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ふたたび仏像展へ2006-11-13 23:22

入場半券
「特別展『仏像 一木にこめられた祈り』」の、前期展に続いて後期展へ。後期の目玉、チケットにもあしらわれている向源寺の十一面観音(国宝)が目当てだ。この日の NHK 新日曜美術館で紹介されるというので、その後は混雑がひどくなると予想し、急遽出かけることにしたのだ。

中央線が遅れたりして上野到着は少し遅れて9:23。博物館に着いたとき、ちょうど開門したところだった。人出は、前期に自分が見にきた日よりも若干多いようだった。よく晴れた日曜だからかもしれない。それでも今日はチケットをすでに持っているので入場はスムーズにいった。


入場後、ほかの仏像はかっとばして向源寺十一面観音前へと急ぐ。同じような行動の人も何人か見受けられた。到着してみると、はたして観音像の周囲には20人ほどの人だかりができていた。
この像を見るのは2003年12月以来で、これで3度目になる。当然の事ながら、このような場所で拝むのは初めてだ。それぞれの面の表情もはっきりとわかるし、寺の宝物殿と違って遠くから見ることができるので、像全体のイメージがつかみやすい。近付きすぎると照明がまぶしいから、ちょっと遠目から単眼鏡なりで鑑賞するのが良いように思う。前期の目玉だった宝菩提院の菩薩半跏像とは逆に、この像は左30度くらいがイイカンジだ。絵はがきなんかだと少し上から見下ろすようなアングルの写真が多いようだが、この角度から見上げると、ふっくらとした頬が少し微笑んでいるようにも見えて、なんだか親しみがわいてきた。

有名な暴悪大笑面もよく見えたが、照明の関係で真後ろに入らないとまぶしくてしょうがない。しかも背後には壁があるので結構窮屈だった。
相棒はこの面を見て館ひろしがニカーっと笑ったところに似ていると思ったそうだが、一部の山ノボラーの間では「腹ペコ山男のお部屋」のウェブマスターである腹ペコ山男氏に似ているともいわれているようだ。いずれにしても、仏像らしからぬ人間くささが印象的な面である。

たっぷり30分あまりも堪能してから、会場を1周して平成館を出た。出場の際に、係員に申し出ると再入場できるというのでそのようにした。
さて今日は仏像展だけではなく、平常展も楽しみにしていた。11月は結構おもしろそうな展示があるからだ。まずは本館2階の浮世絵コーナーへ向かう。
写楽
写楽が特集展示されていて、20枚ほどがずらりと並んでいるのだった。写楽の浮世絵は結構好きなのだが、ここに並んでいるのはどれも褪色が激しくてなんだかパッとしなかった。すべてが重文指定となっていたが、同じ絵柄のものが複数枚ある版画を指定するというのは不思議な感じがした。

つづいて表慶館へ。
表慶館ドーム
表慶館は10年ほど前までは考古遺物のコーナーが常設展示されていた。ここで埴輪を見るのが好きだったが、平成館ができてから考古部門はそちらに移動し、その後ほとんど閉鎖されていた建物だ。建物自体が重文指定されている(本館もそうだが)。修理が終わって2007年1月まで内部公開されている。
案内板 2階 モザイク
中では修理の際のスライド写真が上映されていた。他には展示はなく、がらんどうだったのは寂しかったが、レトロちっくな装飾などを楽しんだ。

次の目標は法隆寺宝物館。年に数回しか展示されない伎楽面がちょうど見られるのだ。
法隆寺宝物館
1階展示室は、明るいエントランスとはうってかわって映画館のように薄暗い。その中に、ライトアップされた小さな金銅仏がたくさん並んでいて、ちょっと荘厳な感じがする。まだ11時前と時間が早いせいか、見張りの女性職員以外に誰もいなくて部屋はシーンと静まり返っている。そのさらに奥の、普段は閉まっている部屋が伎楽面の部屋だ。
伎楽面の部屋
ずらりと並んでいるお面は、鎌倉時代の「鬼面」以外はすべて飛鳥時代から奈良時代にかけてのもので、ほとんどが重文に指定されている。中空を見つめている面がずらりと並んでいるさまはちょっと異様な感じではある。金銅仏とこのお面の部屋にいると、現実を離れた不思議な空間に迷い込んだような気がする。好きな仏像や面を探すのもいいが、自分はその雰囲気が好きだ。
迦楼羅 波羅門 酔胡従

法隆寺館を1周し終えると11時。ちょっと早いがいまのうちにと、1階にあるホテル・オークラのレストランで食事をとった。ここは久しぶりだったが、魚に火が入りすぎるのは変わっていなかった。

見学はまだ続く。次は東洋館。ここには中国の印譜が特集展示されている。篆刻好きにはたまらない企画だ。
中国書籍の部屋の、いつもは壁一面に大きな掛軸が展示してあるところに小さな印譜の冊子がならんでいた。思ったよりも数が多くて興奮してしまった。展示品の中でももっとも古い部類に属する宝印斎印式に惹かれた。ふと、印章(印影)を美術として見るのって、ひょっとして漢字の文化圏だけなんじゃないだろうかと思ったりした。
宝印斎印式

仏像展は再入場の手続き(といっても半券裏に日付印を押しただけだが)をしてあるので、最後にふたたび向源寺十一面観音を見に平成館に行った。会場は午後になって若者が増えていた。なんだかとても不思議だ。みうらじゅんや柴門ふみの影響なんだろうか。
十一面観音の絵はがきを3枚買って平成館を出たのは13時過ぎだった。風が猛烈に強くて寒かった。風で枝が折れたりして怪我をしないようにという配慮なのか、中庭のユリノキの付近は周囲にロープが張ってあり近づけないようになっていた。夕方のニュースを見たら、この東京の強風は木枯し1号ということだった。(東京国立博物館・2006年11月12日観覧)

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