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再び、最澄と天台の国宝2006-04-29 18:44

後期の展示に行ってきた。展示替えのあったものを中心に見た。
再び、最澄と天台の国宝展

正門に着いたのは9時ちょっと過ぎ。このときはまだ人が少なかったが徐々に増え、最終的には入場待ちの列は3つに折り返すほどになった。25分に開門した。
平成館に入るときにちょっと待たされたが大きな混乱はなかったようだ。


不動明王像(黄不動)(曼殊院蔵・国宝)
No.140。いきなり順路を外れて第1室へ。入口にどどーんと構えておわしますのが本日最大のお目当て、後期のみ展示の黄不動だ。みんな順路に従って第3室に向かうので、誰もいないうちに鑑賞することができた。
あまりにも有名な絵だが、実際に見るのは初めてだ。薄暗い中にぼうっと浮かび上がる黄色い腹とぎょろ目の迫力が凄まじい。体を描く線も太くて力強い。まさに鬼気迫るといった印象。前期では、個人が所蔵する別の黄不動が展示してあったが、こちらにはとうてい敵わない。そういえば、これに比べると前期のものはずいぶんと傷んでいたようだ。
入口にあるため、後ろのロビーの自然光がガラスに反射して見難い。少し斜めに陣取ると反射もなくすっきりと見られる。
聖徳太子及び天台高僧像(一乗寺蔵・国宝)
No.5。後期展示は善無畏、最澄、円仁。前2者は第3室を入ってすぐ右に展示してある。円仁だけは構成の都合か、少し奥にあった。いずれも明るい色調。最澄は図録の表紙にも使われているが、本物は、照明の関係もあるだろうがもっと赤くて華やかできれいだ。どうも明るいのは平安期の仏画の特徴らしい。
単眼鏡を使ってアップで見ると、まつげやひげも丹念に描かれているのがよくわかる。
刺納衣(延暦寺蔵・国宝)
No.34。最澄が唐から持ち帰った衣。隋の時代の高僧が着ていたとかで、国内で現存する一番古い衣服なんだとか。見たところはただのボロきれなわけだが、これを1500年前の人が着ていたのだと思うと何かしら不思議な気持ちになった。
聖観音菩薩立像(延暦寺蔵・重文)
No.116。今回は間を飛ばしたので仏像の部屋に早目に到着、ゆっくり鑑賞できた。
前期でも思ったが、ほんとうにいい仏像だ。体を少しくねらせているため、見る角度によって印象がずいぶんと違う。右前方に上半身をせり出している格好なので、像の左側45度くらいから見ると足を一歩前に踏み出そうとしているように見える。逆に像の右側(つまり踏み出している側)から見ると動きが止まり、堂々としているように感じる。正面からは、限りなく優しい印象。この違いが面白くて、自分にとってのベストアングルを探すために像の前を右往左往してしまった。

後期のみ展示のもの中心に見たので時間はさほどかからず、10:30頃には平成館を出た。そのあと、前回見なかった本館と法隆寺国宝館に寄ることにした。
本館では2006年の新指定の国宝・重文の展示があって、新国宝の琉球国王尚家関係資料(那覇市歴史博物館蔵)が目をひいた。沖縄には国宝がなかったから、これが初の国宝だ(戦前は首里城があったが戦争で焼けてしまった)。
また、1階の彫刻の文殊菩薩騎獅像および侍者立像もよかった。文殊の光背には迦陵頻迦(かりょうびんが)が舞っていて、侍者たちの衣服は切金がよく残っていて、なんとも優雅だ。

のんびり見ていたら11:30になったので、レストランが混雑する前に昼食をすませようと、東洋館隣のラコールへ。おなじみのハヤシライスにしようかと思ったが、結局相棒は魚料理、自分は肉料理のセットを注文した。肉は牛ほほ肉の煮込みで、コーヒーのソースが肉とよく合っていた思う。デザートのごまプリンがなかなかイケた。魚料理も見た目がなかなかゴージャス。バジルのパンも美味しかった。

続いて法隆寺館へ。いつもは閉まっている伎楽面の部屋が開いていた。目が空になっている面がずらりと並ぶ部屋はちょっと異様な感じもする。飛鳥時代の面がほとんどで、それらはすべて重文指定。デフォルメされてはいるが妙にリアルで、飛鳥・天平の頃の造型技術って凄かったんだなあと思う(興福寺なんかの乾漆像などを見ても同じことを思う)。中にひとつ鎌倉時代の鬼面があって、ほとんどデザインと言っていいほど激しく歪んだ顔が気に入った。

博物館を出たのは14時ちょっと前くらい。雨がぽつぽつと降り始めていたが、まだ傘をさすほどではない。それでもGW初日の上野は凄い混雑だった。
山手線に乗ったらとたんに土砂降りになった。帰るのがもう5分遅かったらアブナイところだった。
(東京国立博物館・2006年4月29日)

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