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ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅2012-11-13 23:30

もうここんとこ、美術展情報は『ぶらぶら美術・博物館』にすっかり頼り切っているわけで、これまた番組で知った展覧会。
自分はシュールレアリスム絵画が好きなのだが、そのなかでもデルヴォーはマグリットと並んで好きな画家だ。その展覧会というのだから見に行かなくてはならない。とか言いつつ、デルヴォー展を見るのは1990年の横浜美術館以来だったり。10年前にも回顧展があったというが記憶にない。


京王線は井の頭線と高尾山くらいしか使ったことがなくて、本線沿線なんて未知の領域だ。途中調布駅で乗り換えたが、システマチックなホーム構成には感心した。
美術館へは、東府中駅から歩くことにした。事前に地図をちゃんと調べておかなかったので道順が少し不安だったが、それは杞憂だった。駅前からすぐ、でかい看板だとか道標だとかペナントだとか、とにかくあらゆる手段を講じた道案内が、お前たちを絶対に目的地まで辿り着かせてやるぞ、といわんばかりに絶え間なく続いていたのだ。

ポール・デルヴォー展
美術館に着いたのは10:40くらいだった。
順路はだいたい時系列になっていて、最初の方は自分の作風が確立していなかったころの印象派的なものとかでまるで興味なしですっ飛ばした。

夜明け
No.24。入り口からすぐに、チラシやチケットにあしらわれている作品がある。横を向いた女性。動きがありつつも静謐だ。
訪問IV
No.23。(珍しく)赤い服の女性。TVでは目線があってないとか言われてたが、それより自分は家のドアが内開きなのが気になった。
会話
No.51。裸婦と骸骨の絵。壁に映る影は骸骨のシルエットだ。骸骨はデルヴォー作品によく登場するモチーフ。
行列
No.55。おんなじよーな顔した無表情の女たちがなんだか知らないが大勢で丘を歩いていて、傍らに路面電車が走っている。ひっっじょうにデルヴォー的だ。
トンネル
No.30。横は2.5mくらいありそうな大作。トンネルと駅の風景で、左上の階段にたくさんの人がいる。鏡の中の少女が人形みたいでちょっと怖い。
夜の使者
No.41。今展で一番気に入った作品。遠く海までのびる広い道は、函館あたりの坂道を思わせる。透視図法なのに、平衡感がハチャメチャなのがデルヴォーらしくてイイ。
エペソスの集いII
No.40。エペソスは古代ギリシャの植民地とか。夜、神殿、4人の女。そのうち一人は横たわっている。ソファに横たわった裸婦というのもよく登場するモチーフだが、いつも目をぱっちりと開いている人ばかりな気がする。

上記はいずれも油絵で、これらの作品はいずれもデルヴォーらしくてよかった。他の作品はだいたいはペンなどによる習作だった。最晩年、目が悪くなってからの作品もあったが、もうそうなると見るに耐えない感じだった。そういえば、デルヴォー作品ではお馴染みのリーデンブロック教授が登場する絵がほとんどなかった。

作品数がそう多くないので鑑賞に時間はかからなかった。会場の作りのせいで動線が交錯しているのがちょっとイマイチだったが、もちろんそれは作品の質を貶めるものではない。それよりも、公立の小さな美術館の独自企画展ということで客も多くはなく(宣伝費も限られているのだろう)、またそれらの客もほんとうに美術が好きな人たちに違いなく、そのため都心の大美術展にありがちなざわざわした感じもなくて、静かに落ち着いて鑑賞できたのがよかった。

デルヴォーのあとで常設展を見たが、見るべきものはなかった。しかしそのあとに見た牛島憲之はよかった。メキシコ・ルネサンスのリヴェラのような不安げなトーンと、独特の無機的なデフォルメに感心した。「かま場」なんか素晴らしい。好みだ。

よかったものは全て絵ハガキになっていたので買い込んだ。もちろん、牛島憲之のも買った。この日の収穫は、正直言ってデルヴォーよりも牛島の方だった。

会場を出たのは昼ちょっと過ぎで、東府中駅までの途中で見かけた「アキチ」という店でランチを食べた。醤油ベースなのに洋風の味付けのサワラは、身が厚くておいしかった。でたらめに入った店が美味いとなんだか凄くトクした気分になる。もっと近くにあれば贔屓にしたいところだが、府中なんてこの先また行くことがあるかどうか。そのあとは新宿に出て買い物をしてから帰った。
(府中市美術館・2012年11月3日観覧)

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