東京国立博物館の南禅寺展に行った。
平成館2階の半分を使っただけであったが観覧料はなんと1,200円。展覧会の呼び物となるような目玉があるわけでもなく、公式サイトでゲットした割引券を使っても1,100円と、激しい割高感であった。
国宝の展示は3件、重要文化財は多数であった。以下、印象に残ったもの。
(東京国立博物館・2004年2月11日観覧)
宮大工として長年働いてきた筆者が、自分のお気に入りの寺社建築について、その見所を丁寧な語り口でわかりやすく述べた本。もちろん図版も豊富で、構造に関するものはイラストで解説してあったりするので直感的に理解できる。巻末には文中に登場する専門用語の索引もついているので、資料としても使える。
ポイントを絞って解説してあるので、その建物のイメージが湧いてくる。たとえば法隆寺の夢殿は、軒の
全体は、大工としての心構えや現代建築に対する感想などを随所に交え、法隆寺から始まって建築年代がだんだん新しくなる章立て、さらに章の中身はモデルコース仕立てになっていて、エッセイ・文化史・ガイドブックの要素を詰め込んだ欲張りな内容となっている。つまり、丁寧な語り口のエッセイを読んでいるうちに、木造建築の変遷の大まかな流れをつかみ、その時代を代表する建築物の集中する地域がわかるのだ。
しかし何よりも、根底にある「建築技術とは、建てるためのものではなく、美しく見せるためのものだ」という考えが、本書を親しみやすくさせているのだと思う。コムズカシイ技術論よりも、美しいということが第一なのだ。単純明快、なんともわかりやすい。
ひとつ残念なのは、近世の建物が出てこないこと。これは文中でも何度も触れられているのだが、筆者がとりわけ中世建築を好んでいるからだ。「まえがき」にも自分の独断で選んだと断ってあるので、そのつもりで読まなければならない。
実は昨年12月に滋賀県の国宝建築を見歩いたことを相棒の伯父に話したところ、こんな本があるよと紹介されて読んだのだが、文中に実際の旅行とまるっきり同じモデルコースが紹介されていた。もうちょっと早くこの本と出会っていたら、件の滋賀国宝旅行もまた違った印象を得たに違いない。
次の旅行にはぜひこの本を携行したいと思った。