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唐招提寺展 -国宝 鑑真和上像と盧舎那仏-2005-01-29 23:59

唐招提寺展
当初は見るつもりはなかった。東博の展示品リストを見たらびっくりするほど展示品が少なかったからだ。メインの金堂の諸仏と鑑真像以外は瓦のようなものばかり。これで1,300円(割引券使用)とはひどい。
しかし、普段は柵越しに遠くからしか見られない本尊が間近に見られる。本尊自らの出開帳に敬意を表して(?)、出かけることにした。


開館前に並んで入場したのだが、混雑はそれほどでもなかった。平成館では、2階にあがったあと普段と違い右に進む。時計回りに1番目の部屋が「金堂再現」、その次が金堂の瓦類、3番目がVRシアターで、最後が「御影堂再現」。1階大講堂では映画「天平の甍」を上映していた。これを狙ってきた人も多いようだった。

金堂再現

盧舎那仏坐像(国宝)
光背がなく、台座がショボいことは事前にウェブで情報を得ていたので、その点についてはがっかりすることはなかった。しかしそのせいか、意外に小さく感じた。背中を見ることよりも、やはり明るい場所で見られることの方が嬉しい。大きい像なので少し離れた方が見やすくていい。とろんとしたような表情をじっくり味わった。
本尊の脇に立って同じ方向を見ると、他の仏像もみな同じ向きに立っていて、なんとも言えない不思議な気分になった。自分がこの仏たちの一員になったような感覚だった。
梵天立像・帝釈天立像(国宝)
この2体の表情がとても好きだ。会場に入って真っ先に寄った。かぶりつきでじっくりと見た。表面の乾漆の感じもよくわかる。台座の隙間にはかなりあざやかに彩色が残っていた。
四天王立像(国宝)
私は唐招提寺に行っても盧舎那・薬師・千手の3つの仏像に圧倒されてなかなか四天王にまで目が向かない。それに、堂内は薄暗くて特に奥の方にある像はよく見えない。そんな仏像がかぶりつきで見られる。
広目天・持国天の2体は兜がアメリカの消防士みたいで、タワーリング・インフェルノのマックイーンを連想してしまった。多聞天の顔が一番獰猛だった。そんな表情や、大きく揺れるような括った袂に1,300年前の描写のレベルの高さを感じた。

金堂 -平成の大修理-

金堂隅鬼
金堂の屋根を四隅で支えている部材。鬼が屋根を背負った形になる。西南のものだけが江戸時代のもので、他3つは創建当初の奈良時代のもの。江戸のものだけ丸みがなく、統一感に欠けるので一発で違いがわかる。上から覗くと江戸時代のものには「坤」の文字が見えた。もちろん方角を示しているわけだが、ほかのものには見当たらない。金堂の一部なので、国宝。
金堂天井支輪板
意外にも鮮やかな色彩が残っていて驚いた。これまた、薄暗く且つ天井の高い本物の金堂では観察不可能。金堂の一部なので、国宝。
金堂復元模型
東博作成の模型。ぶった切られているので断面も見られる。1963年作成のものなので、天井裏にはあのトラスは入っていなかった。
VRシアター
巨大画面の3Dのヴァーチャル・リアリティ・シアター。15分で、金堂と御影堂を巡る。自分が動いていないのに画面が3Dで動くので酔いそうになった。解説は、たとえば本尊は乾漆像としては現存最大であるとかのツボを外さず、かつ平易でわかりやすくてよかった。難を言えば、遠景が「これ奈良じゃねえだろう」ということだ。なるべく中央で見たい。

御影堂再現

鑑真和上坐像(国宝)
2001年「国宝鑑真和上展」で一度見ているからさらりと流してもいいなあと思ったが、やはり足が止まってしまった。まつげは鑑真和上展の方がもっとはっきり見えた。それに、もっと近くで見られた。ただ、この像はちょっと遠めから見た方がリアルに感じられるように思う。目の周りだけ色が違うのを見ると、芭蕉の「若葉して御目の雫ぬぐはばや」の句が思い起こされるが、もちろん季違いだ。
御影堂障壁画
東山魁夷画。当初まったく興味がなかったが、なかなかよかった。「濤声」は、16面にも及ぶ長さで波が打ち寄せるさまを描いている。これだけ長いと見ごたえたっぷり。青が美しい。

会場を2周したあと、雨が降りそうだったので、本館をぶらりと1周しただけですぐに博物館を出た。
展示品が少ない=会場が広いので適度に人がばらけてゆったり観覧することができた。金堂再現のコーナーでは、肝心の仏像よりも展示品の説明板の方が人だかりが多かったのが笑えた。彼らは何を見にきたのだろう? 音声ガイドを聞いて説明を読めれば満足なのだろうか?

展覧会自体にはまあ満足できたが、それも事前にウェブでいろいろ情報を仕入れ、最初から割り引いて見たからだ。それでもやはりこの内容で1,300円は高い。金堂諸尊を間近で見られることに価値を見出せないと、激しく後悔することだろう。カタログもこの品数なのに2,300円もしたし、絵はがきもぱっとしなかったので買わなかった(1枚150円)。まあ復興勧進なんてこんなものかもしれない。

昼食は久々に伊豆栄に鰻を食べに行った。ひとりタバコを吸っているオヤジがいて(しかも子連れ)、おかげで折角の殿重がまずくなった。自分が食うときは吸わないくせに、食わないときは人に強制的に煙を吸わせる。いったいどういう了見なんだろう。こいつひとりのせいで部屋中のすべての人の食事がまずくなってしまうのだ。席が隣だったら文句を言っているところだったのだが。
少々不満を残したまま店を出たのは12時半頃。御徒町から山手線に乗ると雨がぱらぱらと降ってきた。
(東京国立博物館・2005年1月29日)

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