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ふたたび三井寺展へ2009-03-05 22:03

過去に数回しか公開されたことがないという幻のお宝・黄不動がいよいよ2月25日から公開開始。その最初の土曜日にふたたび三井寺展に出かけた。


どれほどの混雑になるのかまったく予想がつかなかったがとりあえず土曜の夜間に行くことにした。もし激混みなら様子見だけにして帰って、後日また出直すくらいのつもりで出かけた。
しかし結論から言うとそれはまったくの杞憂で、前回と同じくらいの混雑具合。19時を過ぎると人がめっきり少なくなるところも同じだった。

不動明王像(黄不動尊)(国宝)
噂のお宝・黄不動は赤い枠の中に収まっていた。ちょっと高い位置にあって、少し後ろからでも(前に人がいても)まあまあ見える。
ぼろっちいかと思ったら意外ときれい。あとで知ったのだが、1996〜1998年に修理したばかりなんだとか。週刊朝日百科「日本の国宝」第77巻の写真では剥落した箇所が見られるが、そんなもの一切なしできれいきれい。
主な描線は、黒に朱の輪郭で美しい。それがぼうっと湧き出ているような印象を与えるのかもしれない。円珍の夢に出てきた仏だというが、まさにそんな印象を受けた。3年前の「最澄と天台の国宝」ではこの絵を写したという曼殊院の黄不動を見ており、薄暗い中に金色がぬっと浮き出て明王らしい迫力を感じたことを覚えているが、今回の本家はもうちょっと人間的というか生身的な感じがした。もしかしたら今回の会場が明るいせいかもしれない。
上半身裸・弁髪じゃない、などと不動像のセオリーからは少々はずれているが、まあそんな細かいことはどうでもよいと思ったのだった。
不動明王立像(黄不動尊)(重文)
チラシと垂れ幕にあしらわれている黄色い不動像。上述の絵の黄不動を写したものというが、元となった絵と見比べてみると、忠実であることがよくわかる。違うのは、衣の模様とヘソの形と前歯の数くらいか。
前回来たときにもこの像が凄く気に入ったのだが、それはどうやら鎌倉仏だからだということにここであらためて気づいた(自分は鎌倉時代の仏像のファンなので)。この、鎌倉仏ならではのリアルな描写がよいのだ。
不動明王立像(白不動尊)(神童寺蔵・重文)
これまた黄不動を写した仏像というが、まったく似てない。むしろユーモラス。
五部心観 禅覚書写(重文)
前期の国宝のものに替わって展示されている。巻末に描かれている善無畏を見ると、こちらの方が絵としての技量が落ちるのがよくわかる。

照明は見やすいし、適度に空いているし、べっちゃくちゃしゃべくりまくるお嬢さん方もいないし、美術鑑賞には理想的な環境。これで700円という学生時代を思い出すような入場料金なので、もう東博なんかのゲロ混みの展覧会に行くのが馬鹿らしく思えるくらい。そういえばこの日は20代くらいの若い人が多かったような気がする。
あまりにも心地よいし、終盤は国宝の善女龍王像も出るので、あともう1回くらいは見に行きたいと思った。

いい気持ちで19:55頃に会場を出た。御骨大師などの絵ハガキを4枚買った。カタログはどうしようか迷ったが、冷静に考えると秘仏以外はあまり好みの出物が少なく、好きなものとそうでないものの差が激しかったので、買うのは止めた。ちなみに黄不動は、カタログには載っているが絵ハガキにはない。

そのあとは、同じ3階にある「てんぷら山の上」で遅い食事をとった。アナゴの天ぷらと、〆の天丼がキョーレツに美味かった。シャンパンを飲んだのだが、アナゴのときは無くなったので、グレイスの甲州をグラスで追加した。これがまたシビれるくらいにマッチした。また、天丼と焙じ茶がこれほど合うのにも驚いた。
残念だったのは、喫煙可の座敷から禁煙のテーブル席にタバコの煙が流れてきたこと。繊細な天ぷらの風味が台無しだ。今度行く機会があったら、煙の来なそうなカウンター席にしようと思った。
(サントリー美術館・2009年2月28日観覧)

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