KATZLIN'S blog

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ホイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展2017-06-02 00:30

24年ぶり来日という小バベル。ブリューゲル好きを自認する者としては見に行かないわけにはいかない(とは言うわりには24年前の記憶はない)。会期の早いうちから関連テレビ番組が続いており、早めの平日に行くことが肝要と考えた。
バベルの塔展看板


​東京の通勤ラッシュのピークをちょっと過ぎた9時20分頃に上野に着いた。修学旅行っぽい中学生や動物園遠足っぽい幼稚園児の合間を縫って都美術館へと進む。スタバの裏から行列が伸びているのが見えてビビったが、それは開門前の門前の行列で、近づいてみるとさほどでなく、胸をなでおろしつつ、最後尾につく。
開門すると、列は静々と進んだ。幅の狭いエスカレータで地下1階へ降りる。階段は追い抜き防止策か、ロープが張られていた。地下1階に着くと、意外なほどに当日券売り場に並ぶ列が長かった。前売購入済みの我々は、入場口へと遮二無二突き進む。チケットもぎりの列は、延々と蛇行していたモネ展などとは違い、たった一曲がりしているだけで、蛇行はおろかS字すらできていない状況だった。入ってすぐにエレベーターで2階へとあがる。バベルの塔が最上階(2階)にあることはリサーチ済みだ。

果たして、バベルの塔の前には年配の婦人が一人いるだけだった。やはりだいぶん小さい。小さいのは予想どおりだったが、それでも近づけば肉眼でも細部は見えるもんだと思っていたところ、無理だった。顔をくっつけるくらいにすれば見えるのだろうが、そんなことできるわけがない。早速望遠鏡と単眼鏡を取り出した。これでようやく細部の作業員やらが見えた。
2階の部屋は、バベルの塔専用となっていた。相棒は凄いオーラを感じたという。自分は人の少ないうちに見たいという一心だったので、空いていて胸をなでおろすばかりだったが、確かに、薄暗い部屋に1枚だけ絵がかかっている様は、神々しくさえあった。

双眼鏡でじっくり細部を見る。教会の彫像とか、白い人とかは、双眼鏡などの望遠装置がないと確認はできないだろう。塔と空の境界を見たときに、遠近感が強調されて見えたのも、双眼鏡の効果かも知れない。
そうこうしているうちに徐々に見物人が増えてきたが、長居する人はあまりいなくて、比較的短時間で映像コーナーに移動してしまう。せっかく空いてるのに、見ないなんて、なんともったいないことか。人垣はできても2列くらいで、後ろにまわっても人の肩越しにちゃんと見える程度。他の人に場所を譲っても、少しするとまた人が減ってすぐ最前列に復帰できる。じっくりと鑑賞することができたのは素晴らしい体験だった。

気付くと早くも30分が経過していた。一度映像コーナーで解説を見てから、再びバベルの前に戻ってまたまた細部を確認。それでようやく他に移動する気になった。エレベーターで地下に戻る。地下の部屋には坊さんの像とか、なんだか古いテンペラ画があった。興味が湧かないので完全スルー。
1階に上がると、バベルの塔に匹敵する目玉のボスの油絵が2枚並んでいた。寓意画とされるもので、こちらも小さいだろうと思っていたのだが、(バベルとは違って)思ったほどでもなく、木に描かれたフクロウなどは肉眼でも確認できた。聖クリストフォロスの背中にのっている幼いキリストのポーズが笑えた。子供の頭と体の比率がおかしいのも、中世絵画の面白いところ。
いずれも貴重な絵なのだが、純粋に美術として良かったかと言われると、どうなのだろう。

ボス・リバイバル(初めて聞いた言葉だ)の作品群は惹かれるものがなかった。このコーナーを過ぎると、ようやくブリューゲルのコーナーになる。版画で、7年前に Bunkamura で観た『ブリューゲル版画の世界』の印象が今でも強くて、既視感がたっぷりだった。7年前は大罪も美徳も四季も全部セットで来ていたが、今回は揃っていないのは残念。7年前にはなかったもので面白かったのは、「樹木人間」くらいか。今回はバベルの塔がメインなので、版画が揃っていないのは仕方ないか。と思ったが、その割りにはボスが来てたりして、どこに力が入ってるんだか、何だか散漫とした後味だった。まあ展覧会の名前じたいが「バベルの塔展」なのだから、他は間に合わせなのに違いない。

最後にまたバベルの塔をじっくり見てから会場を出たら、11:30だった。出口にいたマスコット「タラ夫」の脚が妙にリアルだった。ちなみにこのキャラは7年前の Bunkamura では「足魚」と名付けられていた。
タラ夫
グッズコーナーがなかなか充実していて、エッグスタンドがいいなと思ったが、ウチはあまりゆで卵を食べない。クリップ入れに使うというテも考えたが、それで2000円はちょっとなあ、ということで購入を断念した。結局、ボスの絵ハガキと、バベルのA5サイズ絵ハガキ(これがまた細部がよく分かる)と、キモカワマグカップと、大きな魚が小さな魚を食うTシャツを買った。図録はやめて公式ガイドブックを買った。図録は興味のなかった展示もあますところなく収録されているがガイドならその辺の配分がちょうどよかったのだ。あと、ピンズのガチャガチャもやってしまった。なんだかんだ、結構散財した。

12時ちょっと前で、昼食をとるなら今のうちだ。美術館内の2階の精養軒に入り、バベルの塔展記念メニュー(オランダのコロッケとかスープ)を食べた。
バベルの塔展コラボメニュー
午後は特に予定がなく、考えた結果、3月に続いて2度めのミュシャ展に行くことにした。14時に乃木坂駅からの直結出口を出ると、チケット売り場に30人くらいの列ができていた。売り場の掲示を見ると、ミュシャ展は待ちはなく、草間彌生展が40分待ちとあった。入場制限がないならいいだろう。中に入ると、混んではいたが、モノが大きいので、まあ許容範囲だった。前回味わった感動が、じわじわと蘇ってきた。一度見ているので、混んでいても落ち着いた気持ちだった。ここでももちろん、双眼鏡が活躍した。グッズ売り場の行列が凄まじいことになっていた。
ミュシャ展グッズの行列

一日で小さな絵と大きな絵とを鑑賞したが、そのいずれでも双眼鏡が役立ったのが、面白いと思った。
(東京都美術館・2017年5月19日観覧)