近年、「みちのくの仏像」などの小規模(の割には観覧料の高い)展覧会の会場として使われている東博本館1階第5室。今回は滋賀の櫟野寺という寺の秘仏が出開帳にお出ましなさるという。やってくる20体の仏像は、全て重文なんだとか。前売券を買って開催を楽しみにしていた。
家を朝9時ちょい前に出て、東博には10時過ぎに着いた。平日朝の上野は、白人旅行者と、年寄りが多かった。
博物館に入っても同様だった。本館の向かって右にはどでかい垂れ幕がさがっていたが、入口が補修工事中だったのはちと興ざめな感じがした。そして第5室に入ると、白人はいなくなり、年寄りだらけになった。
- 十一面観音菩薩坐像
- No.1。会場の中央に鎮座まします、この展覧会のメインの像。秘仏だけあって彩色がきれいに残り、鈷杵やら転法輪の模様がよく見えた。流れるような光背も美しい。像の周りは360度周れるが、暴悪大笑面はこの光背があるため正面からは見えずに横から見える形だった。全ての面の写真が会場の解説板に載っていた。
チラシに「高さ5mの大迫力」とかなんとか書いてあって、その文句を鵜呑みにしたせいか、それほど大きくもないような、いや、大きいんだけど、これくらいの大きさなら他にもあるよなあとか、なんかちょっと思っていたのと違うような気がしてしまった。部屋広すぎ・天井高すぎなのかもしれない。迫力よりも美しさとか荘厳さの方が強く感じられた。実に素晴らしい仏像だ。
- 観音菩薩立像
- No.6。丸顔であどけない表情。ひと目見て気に入った。解説板には鉈彫と書いてあり、確かに、顔はきれいで体に彫りが残ってる。鉈彫は東日本固有のものだと思ってたが、西にもあるのか。西の鉈彫だからなのかどうか、彫りもちょっと浅いように感じられた。だからなのかどうか、鉈彫というよりは作りかけの未完成品のような気がした。櫟野寺公式サイトの解説では、
鉈彫像は関東以北にみる様式化された像が多く、また、足先は共木から刻み出すが、形を彫るだけで完全な足とはしていないことなど、鉈彫か未完成品かといった問題を考える上でも重要な像
と言う。
- 観音菩薩立像
- No.7。目が釣り上がった細身の像。このタイプは甲賀地方に独特で、「甲賀様式」と言うんだとか。会場内をぐるりと囲む小像のうちでは、これが一番上手かった。
- 薬師如来坐像
- No.9。いかにも平安時代なおおらかな像。これくらいの大きさの像が最大で且つ本尊、と言う寺も多いだろう。やはり秘仏十一面観音の大きさは特筆すべきことなのだろう。
- 観音菩薩立像
- No.12。タレ目の像。ふにゃんとした雰囲気がなんともいえず、イイ。No.6の観音像と並び、この展覧会のお気に入りとなった。
- 地蔵菩薩坐像
- No.16。頭まで金ピカの地蔵。地蔵像って木肌剥き出しの茶色いイメージがあって、こんな金ピカ像はちょっと記憶にない。そばで見ていたおばさんも「頭まで金ピカよ」と言っているのが聞こえた。みんな同じ印象らしい。
- 地蔵菩薩立像
- No.18。薄い笑み、体の厚みが薄いのは平安後期の特徴的な作例という。襞のない衣は本地仏の影響との解説であった。
場内をぐるぐる回っているうちにやや混んできたので会場を出た。すぐ隣の部屋がグッズショップになっており、絵ハガキを5枚買った。あと、「櫟」普及委員会の「櫟」Tシャツをつい買ってしまった。背中に「since792」とあるのは、ちょっと前にタモリ倶楽部でシンスブームを披瀝していたみうらじゅんの仕業に違いない。
本館をひととおり周ると11時半になったので、最後にもう一度櫟野寺展に再入場してひとまわりしてから、東博を出た。あとから展覧会公式サイトにある「甲賀・櫟野寺ルポ漫画」を見て知ったのだが、次に寺で拝観できるのは2年後だとか。いやあ、今回、観といてよかった。
昼食は12時前に店に入りたい。久々に伊豆栄の鰻を食うことに決めたが、本店まで行くと昼を回ってしまいそうなので、東照宮そばの梅川亭という支店に行った。美味であった。
東京駅に移動し、大丸の世界のワインフェアでしこたま呑んで買い物をしてから帰った。今回平日に休みをとって出てきたのは、このワインフェアの週末の混雑を避けるためなのだった。
(東京国立博物館・2016年10月13日観覧)