秋田県大仙市にある水神社の線刻千手観音等鏡像は県内唯一の国宝で、年に1度だけ、8月17日の祭礼の日に公開される。そのレアな国宝が、宮城県多賀城市にある東北歴史博物館の展覧会に出品されるという。これは大チャンス。
ただ、展覧会だけだと時間を持て余してしまうだろう。どっか他にいいとこないかな、と別冊太陽「みちのくの仏像」を眺めると、同じ宮城県の角田市にある高蔵寺阿弥陀堂(重文)が目についた。なになに、東北三大阿弥陀堂とされ、東北地方に3つだけ残る平安時代の建物のひとつとな(他は中尊寺金色堂と白水阿弥陀堂でいずれも国宝)。堂内の阿弥陀像(重文)もなかなか良さそげ。よし、行ってみよう。
高蔵寺の内部拝観は事前予約が必要とのことなので、前日に電話して10時にお願いした。博物館はそのあとのんびり行くことにした。折角だから1泊して他も見ようと思ったが、翌日が雨でしかも寒いという予報だったので、結局日帰りすることにした。
早朝の新幹線に乗り、白石蔵王で下車、タクシーで高蔵寺に向かうが、9時半に着いてしまった。駅から20分弱で3,000円でおつりがきた。それにしても、いくらなんでも早過ぎる。寺の境内は自由なので、阿弥陀堂を外から眺めたり、すぐ近くに移築保存されている旧佐藤家住宅(重文)を見学したりして時間を潰した。
阿弥陀堂は方三間の簡素な建物で、
10時ちょっと前になって寺務所に声をかけ、いよいよ阿弥陀堂の拝観。中に入ると、堂内は真っ暗だった。前面の両脇扉を開放すると、薄く自然光が入った。徐々に目が慣れてくると、思いのほか大きな仏像が、光背が天井に付かんばかりの大きさで鎮座ましましていることが分かった。感嘆して、思わず声をあげてしまった。
住職氏は我々を仏前に招き入れると、並んで共に合掌・一礼したあとは、縁側に出てしまった。おかげでじっくり鑑賞できた。
阿弥陀如来は、いかにも平安仏な大らかな仏像だった。丈六というのがまたイイ。正面より斜めの方が顔立ちがいいが、右前と左前でも少し違った印象だ。
10分ほどしげしげと眺めてから、住職に礼を言い、寺を後にした。すっかり体が冷え切ってしまった。
タクシーで東北本線の大河原駅に出て、電車を仙台で乗り継いで、国府多賀城駅で降りた。目の前に東北歴史博物館があった。
ちょうど昼になったので、博物館1階のレストラン「グリーンゲイブル」で昼食をとった。どういうわけか、店内のオーディオがマニアックだった。腹を満たしたあとで、展覧会場に入った。
入るとすぐに、半円形に並んだ立像群が我々を出迎えてくれた。しかもケースに入っていない。正直なところ、国宝の鏡像以外は全く興味がなかったのだが、これはなかなか面白そうだと直感した。
明治・大正の絵馬とかのコーナーもあったが、そちらにはまったく興味がわかなかったので、完全にスルーした。
東北の仏像の魅力は、言い方は悪いが、ヘタウマなのだと思う。技術的な点数は決して高いとは言えないし、洗練されているわけでもないし、でもそんな中に不思議な魅力があるし、だからと言って全てが下手くそだと油断していると、正しく「鄙にも稀な」素晴しいものがあったりと(高蔵寺の阿弥陀如来は正にそうだ)、とにかく予想外で面白いのだ。
博物館を出たのは14時過ぎ。帰るにはまだ早い。
そこで、近くにある国宝ということで、ン十年ぶりに瑞巌寺に行ってみた。するとなんと平成の大修理とかで、肝心の国宝本堂が見られなかった。宝物館の展示も本堂の扉以外はなんだかぱっとしない。通常非公開の庫裡(国宝)の内部が公開されていたのが唯一の収穫と言えるか。700円の高額拝観料は、修理代を寄進したと考えるべきだろう。
松島海岸から仙石線で仙台に戻り、駅3階の牛タン通りで食事をしてから20時半の新幹線で帰った。家に着いたのは23時を過ぎていた。
(東北歴史博物館・2015年3月6日観覧)
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