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時代の美 と 新春の国宝那智瀧図2013-02-12 23:55

時代の美 --五島美術館・大東急記念文庫の精華--

半年で全4部構成の展覧会のこれが第3部で、桃山・江戸編ということになっている。タダ券を入手したので行ってみた。
BSアニメ『へうげもの』を観て以来、茶道具、特に桃山時代のものに関心が高まっていて、ちょうどよい。


入館し、ジャンパーを脱いでロッカーに押し込んでいると、声のでっかい中年女性が2人やってきた。静かなロビーに声が響き渡る。大声というよりキンキンしたよく通る声という感じだ。彼女たちが展示室1に向かったのを見て、我々は展示室2に向かった。

古伊賀耳付花生
No.51。織部好み。へらの跡がわざとらしい、と思えてしまう自分はひねくれているだろうか。
古伊賀水指 銘「破袋」(重文)
No.52。『へうげもの名品名席』でも紹介された。全体にものすごいひびが入っていて、上から押しつぶしたようにひしゃげている。いや、これ、絶対失敗作でしょ、という一品。アニメでも、古田織部がテキトーな焼き物に箔をつけて高値で売って儲けるというストーリーがあるけど、これはそういうことだと思うのだ。
・・・なんだけど、何度となく見返すと、だんだんイイものに見えてくるのが不思議でしかたない。たぶん古織のマジックなのだろう。
瀬戸肩衝茶入 銘「月迫」
No.43。小堀遠州由来の茶入で、銘は「げっぱく」と読む。ツーっとしたなだれが美しい。仕覆が何種類もあった。
黒織部沓形茶碗 銘「わらや」
No.48。これまた『名品名席』で取り上げられた作品。イラスト風なデザインが今風なような。これが400年前のものだと思うとおもしろい。
千利休消息 「横雲の文」
No.28。茶壷「橋立」の保管を依頼する手紙。1591(天正19)年2月5日の手紙で、利休はこの8日後に蟄居を命じられ、28日後に切腹している。利休の使いの者が受け取りに行っても、はん(判子のことか?)がなければ渡すな、みたいなことが書いてある。添えられた歌は次のとおり。
よこ雲の かすミわたれる むらさきの ふミととろかす あまのはしたて

声のでっかい女性2人は相当な美術好きなのか、展示室1の作品をじーっくりと見ていた。予想通り声が気になったが、さすがにロッカー室よりはヴォリュームは小さかった。
次は近くの静嘉堂文庫に国宝の曜変天目を見にいこうと思っていたのだけど、館内のポスターを見ると根津美術館で相棒の好きな中世説話がメインの展覧会があることを知り、また国宝の『那智瀧図』が出ていることもあって、予定を変更して表参道へ行くことにした。
『破袋』の絵ハガキを買ってから、11:30に美術館を出た。


新春の国宝 那智瀧図 --仏教説話画の名品とともに--

上野毛駅近くの「季寄 武蔵屋」なる店でそばを食してからまた大井町線で二子玉川に戻り、新玉川線に乗り換えて表参道へ。
表参道を歩くのは何年ぶりだろう。プラダやら何やら、ヘッドセットを装着した店員が入り口で待ち構えているなんだか凄いブランドショップが並んでいる道を行く。前からこんなだったっけ?
根津美術館も久方ぶりだ。リニューアルしたのはテレビで見て知っていたが、入り口が変わって竹を並べた素敵なアプローチになっていた。

那智瀧図(国宝)
No.22。第2展示室がまるごと一部屋あてられ、絵の正面にソファが置いてあった。東博の国宝室のようだった。薄暗い中に滝が一本の白線が浮かび上がるさまは神々しい。単なる風景画ではなくて、御神体を描いた信仰の画と見るべきだろう。
天狗草紙絵巻(重文)
No.7。天狗たちの会議の場面がなんか笑っちゃう。天狗は京都の大寺の僧侶たちを皮肉った姿であり、無常を悟り修行をつんだ彼らは、最後には人間の姿で描かれるのだった。
高野大師行状図画
No.12。弘法大師空海の行跡を記した絵巻物なのであるが、『五筆和尚』がおもしろい。両手両足と口で5本の筆を使い、王羲之の書を5行同時に修復するという神業なのだが、この絵がおもしろすぎる。ほかにも、空海が説法を始めたらそのへんの神様たちがこぞってやってきて有り難がる話とか、もう、さすが、弘法大師なのである。
青銅器群
ここの青銅器コレクションは泉屋博古館についですばらしい。特に、『双羊尊』(重文)は大英博物館とココにしかないという代物で、美術館の入場券にもなっているほか、オリジナルグッズでも一押しとなっている。

五筆和尚がこの日一番の大ヒットだった。青銅器も相変わらず素晴らしく、濃厚な時間を過ごせた。新宿に場所を変えてぶらぶらしてから、前から行ってみたかった店「達 菊うら」で食事をして充実した一日を終えた。
(五島美術館と根津美術館・2013年2月9日観覧)

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