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八甲田山死の彷徨(新潮文庫)2007-11-23 15:04

実際の事件を元にしたフィクション。映画化されて一気に有名になった。まだ子どもだったが、『天は我々を見放した』という台詞が流行ったのをよく覚えている。
その映画『八甲田山』は大人になってからテレビで見たのだが、雪の中の進軍の描写は小説の方が上だと思った。重たい外套が凍り付いていて、それをまとった兵士がマイケル・ジャクソンのスリラーのようにさまよっている姿が目に浮かぶようだ。ちょうどこれを読んでいる頃から、この冬最初の強い寒気団が下りてきたこともあって、もう寒くて寒くてしかたなかった。


『剱岳 点の記』同様、クライマックスが早めに訪れてしまい、あとはだらだらと書き連ねてあるのがまた奇妙な感じ。とくに終章がわけわからん。
作中の登場人物がすべて仮名なのに、終章の5つめのチャプターでとつぜん本名が混交してくる。この終章5が要らない。終章4の終わりは二人の聯隊長が別れるところでまとまりもいいのだから、ここで終わりならよかったのに。
おかげで読後感はビミョーなものに。内容がおもしろかっただけにちょっぴり残念だ。新田次郎の小説を続けて4作品読んだが、小説らしい終わり方なのは『孤高の人』だけだと感じた。

(新田次郎著・昭和53年)(2007年11月17日読了)

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