KATZLIN'S blog

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ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳わたしの国貞2016-05-18 19:43

国芳・国貞展看板
ボストンから、国芳と国貞の状態のよい浮世絵が里帰りという話だが、なんかビミョーな気が。国芳は好きな絵師とはいえ、没後150年(2011年)の展覧会が印象にあり、またか、という感じが否めない。一方、国貞はちゃんと見たことがなくてなんかピンと来ない。うーん、早割ペア券なら一人1000円だし、まあ見に行ってみようかなあ、というゆるい期待感のまま、ペア券を買って会期を待ち構えた。


GWの美術館はどこも大層な混雑というニュース。最終日の日曜はどうだろうか。
bunkamuraには9:45頃に到着。ざっと数えたところ、50番目くらいだった。暑い初夏の朝だったが、屋根の下には余裕で入れた。10時2分前くらいに扉が開いたが、この時点で列は倍くらいに伸び、最後尾は屋根からはみ出すほどだった。
下に降りてからチケットを持っている/いない列に分かれるが、チケット窓口には結構な列ができていて、ちょっと意外な感じがした。持っている方は列にもならず、我々はスムーズに入場できた。
猫又

国芳もやう正札附現金男 野晒悟助(国芳)
No.7。猫でできた髑髏模様の衣装の大首絵。チラシの「江戸時代から髑髏好き」というやつだ。国貞の「当世好男子伝とうせいすいこでん」シリーズ(No.8〜10)、「当世三極志」(No.11)もそうだけど、鬢の透かしの表現が細かく、耳が透けて見えるのが美しい。
木曾街道六十九次之内 細久手 堀越大領(国芳)
No.30。背景の雲と山が髑髏と磔。髑髏はともかく、磔が浮遊霊みたいでなんか怖い。
水瓶砕名誉顕図みずがめをくだいてめいよをあらわすのず(国芳)
No.39。いかにも国芳らしい、勇ましい武者絵。柴田勝家が馬で敵を蹴散らして突き進む姿のアップ。敵が空中に飛び散っているのがより疾走感を出している。現代の漫画によくあるような演出だ。
二代目岩井粂三郎の揚巻、七代目市川團十郎の助六、三代目尾上菊五郎の新兵衛(国貞)
No.41。国貞の役者絵は、小品によいものがあった。助六は内容を知っているというのも、楽しめた理由かもしれない。統一された桜花のバックで、花びらの凹凸が3Dでよい。空摺りという技法だそうで、会場出口に技の紹介ビデオがあったので、それで知った。
大当狂言ノ内 八百屋お七 五代目岩井半四郎(国貞)
No.48。目千両と呼ばれ、目がチャームポイントという岩井半四郎。でも目ん玉出過ぎでなんか怖い。髪の生え際に線があるのはカツラの表現だとかいう話。
「金神蝶五郎」初代坂東しうか、「本町綱五郎」八代目市川團十郎、「放駒の蝶吉」三代目岩井粂三郎、「幻竹右衛門」初代坂東竹三郎、「鹿の子寛兵衛」三代目嵐璃寛(国貞)
No.55。5人の服は揃いで白地に紫色の模様。この模様は人物にちゃんと合わせてあって、綱五郎は綱のデザインだったりする。背中に挿した団扇は半分見えていて、名前の一文字が書いてあるのが分かる。江戸っ子がこういうのをカッコいいと感じるのが分かる気がする。
「御誂三段ぼかし」(国貞)
No.59。赤と緑の役者の家紋(どうやら替紋らしい)があしらわれた、現代でも通用しそうなポップな揃いの背景が素晴らしい。手拭いの使い方は5人それぞれで、そういった対比も面白い。上述のNo.55と、この作品を含むNo.58からNo.62までは、何しろデザインが秀逸。この一角まで来たところで、この展覧会を見に来た甲斐があったと思った。今まで国貞をちゃんと見たことがなかったが、認識を新たにした。
田子のうら風景(国貞、広重)
No.141。国貞・広重のコラボ作品。3連の左が広重の描く漁師だが、この人物画がいかにも広重で(五十三次でよく見る目が点の人たち)、国貞とのレベルが違いすぎ。広重だけで完結していれば何とも思わないのに、並べると違和感ありまくりで笑っちゃう。というより、広重はやはり風景画の人で、景色を引き立たせるには人間の描写はこの程度でいいのだ。それを国貞の人物が主役の座をかっさらってしまったということなのだろう。「山城 宇治川蛍狩之図」(No.145)も同様。
初雪の戯遊(国芳)
No.154。猫雪だるま。とは言うものの、脚を踏ん張ってすっくと立っているところは、ダルマじゃないよなあと思ったり。図録の解説によると、当時の江戸ではミミズクやら犬やら、いろいろな造形の雪だるまを造るのが流行したとかいう話。しかもこの猫雪だるま、かなりでかそうだ。
「松葉屋内 粧ひ わかな とめき」、「中万字や内 八ツ橋 わかば やよひ」、「扇屋内 花扇 よしの たつた」、「姿海老屋内 七人 つるじ かめじ」、「弥玉内 顔町 まつの こなつ」(国貞)
No.155。ベロ藍の藍摺絵で、染付の焼き物を連想した。モノトーンなのが印象的だが、自分にはやはり普通の色とりどりの絵の方が好みだ。

会場を2周した。入場したばかりの時間帯は、まあまあ空いていてゆったり鑑賞することができたが、11時を過ぎるとなかなか混み合ってきた。
色が美しいのは評判通りだし、何よりも折り目もないようなピカピカの絵ばかりで、素晴らしい浮世絵展だった。特に、国貞の役者絵の魅力を知ることができたのがよかった。自分は美人画には興味が持てないのでスルーしてしまったが、美人画ファンの相棒が言うには、モデルのファッションがさまざまで、面白かったという。
国芳の野晒悟助(No.7)の絵ハガキと図録を買った。図録を買った決め手は、国貞「御誂三段ぼかし」(No.59)が見開きで大きく掲載されていたこと。ガチャガチャは猫又、猫骸骨、骸骨下駄の3種類だが、2回やったら猫又と下駄が出た。このどちらかが欲しかったので、ちょうど良かった。
ドゥ・マゴのランチ
美術館と同じフロアのドゥ・マゴでランチをいただいてから(カレー風味のソースが美味かった)、渋谷を後にした。いいものを見て、美味いものを食った充足感に満たされた。
(Bunkamura ザ・ミュージアム・2016年5月8日観覧)