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地震に耐える五重塔2004-11-09 00:11

11月7日の Yahoo News 『五重塔「くねくね」と衝撃吸収…紀伊半島沖地震で実測』によれば、地震の際の五重塔の揺れ方の計測に成功した、ということだ。
五重塔に地震計を設置して揺れを計測する、という記事は同じ Yahoo News で以前に見かけたことがあった(1月8日『<五重塔>地震による倒壊例なし 都立大講師ら理由研究へ』)。今回、これが奏効したということだ。


地震に強いといわれる五重塔の構造を研究している東京都立大と大成建設などのグループが、9月に起きた紀伊半島沖地震の際、塔の揺れ方の実測に成功した。
地震計の計測データから建物全体が「く」の字状にしなって、上層部と下層部が反対方向に揺れながら、全体で衝撃を吸収し合っていたことが、分かった。
都立大の調べでは、日本古来の木造・五重塔は、地震で倒壊した記録がなかった。このため、同グループは、2001年に伝統的技法に基づいて建立された津市の津観音五重塔(木造、高さ約21メートル)の基壇と1、3、4層部分に地震計を設置し、2年前から地震や強風による揺れを測定してきた。
9月5日の紀伊半島沖の地震で、津市では震度4を2度記録。塔の基壇と各層で計測されたデータを解析した。基壇の揺れを「1」としたところ、1層目の揺れの強さは約2倍、3層目は1・5倍、4層目は0・8倍で、下層部が大きく揺れたのに対し、上層部の揺れは小さかった。
これまでのデータでは小さな地震の際には、上層部の方が大きく揺れ、塔は振り子のように動いたが、震度4では逆の結果となった。揺れ方も「く」の字にしなり、各層が互いの揺れを打ち消す方向に動いていたという。
同グループは、「小さな地震と震度4では塔の揺れ方が、まったく異なっていた。今後、この謎などを解明したい」としている。
(読売新聞) - 11月7日9時25分更新

なんとなく、横浜のランドマークタワーを思い出した。以前テレビで見た記憶では、ランドマークの最上階には巨大な振り子があり、それが地震や強風による揺れと逆方向に動くことで建物自体の揺れを低減しているという。そのしくみが五重塔の心柱しんばしらとダブるのだ。ランドマークも「く」の字にしなっているのだろうか。

震度4以上で揺れ方が変わったというのも興味深い。自分の場合、体験的に、震度3と4とでは恐怖感が一段階違う。地震があっても「また揺れてるな」くらいでほとんど気にならないときは大抵震度3以下で、家にいてビンなどが倒れないか気になるときは震度4ということが多い。記事からは、五重塔の揺れ方の境界が震度4とは明確には読み取れないが、このへんはもっと年月が経ってデータが蓄積されればはっきりしてくるのだろう。

それにしても、いくら伝統的技法によるとはいえ、21世紀に建てられた以上は、設計にもコンピュータが使われているのではないかと思う。とすれば、部材や地形のデータもきっちり記録されており、コンピュータでシミュレートできそうな気もするのだが、そう簡単ではないらしい。
あらためて、古人の知恵・経験の豊かさに畏敬の念を覚えたのだった。

なお、1月8日の Yahoo News の記事はすでに消滅しているが、★阿修羅♪というサイトに引用が残っている。

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