冬季にだけ製造されるモンドールというフランスのチーズが大好きだ。いわゆるウォッシュタイプのチーズで、以前は本でしかお目にかかれなかったが、ワインブームが起きた'90年代の中ごろから高級スーパーで見かけるようになった。
最近では賞味期限ぎりぎりまで待って、割引になってから買うようにしている。いちど、若いうちに買って冷蔵庫にしまっておいたことがあるのだが、もう冷蔵庫中が臭くて臭くてたまらなかった。並み居るウォッシュチーズの中でも匂いのキツさはトップクラスだ。ビニール袋に二重三重に入れても、どうしても匂いは漏れてしまう。
表面のカビが少なくなって赤みを帯びてきたら食べごろだ。表皮を切り取って、スプーンですくって食べる。中はとろとろになっている。蜂蜜くらいのとろり加減。スプーンは湯であたためて使う。そうすればスプーンからチーズが離れやすくなる。
ジャガイモに塗って食べても美味しいけど、ウチはそのままぺろりとやることが多い。味はこってり・まったり・まろやかクリーミーで、あの強烈な匂いからは想像もつかない。
ウチでは毎冬、最低でも1回はモンドールを食べる。今シーズンの1回目は2月の末のことだった。
食事のあとに2000年のコート・デュ・ローヌの赤と一緒に食べていた。赤ワインにとてもよく合う。そのうち、チーズの香りが日本酒の香りと似ていることに気付いた。で、試しに1杯飲んでみたらこれがどんぴしゃだった。酒は秋田県の「津月」という銘柄の純米吟醸、山田錦100%のきもと造りで芳醇系。
日本酒の香りの中には、雑巾のようなニュアンスのあまり好きではない香りがあるが、その匂いをこのチーズのカビ臭が上手く消してくれている。ん、てことはこの酒、悪くなっちゃってるのかな。これが老ね香っていうやつなんだろうか。でも2口3口と飲むとイヤじゃなくなってくる香り。
日本酒の香りの説明って、ワインみたいにストレートに「ライチの香り」とか「洋梨の香り」とか言わないから、検索してもよくわからない。
でもとにかく、意外な組み合わせが楽しめた。もうすぐモンドールの季節も終わりとなるが、機会があったらまた試してみたい。
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