もうここんとこ、美術展情報は『ぶらぶら美術・博物館』にすっかり頼り切っているわけで、これまた番組で知った展覧会。
自分はシュールレアリスム絵画が好きなのだが、そのなかでもデルヴォーはマグリットと並んで好きな画家だ。その展覧会というのだから見に行かなくてはならない。とか言いつつ、デルヴォー展を見るのは1990年の横浜美術館以来だったり。10年前にも回顧展があったというが記憶にない。
京王線は井の頭線と高尾山くらいしか使ったことがなくて、本線沿線なんて未知の領域だ。途中調布駅で乗り換えたが、システマチックなホーム構成には感心した。
美術館へは、東府中駅から歩くことにした。事前に地図をちゃんと調べておかなかったので道順が少し不安だったが、それは杞憂だった。駅前からすぐ、でかい看板だとか道標だとかペナントだとか、とにかくあらゆる手段を講じた道案内が、お前たちを絶対に目的地まで辿り着かせてやるぞ、といわんばかりに絶え間なく続いていたのだ。
美術館に着いたのは10:40くらいだった。
順路はだいたい時系列になっていて、最初の方は自分の作風が確立していなかったころの印象派的なものとかでまるで興味なしですっ飛ばした。
上記はいずれも油絵で、これらの作品はいずれもデルヴォーらしくてよかった。他の作品はだいたいはペンなどによる習作だった。最晩年、目が悪くなってからの作品もあったが、もうそうなると見るに耐えない感じだった。そういえば、デルヴォー作品ではお馴染みのリーデンブロック教授が登場する絵がほとんどなかった。
作品数がそう多くないので鑑賞に時間はかからなかった。会場の作りのせいで動線が交錯しているのがちょっとイマイチだったが、もちろんそれは作品の質を貶めるものではない。それよりも、公立の小さな美術館の独自企画展ということで客も多くはなく(宣伝費も限られているのだろう)、またそれらの客もほんとうに美術が好きな人たちに違いなく、そのため都心の大美術展にありがちなざわざわした感じもなくて、静かに落ち着いて鑑賞できたのがよかった。
デルヴォーのあとで常設展を見たが、見るべきものはなかった。しかしそのあとに見た牛島憲之はよかった。メキシコ・ルネサンスのリヴェラのような不安げなトーンと、独特の無機的なデフォルメに感心した。「かま場」なんか素晴らしい。好みだ。
よかったものは全て絵ハガキになっていたので買い込んだ。もちろん、牛島憲之のも買った。この日の収穫は、正直言ってデルヴォーよりも牛島の方だった。
会場を出たのは昼ちょっと過ぎで、東府中駅までの途中で見かけた「アキチ」という店でランチを食べた。醤油ベースなのに洋風の味付けのサワラは、身が厚くておいしかった。でたらめに入った店が美味いとなんだか凄くトクした気分になる。もっと近くにあれば贔屓にしたいところだが、府中なんてこの先また行くことがあるかどうか。そのあとは新宿に出て買い物をしてから帰った。
(府中市美術館・2012年11月3日観覧)
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