ワインは好きでよく飲むが、シャンパンは高くてなかなか手が出せない。しかたないので、イタリアのスプマンテなどを楽しんでいた。スプマンテもシャンパン製法で作られたものは結構美味いのだが、でもやっぱり、シャンパンにはかなわないと思う。だからもうちょっと、シャンパンのことをちゃんと知っておきたいと思っていたところだった。
いったいシャンパンのどこが凄いのだろう。
まずシャンパンをめぐる最近の事情、次にメゾンの歴史や格付けの話などがきて、残りの1/3が本題の「死ぬまでに飲みたい30本」の紹介となっている。
レコルタン・マニピュラン(RM)という言葉も知ってはいたが、それがどうしてウリになるのかがいまいちピンときていなかったが、この本を読んでやっとわかったような気がした。近くのデパートの売り場にはこのRMがずらずら並んでいるので今度よく眺めてみよう。
ワインは飲み物なのだから、美味しく飲めればそれでいいという考えもあろうが、それが生み出された背景を知るとより一層深く味わえるようになると自分は思う。RMのこともそうだが、メゾンの歴史なんかも知ってみるとおもしろい。そのテの話は普段敬遠しがちなのだけど、興味深く読めた。
30本の紹介も、それぞれのメゾンの特徴が出ていて参考になった。
数えてみたら、30本のうち、意外にも10本くらいは飲んだことがあるものだった。でもこんなに深く味わいながら飲んだことなかったから、飲み直さないといけない。
それにしても、近所でリーデルのシャンパングラス(フルート型)の安売りを見つけて買ったばかりなのに、『脱フルートグラスのススメ』なのがちょっぴりショックだった・・・
日本史は小学校・中学校でそれぞれ習ったが、いずれも、1年間の授業では時間が足りずに天保の改革あたりで年度末になってしまい、天保以後は年表を追う程度の授業だった。高校の社会科では世界史と地理を選択した。そんなわけで、幕末から明治の歴史がとんとわからないまま、自分にはちょっと苦手な時代として記憶されてきた。
特に幕末は、朝廷と会津と薩摩と長州がくっついたり離れたりして、わけがわからないのだ。朝敵だったはずの長州がいつの間にか官軍になっちゃったりして、もうなにがなんだか。毎週の放送のたびにカップルの組合せが変わってしまう全盛期のトレンディドラマのような展開に、まったくついていけないのだ。
ところが、今年の大河ドラマ『篤姫』を観ていて、なんとなくわかったような気がしてきた(『新選組!』ではサッパリだったのに)。なんだか個性的な人物が多くて、三国志をもうちょっと身近にしたような感じがした。ちょっとわかりかけてくると逆にとても面白く思えて、幕末関連の本を読みたくなってきた。で、とりあえず、有名人の坂本龍馬に関する本を買って読んでみたのだ。
坂本龍馬は、幕府のお尋ね者となったために潜伏ばかりしていたせいもあって、行動が明らかになっていないところが多く、推測だらけなのが少し残念なところではある。維新以前に死んでしまったため、他の人物と違い、後に「あの頃を語る」みたいなこともなかったし。
それでも、ドラマなんかのイメージどおり大胆で開明的な考えを持っていたようだということは読み取れた。もっとも印象的だったのは、政治家というよりはむしろ実業家的な人物だったという「むすび」の説だった。
この本では龍馬本人に焦点があたっているため(当たり前か)、幕末全体の歴史の流れの中での龍馬の位置みたいなものがいまいちわかりにくかったが、これは自分が幕末素人だからなのだろう。
自分にとって最大の謎は、「どうして一介の浪人が大藩のつきあいに口を出せたのか」ということだったが、これは薩摩にしても長州にしても、藩主ではなくて西郷なり木戸なりが実際の藩政を動かしていて、龍馬はそういう人物たちとの交流があったからということのようだ。そうすると今度はその西郷なり木戸なりがどうやって藩政を掌握していったのかということが疑問になるわけで。
だからこの本も、もうちょっと全体史のようなものを勉強してから読めばより面白かったかもと思った。幕末を知りたかったら、坂本龍馬よりも、西郷隆盛や大久保利通や木戸孝允から入ったほうがつかみやすかったのかもしれない。龍馬はその時代に重要な役割を果たしたがあくまでも脇役であり、主役はやはり西郷・大久保・木戸の三傑なのだ。
ところで今回幕末に関する新書本を探していて、中公新書はその辺のタイトルがやたらと充実していることに初めて気付いた。ただ、その中公新書にも、幕末を全体的に眺め渡せるようなものはないようだ。
(池田敬正著・1965年)(2008年10月22日読了)