりして。
にしても、やっぱり仕分け会議をするにも費用は掛かるんだろうなあ。「有識者」への報酬とか。で、今後の方策を考えるのにまた「有識者」の検討会を開く、と。誰が仕切ったり仕込んだりしてるのかよくわかりませんが、なんだかもう、ね。
まあ今の政府はやることなすこと一事が万事こんな調子だから、今さら驚くことではないのですが。
なんにせよ、論議を呼びおこした登山関係者や自治体の方々は、グッジョブでした。トイレの補助なんかが廃止されたら、次は登山道整備とか、調子こいてどんどん仕分けされるようになるかもしれないところを、(一時的かもしれないが)食い止めたのは我々登山者にとっては朗報です。
で、最初は仕分け結果の速報しかなかった環境省のサイトにコメント全文が載っていたので、あらためて読んでみた。このページをよく見たら動画が配信されてるみたいだけど、ウチの環境じゃエラーが出て視聴できない。まあどうせタカビーな仕分け人のしゃべりにむかちゅくだけだろうから、この方が精神衛生上いいかもしれない。
で、全体を見るに経費削減のことしか考えていないわけだが、まあそれはそのための会議なわけだから当然なわけで。
前回のNHKウェブニュースを読んだとき気になった「本来は利用者が負担すべきで、税金を投入して国民全体で負担するのはおかしい」ていう意見は、ホントに載っていた。ただし、公共性の定義を明かにして、一般国民に理解していただく必要がある
という意見も載っているので、バランスはとれていると言えるか。でも段落が分かれているからそれぞれ別人の意見なんだろう。少なくとも、仕分け人の中にひとりはぁゃιぃ人がいるに違いない。
なんだか訳のわからない意見も。民間の山小屋がトイレを整備して競争力を発揮したくなるような政策
ってのは、いったいなんだ? 競争的仕組みの再構築
ってどうするんだ? トイレで競争? 山奥に、いくつかの会社のトイレが並んでいて、登山者はいずれかを選んで用を足すというのか? 普通に街を歩いていても、そんなところ見たことないように思うんだけど、それを山の中でやれと? それともなにかもっと高邁なこと考えてるのか? 謎は深まってゆく。
結局、「議論のための議論」とか「パフォーマンス」という印象をますます深くした1件でした。
6月10日付けNHKウェブニュースの「エコ機器導入補助 廃止を」なる記事中に、次のような一文が。
国の事業にむだがないか検証する環境省のいわゆる「事業仕分け」が行われ、小型の風力発電設備など温暖化対策のための機器を導入する際の補助事業について、「規模が小さく波及効果がない」などとして、「廃止すべき」という結論をまとめました。
9日に環境省で行われた事業仕分けでは、6つの事業を対象に有識者らが、むだがないか検証しました。このうち、小型の風力発電設備や、太陽熱を利用した冷暖房システムなど、二酸化炭素の削減のための機器を普及させるため、まとめて導入する地域に国が費用の一部を補助する事業について、有識者から「予算の規模が小さすぎて、全国に波及効果がない」という意見や、「自治体の予算でやるべきだ」といった意見が出され、廃止すべきと結論づけられました。また、国立公園などの山小屋が環境対策としてトイレを設置する費用の一部を補助する事業も、「本来は利用者が負担すべきで、税金を投入して国民全体で負担するのはおかしい」という意見が出され、あわせて3つの事業が廃止すべきと結論づけられました。環境省は、これを受けて事業の見直しを進めることにしていますが、今回対象となった3つの事業の予算は環境省全体の0.2%だということです。
環境省のウェブページの「行政事業レビュー」というのがこのニュースの言う「事業仕分け」のことだ。昨年度の事業を考察して、来年度予算のための資料にするものらしい。
ネット中継もやってたみたいだけど、知らなかったので見られなかったのは残念。まあ、どのみち平日の昼だから無理か。え、事前の意見募集もあったの。くっそー、知ってりゃ意見送ったのに。
で、中に取りまとめ結果のページがあり、速報のPDFを見ると、「山岳環境等浄化・安全対策緊急事業費補助」は廃止とはっきり書いてあった。
この事業の「レビューシート」の説明によると、平成13年度(2002年)の調査では全国約300の山小屋のうち改修が必要なのが約200で、そのうち約100が昨年までに整備完了、とのこと。まだ100件残ってるけど補助打ち切りで、改修するなら自前でやれ、ということになるわけか。
「有識者」で構成された仕分けメンバーの経歴をググってみると、総勢8人のうち環境に関係ありそうなのは3人だけで、あとは経済とか経営がご専門の模様。つうことは、行政刷新会議と同様に、事業(環境)の重要性よりもカネを重視ということか。はあ、とりまとめ役の人は国の事業仕分けもやってた人なんですか。へえ、京都府議会の民主党議員、ね。ははあ、つまり、公開処刑のパフォーマンスってことですか。行政刷新会議で大々的にやるんならマスコミがとりあげてヨイショしてくれるけど、ひとつの省庁でやっても注目度は低いから、パフォーマンスとしては効率が悪そうなもんだけど、どうなんだろう。
行政刷新会議の仕分けは廃止と結論が出ても、実際には継続する事業もあるようだけど、こっちはどうだろうか。これから注目していきたい。
にしても、ニュースで言ってる本来は利用者が負担すべきで、税金を投入して国民全体で負担するのはおかしい
ていう意見はホントに採用されたんですかねえ。言ってることはわかるんだけど、これは何にでも当てはまるから、理由にはならない。高速道路無料(または休日割引1000円)だって、本来は利用者が負担すべきで、税金を投入して国民全体で負担するのはおかしいはずだし、子ども手当てだって、本来は親が養育すべきで、税金を投入して国民全体で負担するのはおかしい、と言えてしまう。言い出したらキリがないわけで、公共性の有無や高低をどう判断しているのかを示さないと意味がないのだ。
まあニュースだから、その場の議論ではちゃんと示しているのを省略したのかも知れないけど、自分は中継も見てないし報告書も出てないのでその辺はわからない。でも、あのデタラメ政党が音頭取りだからあやしいもんだ。
余談ですが、有識者(仕分け人)の経歴をググっていて、立教大教授の人が懐かしいドラマ『セーラー服通り』(主題歌が渡辺美里の「My Revolution」だった)の人と知ってマジでびっくり。で、そのドラマに、仕分け親分の蓮舫が出演していたのを知ってまたまたびっくりしたのでした。
先月末の白峰三山縦走の際に北岳山荘でテントを張ったところ、フライシートのシームテープが剥がれはじめているのを見て、劣化が進んでいることにようやく気付いた私。そのわずか1時間後に雷雨に遭うとはつゆ知らず、「雨の日にはテントを張らなきゃいいんだよ」とか相棒と冗談を言いあっていたのだが、劣化はかなり重症で、もっと条件が悪かったら相当ひどい目にあったに違いない。
実を言うと、ちょっとボロくなったな、とは思っていたのだけど、しばらく雨に降られなかったのでその深刻さが理解できていなかった。テントで雨に降られたのは4年ぶりのことだったのだ。
今から修理に出していたのでは夏山が終わってしまうので、自前でなんとか直そうと画策した。
ネットで検索すると、市販のシームテープを購入し、アイロンなどで貼り付けることができそうだ。で、購入しようとするもシーム「液」は売っているものの、テープが見当たらない。都心のでかい店に行かないとだめなのか。
これは相棒が近所の店で聞いてきたという話なのだが、最近ではテープで自分で補修するのではなく、メーカーの修理扱いばかりになってきているという。補修用テープなんか置いといても売れないらしい。で、状況によっては、テープ補修ではなくてフライ交換の方が安くつく場合もあるとのこと。
いずれにしても時間がかかってしかたない。ググると、わざわざ新しいテープに替えなくてもアイロンをあてればまたくっつくみたいだ。当方のテントは10年選手。古いので上手くいくかわからないが、ダメモトで試してみることに。
ググって得た情報どおりに、当て布をあて、アイロンは低温に。裾の方でおそるおそるやってみるとなんとくっついた。なるほど、乾燥しきってぱりぱりになった接着剤がアイロンで溶けてまたくっつくというわけか。
上手くいきそうなので、さっそくテープが剥がれたところを補修。接着剤はテープでなくてフライ側に残っていたが、まだ始めたばかりでそのことが分からなかった。というわけで接着剤部分がずれたまま貼ってしまったが、縫い目は覆っているので問題はなさそうだ。
最大の患部が上手くいったことに気を良くして、フライシート全周にアイロンを当てることにした。
アイロンは動かさないで、押し付けるだけがよさそうだ。軽く押し付けて10秒数えて離してみて、付きが悪いようならさらにもう10秒、という作業を繰り返した。
全周すべてを終えるのに2時間かかった。テントを畳むときにいつも折り曲げるところは、接着剤も残っていないようでくっつかなかったが、これはしょうがないか。この秋まではもってくれるといいのだが、来シーズンまでには、テントを買い換える必要がありそうだ。
ここ数年、春には一本桜を見に出かけている。今年は日帰りで2回。1回めは山梨県の
ハイキングとして本サイトのほうで記録をまとめたいと思っていたが、どちらも結構歩いた割にはハイキング感があまりにも希薄なので、ウェブログで写真だけ残すことにした。写真はいずれもフィルムカメラで撮ったのをスキャンしたもので、最後の1枚以外はPLフィルタ使用。周辺減光の症状が出てる写真もあるけど気にせず掲載しちゃう。
まずは4月12日の乙ヶ妻のしだれ桜。始発列車で塩山に向かい、駅から徒歩1時間40分ほど。駅から歩いてくるような物好きは我々以外にはさすがにいなかったようだ。
この桜はまだ若く、支柱がまったくないのがいい。尾根の突端から甲府盆地に向かって突き出すように伸びていて、四周どこからでも味わいのある姿だった。苔むした幹も美しかった。着いてまず一周したあと、下からずっと見上げていたらあっという間に2時間たってしまった。ぜんっぜん飽きない。
続いて三春桜めぐり。4月22日の火曜日で、天気は高曇り。明るくて暑いのだけど、青く抜けない空だった。
朝一番の東北新幹線に乗れば三春駅には朝8時過ぎには着く。速いもんだ。この季節だけの観桜バス(1,000円で乗り降り自由)がうまく接続していて、滝桜とは9時前にご対面。
第一印象は、意外に小さいな、という感じだった。ウェブやらテレビやらであまりにも見すぎていて勝手に妄想が膨らんでいたせいだ。しかしぐるりと一周するとこの桜の凄さが徐々に体に浸みてきた。
少しだけ葉が出ていたので、見頃ではあってもピークはちょっと過ぎていたかもしれない。でもまさに絢爛豪華。こりゃ人気が出るわけだ。観光ツアーが入れ替わり立ち替わり押し寄せる。
滝桜近くの田村家のしだれ桜を見たあと、11時発の三春駅行きバスに乗り込み、途中の常楽院のあたりで降ろしてもらい、八十内のかもん桜へ。ここも立派な桜だった。(写真は逆光で真っ暗だった(泣))
そのあとさんざん道に迷って1時間近く歩き回り、ようやくお目当ての芹ヶ沢のしだれ桜に着いた。
この桜も、山梨乙ヶ妻の桜と同様、支柱がないのですっきりときれいだ。空に向かって伸びているように見えるが、角度を変えて見ると上の方は結構こんもりとしていたりする。桜は天下の名桜なのできれいで当然という気がしたが、ここは思っていた以上に良かった。
滝桜はあまりにも観光地ずれしていたが、こちらは大型バスが入れないので観光客の姿はなく、カメラマンばかり。どこに行ってもマナーが悪いカメラマンが多いけど、地元のおぢさんたちが整理員として目を光らせているせいか、人んちの畑に入る馬鹿野郎もいないしイザコザもなし。仮設テントの即席休憩所でお茶と漬物をいただきながらまったりと桜を眺めるひとときは、心静かでじつに幸せだった。
芹ヶ沢をあとに町の中心へと向かう。
途中には美しい桜がそこかしこに。道をたずねたときに「満開の立派な桜のある角を左に」とか説明されたが、満開の立派な桜のある角がやたらとあって困った。
国道288号に突き当たったところの高台には紅白の桜が並んで咲いていた。往きにえらく気に入ってずっと見上げながら歩いた桜だ。しかしよくよく見ると近くに芹ヶ沢を示す小さい矢印が。この桜に見惚れていたおかげで道標に気づかず道に迷ったことが判明したのだった。
常楽院の桜を見下ろしつつ中心街に入り、浪岡邸の桜やお城坂のしだれ桜などを見たあと(いずれもピークは過ぎて散りはじめていた)、遅い昼食をとってから福聚寺へ。
福聚寺のしだれ桜は山の斜面にたわわに咲いていた。そういう木が2本あった。この時間は光線があまりよくなかったが、夜ライトアップされると、空中に浮かぶ桜は幻想的だろうと思った。
それにしてもカメラマンが凄い。どいつもこいつも人の墓に入って三脚立てまくり。参道ならまだしも、思いっきり各家の区画の中で、墓石の目の前に。自分だったら気が引けるところだが、そういう人間の方が少数派なのだろうか。
このあと資料館にある桜谷のしだれ桜を見ておしまい。バスと電車を乗り継いで帰宅した。
と、振り返ってみると、今年見た桜は乙ヶ妻と芹ヶ沢が双璧で、滝桜は別格という感想。
山歩きの楽しさ・感動を倍増させてくれた本。通読したのは3度めだが、山行き前にはこれから行く山の項だけ読みかえしたりしていた。
で、どう倍増したのかというと、最後の「あとがきにかえて」にあるとおり。
山はみごとな風景を楽しみ、高山植物の美しさを愛でるだけでも十分に楽しい。それだけでいいという人もいるにちがいない。だから、「なぜ」などと考えるのは、めんどうくさくてかなわないという人も少なくないことだろう。これはもう趣味の問題だから、その人なりの楽しみ方でもちろんいいのだが、本書で紹介したような知的な登山のおもしろさもぜひ味わっていただきたいとわたしは思う。
たとえば観光旅行するにしても、名所旧跡をただ見てくるだけよりも、その来歴を事前に知ったりしていると見方がまったく違ったり、感動が増したりすることがある、そういう感じだ。とくに難しいことは書いていないし、山のガイドブックとしても良い本だと思う。ほかに『山の自然学入門』という本が古今書院から出ているが、この方が難しい。
「まえがき」にはこうある。
たとえば、北アルプスの白馬岳でコマクサを見たとします。そのとき、「あっ、コマクサだ。きれいだなあ。写真を撮ろう」で終わるのではなく、「どうしてここにコマクサがあるのだろう?」と考えると、<山の自然学>がはじまります。
キツい登りだったりすると「なぜ」とか「どうして」とか、なかなかそんなふうには頭が回らない。それに、砂を見て「この山は○○岩からできてるな」なんて素人にはなかなか判断できない。だからこの本で予備知識をつけていく。そうやって山行を繰り返していくうちに、岩を見ながら「今、モレーンを越えてるんだ」とか、「二重山稜に入ってきた」とかいう実感が湧いてきて感動したりもできちゃう。ただの岩くずにしか見えず、だれも見向きもしないソリフラクション・ローブを、ふむふむこれは周氷河地形だな、と思えるようになったのはこの本のおかげだ。
ただ見るだけ、撮るだけの登山よりも幅が広がったと思う。
ところで、著者はNHKで現在放送中の『日本の名峰』シリーズで取材協力としてクレジットされている人だ。全回じゃないけどかなり多く見かける。番組中で、なんか聞いたことある解説だと思ったときはこの人が元ネタなのかもしれない。
(小泉武栄著・1998年)(2007年8月2日読了)昨年、「明日の天気がわかる本」を読んで、もっと山に特化した天気の本を読みたいと思っていたところで見つけた本。こういう本が欲しかった。
「明日の天気がわかる本」はモノクロ写真の雲がよくわからなかったが、こちらはカラーなので分類もわかりやすい。雲だけじゃなく、山の写真も多くて、それを見るのも楽しかった(ひとつトムラウシの写真が間違っていたのが残念)。
構成は次のとおり。
第1章・天気の基礎知識、第2章・山の天気の基礎知識、第3章・山の局地気象、第4章・山岳気象遭難、第5章・気象データ。
1章→4章にかけて大局的な見方から実際的な見方へと、対象が細かくなっていく。第4章は実際の遭難事例の判断ポイントについての具体的な解説で、第5章は各地の夏山の平均気温や天気出現率、天気に関する言い伝えなどの雑多なデータ集となっている。
章建てもそうだが、話の進みかたも理路整然としていて、「こういう天気はこのような条件のときに現れる」ということが論理的に説明されているのでよく理解できた。これは覚えやすさにもつながると思う。
第1章はチト退屈だったが、2章、3章は得るところが大きかった。地上の風向からジェット気流の流れを読むなど、計画段階や山中でも実際に使えるテクニックがたくさんあるのがいい。特に天気図の書き方のツボは衝撃だった。等圧線を書かなくてもいいなんて! こういうことは学校の山岳部や山岳会などでは教えてもらえるのかもしれないが、無手勝流の自分には目からウロコなのだった。
読み終えて、過去の自分の山行と照らしあわせたとき、2005年の朝日連峰なんかは、遠雷を甘く見ていてヤバい状況だったと反省した。また、このときの天気予報は晴れだったけれど、前日から続いた蒸し蒸しした感じから、雷を予想できたのではないかと今にして思った。夏山だったら雷があってもおかしくないという覚悟をしてはいるが、「あるかもしれない」と「あるに違いない」ではやはり心構えが違うものだ。
表紙カバーの見返しの著者紹介に顔写真が出ていて、どこかで見たことある人だな、と思ったら、NHKで天気予報をしている人だった(村山貢司氏)。また、もうひとりの岩谷忠幸氏も日テレの気象アドヴァイザーということだが、この人の写真は明らかにどこかの山中で撮ったものだ。山歩きをする人が書いているから、通り一遍の教科書的なものじゃなくて、おもしろく読めたのかもしれないと思った。
(村山貢司、岩谷忠幸著・2005年)(2007年6月19日読了)4月28日、小布施町の隣の信州高山村で桜めぐりハイキングをすることになったが、天気予報が雨になってしまったのでハイキングを一日延期してこの日を小布施観光にあてることにした。
お目当ては、北斎が描いた岩松院の天井絵「八方睨み鳳凰図」である。天井絵は常識的に考えて持ち出すことは不可能なので、現地に行かないと見られない。実は本題のハイキングよりもこっちのほうが楽しみなのである。
朝一番の新幹線あさまで長野へ。長野電鉄に乗り換えて小布施駅に降り立ったのは8:40ごろだった。午前中は曇りで午後から雨の予報だったが、もうすでに降っていて気分が萎える。
岩松院の拝観は朝9時に始まるので、今から歩いていけばちょうどいいだろう。観光地をつないだ循環バスもあるようだが、始発は9:57でまだ1時間以上先だ。駅に置いてあった「信州おぶせマップ」なる観光絵地図をゲットし、小降りになったのを見計らって歩きだした。
寺へは駅前を左に出て道なりに行くだけ。道中にはぽつりぽつりと案内板もあるが、曲がらないので迷いようがない。30分もかからずに岩松院に到着した。途中で雨もあがってしまった。門前には桜の木がたくさんあったがほとんど散っていた。
まだ朝早いためか境内は閑散としていた。拝観料を払いどきどきしながら本堂内へ進む。見上げると、凄まじい迫力で睨み付ける鳳凰がいた。極彩色といっていいのだろうが、赤が少なめなのと、青が深いせいか、決して派手ではなく不思議な落ち着きを感じる。150年前に描かれたまま、補色などはしていないという。トサカのあたりのごつごつが、油絵で特殊なマチエルを使ったときのようにちゃんと3Dになっている。寺のサイトの説明では「独特の技法で仕上げた」とあるが、どんな技法なんだろう?
30分も見上げていたらすっかり首が痛くなってしまった。
続いては隣の浄光寺へ。岩松院からは歩いて5分程度で、その道は遊歩道として整備されている。花桃が満開だった。
ここに寄ったのは駅前の観光案内を見て、薬師堂が国の重要文化財に指定されているというのを知ったから。門からお堂までは雰囲気のある緩やかな石段が続いていたが、市民サークルなのか教室なのか、ビデオカメラをかついだ人たちが跋扈していてちょっと興醒め。ちょうど日が差してきて、先ほどまでの雨を吸ったちょっと朽ちかけた茅葺の屋根からは水蒸気がもうもうとあがっていた。
1/25000地図を見ながら小布施ワイナリーへ。ここも北斎の天井絵とともに楽しみにしていたところ。浄光寺からは30分くらいかかった。
小布施ワイナリーは最近メディアで取り上げられることが多い。が、実物にはあまりお目にかかったことがない。ドメーヌ・ソガシリーズのシャルドネを一度飲んだことがあるだけだ。
一般の観光客向けのワイナリーではないし、観光地図にも載っていない。が、ワイン好きなら楽しめると思う。試飲アイテムが少なかったのがちょっと残念だったが、有料試飲では1杯300円で結構たっぷりと飲ませてくれ、チーズもいただいた。ヴィオニエやサンジョヴェーゼといった、国産では非常に珍しいセパージュのワインがあったりした(開いてなかったけど)。我々がブルゴーニュが好きだということを言うと「ではぜひブルゴーニュと比べてみてほしい」と、在庫僅少となったピノノワールを出してきてくれた。
じっくりワイン選びなどしていたら昼近くになってしまった。買ったワインは配送(合計12,000円以上だと配送無料)にしてもらってワイナリーを出た。
駅の方に行けばなにか食べるところがあるだろうと駅に向かった。歩きだしたら天気が急変し、大粒の雨が降ってきた。遠くに雷鳴まで聞こえる。蕎麦屋にでも逃げ込もうかとも思ったが、結局、事前にチェックしていたフランス食堂ヴァンヴェールという店に入った。
ランチのメニューから、自分は紅鱒とアボカドのギャレット、相棒は鶏のコンフィとモツァレラのギャレットを注文した。料理が運ばれてきて、意外にもヴォリュームがあったのでちょっと驚いた。紅鱒とアボカドのギャレットは、ソースがチーズ系の不思議な味で、ピンクペッパーがぴりりと効いていた。なかなか美味しくて、ランチでこれならディナーも期待できるところだが、残念ながら今宵は高山村に宿をとってある。
デザートまで食べ終わったところでちょうど小降りになったので、店を出た。
北斎館へと向かう道でようやく知ったのだが、小布施は、ベタな観光地だった。町の観光政策が実ったということのようだが、自分はこういうワザとらしく作られた街並みがどうも好きになれない。衝撃を受けつつ、作り物のチャラい演出のオシャレでステキな栗の小径から高井鴻山記念館に入った。
高井鴻山については、北斎を小布施に招いた豪商、という程度の知識しかなかったが、実は本人も絵を描いたりなどの多芸多才な人であるということを知った。また、「ゆう然楼」には幕末の志士たちが集まるなど、相当顔の広い人物だったようだ。そんなわけで、ゆう然楼には彼らのために抜け穴があったりするのだった。その隣に「碧い軒」という茶室があって、これが北斎のアトリエとして使われていたということだった。わざわざ北斎のために鴻山が建てたというものだ。
次に北斎館へ。この周辺が一大観光基地となっており、土産物屋が軒を連ね、大型観光バスがひっきりなしに出入りしている。建物はどれもオシャレでステキだ。
ここは北斎の肉筆画が多く展示されているのが売り。改築して版画の部屋も作ったということだが、それらの展示品は、まだ若いときに勝川春章の門下にいたころの美人画などが多く、北斎らしさを感じるものは少なくてちょっとがっかり。富獄三十六景くらいしか知らないような普通の観光客は、こんなの見てもおもしろくないだろうに。なぜこんなに人が集まるのかわからない。
また、映像ルームでドキュメンタリーが放映されていたがこれもイマイチだった。北斎の生涯や業績が紹介されるのかと思いきや、「北斎はこの絵を描いたとき、何を思ったのだろうか」みたいな抽象的なことばかり言っていて退屈だった。そんなわけで、映像は2編あったがもうひとつは見なかった。
見るべきものは屋台の天井絵だった。ひとつは鳳凰で、朝方見た岩松院の天井絵を小さくした感じだ。だが大きさの違いもあり、迫力ではかなわない。男浪は町の下水のマンホールにもデザインされていた。富獄三十六景の神奈川沖浪裏を連想する。
北斎館を出て駅に向かうが、まだちょっと時間があるのでお茶をしようということになった。
小布施といえば栗菓子だが、有名なのは和菓子ばかり。ここでは洋菓子を食べたいという相棒の要望により、とおり沿いのオシャレでステキな栗の木テラスという店にはいった。有名な桜井甘精堂の洋菓子部門で(建物もすぐ隣)、結構混んでいたがタイミングよく待たずに入れた。モンブランと栗のロールケーキとマロンシュークリームを注文した。栗はいかにも和栗な優しい味と香りがして美味しかった。それに、なんといってもマロンクリームが自分の好みにどんぴしゃだった。
駅に着いたのは16時過ぎ。長野方面への次の電車は特急列車。電車が来るまでの間、ホームの反対側にある「ながでん電車の広場」で退役した 保存車両を見学したりしてすごした。
やがてやってきた特急「湯けむり」はなんと小田急ロマンスカーのお古だった(そういえば、往きに乗った各駅停車は東急のお古だった)。特急料金は100円で、自由席。4両編成だけどがらっがらで、小田急では相当運が良くないと座れない展望車両に座ることができた。さすがに最前列は無理だったけど。
特急には1駅だけ乗って須坂で降り、バスに乗り換えて一路高山村へ。翌日の桜めぐりの記録はメインサイトの「信州高山村桜ハイキング」へ。
自分の中では小布施といえば、北斎・ワイン・栗なのだが、その全てを味わうことができた楽しい1日だった。が、あまりに観光地化していたのにはちょっとびっくりした。岩松院はとても静かだったが、これは朝一番に行ったためだろう。偶然だが運が良かった。
今回訪れた施設など(リンク先はそのウェブサイト)
岩松院
浄光寺
小布施ワイナリー
フランス食堂ヴァンヴェール
小布施堂
北斎館
栗の木テラス(桜井甘精堂)
小布施町
毎週、日本を代表する名峰の一つにスポットをあて、その雄大で美しい山容を余すところなくお伝えいたします。さらに、これまでNHKに蓄積された映像をふんだんに織り交ぜ、衛星画像を使用した3次元立体の「名峰3D地図」もパワーアップ!日本の山岳映像の永久保存版というにふさわしいシリーズをお届けします。
NHKの公式サイトにこんな売り文句があるこの番組。11月の本放送開始以来、見られない日には録画して(今のところは)欠かさず見ている。
がっ、しかし。夏に放送した、予告編ともいうべき4回シリーズを見ていやな予感がしていたのだが、その予感どおりにがっかりすることになってしまった。
これには、自分の場合は2つの要因がある。
まず、映像が使いまわしであること。
『大雪山』や『鷲羽岳』の回では2年くらい前に放送された「国立公園2泊3日トレッキングの旅」の映像が使われていた。『鷲羽岳』では見覚えのある黒部遡行の映像も多く、番組で案内役だった志水哲也氏が(後ろ姿や横顔ばかりだったけど)やたらと映っていたためか、エンドロールに「取材協力」としてクレジットされていた(大雪山の市根井孝悦氏の名前はなかった)。ほかに気づいたところでは、剱岳の回に「さわやか自然百景」の『北アルプス 剱岳』とそっくりなのがあった。
なにしろ見ていて全然統一感がない。いかにも継ぎはぎの寄せ集め映像な感じがしてしかたない。ひょっとしたら、このシリーズのための撮りおろしは空撮だけなのではないか。公式サイトの売り文句は、これまでNHKに蓄積された映像をふんだんに織り交ぜ
たとあるが、実際のところは「寄せ集めた」というのがより正確なのではないだろうか。
こういうのって、登山コースを紹介するのにはどうかと思う。天気はコロコロ変わるし、映っている人もコロコロ変わるから、同じ道を進んで行っているという感じがまるでしないのだ。
もうひとつは、番組のテーマが見えないこと。
かつての日本百名山シリーズには、「その山に思い入れのある人が、その山に登り、その山の魅力を語る」というスタイルがあった。人間味があってよかった。こんな山があるんだ、行ってみたいなあという気にさせられた。「さわやか自然百景」は、逆に人間を極力排して、景色や動植物をクローズアップしている。こんなところにこんな生き物がいるんだ、実物を見てみたいなあという気にさせられる。
しかしこの「週刊日本の名峰」シリーズは、見てもそんな感想を持てない。たしかに映像はきれいなんだけど、「ああきれいだな」で終わってしまう。ファッションモデルなんかに、顔はきれいだけどどんな顔だったか思い出せないような人がいたりするが、なんかそんな感じだ。
(たぶん)過去の映像を編集しただけだから、統一したテーマなんてないのだ。シリーズはおろか、ひとつの山をとっても、たとえば『鷲羽岳』や『北岳』では登山コースが2本紹介されていて散漫。「魅力を多面的に紹介する」といえば聞こえはいいが、焦点が定まらなくて冗長な印象しか残らない。
あと、がっかりとは違うのだけれど、気にくわないというか、違和感を覚えるところが、ひとつの山の範囲。
山の人気投票をやったりすると問題になるのが、どこまでをひとつの山とするか、ということだ。これが自分の感覚とマッチしないと「そりゃ違うだろ」となってしまう。だから雑誌なんかでこのテのことをする場合は、あらかじめ「○○岳は△△山に含みます」なんていう注意書きがあったりするのだが。
今まで放送された分でそれを激しく感じたのは、『大雪山』の最終目的地がトムラウシ山だったこと。そういや公式サイトの大雪山のフラッシュもトムラウシ山だ。
一般に「大雪山」というと、主峰の旭岳とお鉢平周辺の山を思い浮かべる人が多いと思う。トムラウシ山はその旭岳から普通の脚力で3日近くかかるほど距離があり、まったく別の山だ。たしかに大雪山系の山ではあるし、「表大雪」という概念では一緒にされることもある。だけどそれはひとつの山の名前ではなくて山域の概念だ。トムラウシ山は「大雪山系の山」ではあるけど、「大雪山」ではない。旭岳に行かずにトムラウシ山だけ登った場合は「大雪山に登った」とは言わないはずだ。
それなのに、番組ではトムラウシ山が大雪山の最終目的地なのである。旭岳にも登ってはいるが、あっさりと通過してしまって完全に脇役。旭岳を念頭において「大雪山」に投票した人は放送を見てがっかりしたのではないだろうか。旭岳周辺には裾合平や沼ノ平やお鉢周遊のような魅力的なコースがいっぱいあるのだから、そっちを紹介することだってできるはずだし、そのほうが自然だと思う。それに、そもそもトムラウシ山は、番組の投票では大雪山とは別に50位あたりにランクインしていた。
こんなことに引っかかってちゃあテレビを楽しめないということは重々承知しているのだが、大雪・トムラウシ双方とも大好きな山なだけに、十把一絡な扱いをされたのがどうにも気にくわないのだ。
と、文句を言いつつも、なんてったってハイビジョンの映像はきれいだし、たぶんこれからも毎週見続けるのだろうと思う。もちろん、大好きな大雪山や北岳は保存版DVDにしてあるわけで。
しかしそれにしても、結構大きくキャンペーンをうって始めたシリーズにしてはお粗末だなあという気がする。スタート時はタレントまで使ってちゃんと取材山行してたのに、それで予算がなくなっちゃったのかな、とか余計な邪推までしてしまう今日このごろ。
と、こんな投稿をした直後の、3月3日放送の鹿島槍はすばらしかった。自分が求めていたのはこういう放送だ。
剱をバックの稜線歩きは見ていてうずうずしてきた。たまらない。前々から行ってみたいと思っている山だったが、優先順位がかなり上がった。