KATZLIN'S blog

Contents

特別展 東山御物の美 --足利将軍家の至宝--2014-10-19 23:12

この秋は国宝の展覧会があちこちで開かれている。もちろん、日本国宝展が最大のものなのだろうが、実は三井のこの展覧会も見逃せない。全部で12もの国宝が見られるのだ(もっとも、展示替えがあるから、全部見るには3回行かないといけないのだけど)。


昼過ぎまで東博で日本国宝展を見たあと、上野から山手線に乗り神田で降りて、三井本館に着いたのは14時半くらい。
混雑具合は、というと、ほどほどだった。テーマもそうだけど、出品作品がシブすぎる。

青磁輪花茶碗 銘馬蝗絆(東京国立博物館・重文)
No.59。青磁の美しさに足が止まった。輪花ということで、縁に小さく6つ切れ目が入り、上から見ると6片の花弁のような意匠になっている。
解説を見ると、義政所有の頃、割れてしまったので替わりを求めたところ、これほどの物はもう作れないということで鎹を打ってそのまま返ってきたという逸話が。また、青磁茶碗でもっとも美しいとあった。実に素晴らしい。
油滴天目(大阪市立東洋陶磁美術館・国宝)
No.55。5つの国宝天目のひとつ。天目茶碗では曜変が最上とされるようだが、この油滴も素晴らしい。静嘉堂の重文の油滴よりも模様が細やか。縁の金が燦びやかなのが印象的だった。
李迪筆 雪中帰牧図(大和文華館・国宝)
No.10。相当前に、奈良の大和文華館で見た記憶があるが、そのときから結構好きな絵。久々の対面なのだが、こんなに暗かったっけ、という印象。ただしそのせいか、木に雪が積もっている様が強調されているような。
伝馬麟筆 梅花小禽図(五島美術館・重文)
No.20。ムムッ。この鳥、コガラだと思っていたら、解説にジョウビタキとある。そう、よくよく見たら、腹のオレンジ色が背景に溶けこんで分かりにくくなっているだけなのだった。いやそれよりも、ジョウビタキはこんな仕草しないだろ、という気がしたのだった。
伝銭選筆 宮女図(個人蔵・国宝)
No.49。公開は5、6年ぶりとかというレア物。唐代には女官の男装が流行ったという話だが、そもそもなんでこの人が女と言えるのかが自分には分からない。このお宝を味わうには、自分はまだまだ研鑽が足りないようだ。
梁楷筆・大川普済賛 布袋図(香雪美術館・重文)
No.24。なんとも愉快な布袋さんの絵。展示室4の一角に梁楷が並んでいて、それがどれも自分のツボにはまった。こういう諧謔趣味な水墨画って、絵心のある坊さんが手なぐさみで徒然に描いたようなイメージを勝手に持っていたが、梁楷は歴とした画家である。
伝梁楷筆 六祖破経図(三井記念美術館)
No.26。六祖(慧能)が経を破って「不立文字」「教化別伝」を説いたというシーン。元々はNo.27の『六祖截竹図』と対なんだとか。筆のかすれ具合とかユーモラスな動きから、鳥獣人物戯画に描かれている、相撲に勝って気を吐いている蛙を連想してしまった。
伝梁楷筆 六祖截竹図(東京国立博物館・重文)
No.27。六祖が竹を切った瞬間に大悟を得たというシーン。この解説を読んで初めて、同室に展示されているNo.23出山釈迦図(国宝・東京国立博物館)が同じ梁楷の絵と気付いた。作風がぜんっぜん違う。それもこの梁楷の懐の深さということのようだ。

2周した。一言で言って、とてもよい展覧会だった。とにかくシブい。これだけの出物があっても東博みたいに混んでないのがまたイイところ。
絵ハガキは、この展覧会のために特別に作られたものではなく、所蔵するあちこちの施設のオリジナルのものを売っているだけなのは残念だったが、それでもジョウビタキと截竹と雪中帰牧図の3枚を買った。

三井を出てからは東京駅の大丸に行き、ちょうど開催されていた「世界の酒とチーズフェスティバル」でワインを楽しんだ。一日中立ちっぱなしで腰が痛くなった。
(三井記念美術館・2014年10月18日観覧)

コメント

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://katzlin.asablo.jp/blog/2014/10/19/7462379/tb