半年で全4部構成の展覧会のこれが第3部で、桃山・江戸編ということになっている。タダ券を入手したので行ってみた。
BSアニメ『へうげもの』を観て以来、茶道具、特に桃山時代のものに関心が高まっていて、ちょうどよい。
入館し、ジャンパーを脱いでロッカーに押し込んでいると、声のでっかい中年女性が2人やってきた。静かなロビーに声が響き渡る。大声というよりキンキンしたよく通る声という感じだ。彼女たちが展示室1に向かったのを見て、我々は展示室2に向かった。
よこ雲の かすミわたれる むらさきの ふミととろかす あまのはしたて
声のでっかい女性2人は相当な美術好きなのか、展示室1の作品をじーっくりと見ていた。予想通り声が気になったが、さすがにロッカー室よりはヴォリュームは小さかった。
次は近くの静嘉堂文庫に国宝の曜変天目を見にいこうと思っていたのだけど、館内のポスターを見ると根津美術館で相棒の好きな中世説話がメインの展覧会があることを知り、また国宝の『那智瀧図』が出ていることもあって、予定を変更して表参道へ行くことにした。
『破袋』の絵ハガキを買ってから、11:30に美術館を出た。
上野毛駅近くの「季寄 武蔵屋」なる店でそばを食してからまた大井町線で二子玉川に戻り、新玉川線に乗り換えて表参道へ。
表参道を歩くのは何年ぶりだろう。プラダやら何やら、ヘッドセットを装着した店員が入り口で待ち構えているなんだか凄いブランドショップが並んでいる道を行く。前からこんなだったっけ?
根津美術館も久方ぶりだ。リニューアルしたのはテレビで見て知っていたが、入り口が変わって竹を並べた素敵なアプローチになっていた。
五筆和尚がこの日一番の大ヒットだった。青銅器も相変わらず素晴らしく、濃厚な時間を過ごせた。新宿に場所を変えてぶらぶらしてから、前から行ってみたかった店「達 菊うら」で食事をして充実した一日を終えた。
(五島美術館と根津美術館・2013年2月9日観覧)
もうここんとこ、美術展情報は『ぶらぶら美術・博物館』にすっかり頼り切っているわけで、これまた番組で知った展覧会。これでこの秋、3回連続でお世話になっている。
実はこの展覧会のことは前から知ってはいたのだけど、ほとんど行く気が起きなかったのだ。が、番組で宮殿風の「バロック・サロン」を見て、これなら行ってみる価値があるかな、と思ったのである。
乃木坂駅着は9:45。改札を出ると、目の前に臨時チケット売り場があったので、そこでチケットを購入。臨時売り場があるなんてどんだけ混んでんだよ、と一抹の不安が胸をよぎる。しかし特段人が多いということもなく、美術館の券売所もがらんとしていた。ちょっとほっとして屋内に入り、最初の角を曲がるとそれなりに行列ができていた。
開場は10時だが、その前から徐々に入場をさせていた。案内の係員は「入り口は混雑していますので、順次ご案内しています。空いているところからご覧ください」云々。で、入ってみると、すぐのところは人だかりも多いうえに、展示品もなんかぱっとしなくてスルー。そしてすぐ次の部屋が噂の「バロック・サロン」だった。
意外にあっさりと見終わったので、もう一度最初から見た。なんだかんだと楽しめた1時間半だった。
「ぶらぶら美術・博物館」を見ていてブリューゲルの絵が映っていたので期待していたら、全部模作だった。だから番組でもスルーしたのだろうか。決定的な目玉作品がないので、何を見に行ったかという印象がちっと薄いのが残念といえば残念。でも全体的に質の高いよい展覧会だった。
絵ハガキを数枚買った。象牙のジョッキのものがなかったのが残念。また貴石象嵌のチェストも全体写しだった。これは部分アップならよかったのに。
あと「リヒテンシュタイン物語」のマンガを買った。これはあの「ベルばら」の池田理代子がこの展覧会のために描き下ろしたものだ。自分の場合リヒテンシュタインといえば、切手と、以前NHKスペシャルで見たヒトラーの美術品破壊命令から侯爵家の美術品を救い出す話の印象ぐらいしかないのだが、このマンガはその物語なのである。マンガだけでなく、侯爵家の歴史や展覧会出品作品の写真もあったりするので、図録よりよっぽど面白いと思って買ったのだ。もちろん、ベルばらテイスト満開の絵柄も味わい深い。
昼食は定番のポール・ボキューズでとり、六本木ヒルズやミッドタウンで買い物をして帰った。
(国立新美術館・2012年11月24日観覧)
もうここんとこ、美術展情報は『ぶらぶら美術・博物館』にすっかり頼り切っているわけで、これまた番組で知った展覧会。
自分はシュールレアリスム絵画が好きなのだが、そのなかでもデルヴォーはマグリットと並んで好きな画家だ。その展覧会というのだから見に行かなくてはならない。とか言いつつ、デルヴォー展を見るのは1990年の横浜美術館以来だったり。10年前にも回顧展があったというが記憶にない。
京王線は井の頭線と高尾山くらいしか使ったことがなくて、本線沿線なんて未知の領域だ。途中調布駅で乗り換えたが、システマチックなホーム構成には感心した。
美術館へは、東府中駅から歩くことにした。事前に地図をちゃんと調べておかなかったので道順が少し不安だったが、それは杞憂だった。駅前からすぐ、でかい看板だとか道標だとかペナントだとか、とにかくあらゆる手段を講じた道案内が、お前たちを絶対に目的地まで辿り着かせてやるぞ、といわんばかりに絶え間なく続いていたのだ。
美術館に着いたのは10:40くらいだった。
順路はだいたい時系列になっていて、最初の方は自分の作風が確立していなかったころの印象派的なものとかでまるで興味なしですっ飛ばした。
上記はいずれも油絵で、これらの作品はいずれもデルヴォーらしくてよかった。他の作品はだいたいはペンなどによる習作だった。最晩年、目が悪くなってからの作品もあったが、もうそうなると見るに耐えない感じだった。そういえば、デルヴォー作品ではお馴染みのリーデンブロック教授が登場する絵がほとんどなかった。
作品数がそう多くないので鑑賞に時間はかからなかった。会場の作りのせいで動線が交錯しているのがちょっとイマイチだったが、もちろんそれは作品の質を貶めるものではない。それよりも、公立の小さな美術館の独自企画展ということで客も多くはなく(宣伝費も限られているのだろう)、またそれらの客もほんとうに美術が好きな人たちに違いなく、そのため都心の大美術展にありがちなざわざわした感じもなくて、静かに落ち着いて鑑賞できたのがよかった。
デルヴォーのあとで常設展を見たが、見るべきものはなかった。しかしそのあとに見た牛島憲之はよかった。メキシコ・ルネサンスのリヴェラのような不安げなトーンと、独特の無機的なデフォルメに感心した。「かま場」なんか素晴らしい。好みだ。
よかったものは全て絵ハガキになっていたので買い込んだ。もちろん、牛島憲之のも買った。この日の収穫は、正直言ってデルヴォーよりも牛島の方だった。
会場を出たのは昼ちょっと過ぎで、東府中駅までの途中で見かけた「アキチ」という店でランチを食べた。醤油ベースなのに洋風の味付けのサワラは、身が厚くておいしかった。でたらめに入った店が美味いとなんだか凄くトクした気分になる。もっと近くにあれば贔屓にしたいところだが、府中なんてこの先また行くことがあるかどうか。そのあとは新宿に出て買い物をしてから帰った。
(府中市美術館・2012年11月3日観覧)
もうここんとこ、美術展情報は『ぶらぶら美術・博物館』にすっかり頼り切っているわけで、これも番組で知った展覧会。
ちょっと寝坊したりして、ミッドタウンに着いたのは10時半近くになっていた。凄いギョーレツだったらどうしよう、と思ったが、やはりテーマが一般受けしにくいのだろうか、会場へ向かうエレベータもチケット売り場も閑散としていた。
しかし入り口に看板が出ており、見ると「10:30から11:10まで団体の入場があります」とのこと。係員に聞くと、中学生の見学が入っているという。え゛ーそりゃ運が悪い、と思ったら彼等は静かで逆に驚いた。周りがあまりにも静かすぎて釣られたのか、それとも元々が品行方正な子たちなのか。つうか、他のジジババの方がよっぽどうるさくて、結局 iPod で耳栓をするはめとなった。
ひょっとして、物語の筋が分からず音声ガイドのお世話になるのでは、とも思ったが、TV での予習の甲斐もあり、まあ理解はできた。
ほかに『地蔵堂草紙絵巻』(やらかしちゃった僧の話)や『小おとこのそうし』、『藤袋草子絵巻』なんかも面白かった。
詞書を読んでやろうと思ったが、大江山縁起だけで疲れてしまった。こういう展覧会だから、読み下し文が作品の近くに書いてあるといいのになあと思った。酒呑童子の手足の色とかちゃんと書いてあるのに、知らずに通り過ぎた人がほとんどだろう。鼠草子だって、猫僧正に出くわしてパニクってすっころんだ、という場面だったが、絵だけ見てると、あまりにユーモラスなんで、道で普通にすれ違ったように見えちゃう。もしかしたら音声ガイドで解説してるのか? ま、いずれにしても「なんて書いてあるかわかんないね」なんて言いながら見ている人は少なくなかった。
会場を出たのは12時ちょっと前くらいだった。絵ハガキを数点と、図録を買った。絵ハガキは、展示替えで実物は見てないけど「雀の小藤太絵巻」のも買った。清水寺の前で、橋にたたずむ雀のなんとも侘びた風情がイイ。
地下の DEAN & DELUCA で昼食をとり、ワインなど買い物をしてから新宿に出て、夕食を食べて帰った。新宿での夕食は実に10ン年ぶりだった。
(サントリー美術館・2012年10月27日観覧)
静嘉堂文庫が所蔵する平治物語絵巻「信西巻」が公開されている。東博で開催中のボストン美術館展とタイアップしていて、東博展のチケット半券で、入館料も割引となる。この信西巻を見て、現存3巻がようやくコンプとなるのだ。これはもう、見ないわけにはいかないのだ。
二子玉川駅からバスに乗り、静嘉堂文庫バス停で降りた。バス通りは車も多かったが、静嘉堂文庫の敷地に入るととたんに静かになった。
美術館に着いたのは開館時間の10時をだいぶ過ぎた頃だった。美術館は静嘉堂文庫本館の斜向かいにある。本館は関東大震災直後の1924年に建てられたものだが、美術館は1992年とまだ新しい。
受付で入館料を支払い展示室に入ろうとすると、いきなり目の前にお目当ての平治物語絵巻信西巻があった。人は少なくてかぶり付きで見られた。期間中に2回の巻替えがあり、この日は中間の第二段から第三段が展示されていた。場面は、信西が自害するところから、遺体を掘り起こされて首実検にかけられるまでだ。
この信西巻は重文指定だが、精緻な筆致はボストンの三条殿夜討巻や東博の六波羅行幸巻(国宝)に通ずるものだ。三条殿・六波羅行幸と違うのは山野の景色が多いことだろう。
信西巻をじっくりと鑑賞してから改めて展示室に入ると、重文絵画が目白押しだった。平治物語だけが目的だったのだが、この高品質にはいい意味で予想を裏切られて嬉しかった。仏画では、鎌倉時代の普賢菩薩像が良かった。細かくて繊細な小品だ。
住吉物語絵巻と駒競行幸絵巻の2つの絵巻物が展示されていたが、これらを見ると、平治物語絵巻の質の高さがよくわかる。
あと、展覧会の本題は『東洋絵画の精華』なのに、特別出品とかで国宝倭漢朗詠抄太田切が展示してあった。
1周まわったあとでまた信西巻を見た。今度は詞書もじっくり読んだ。そうこうしていると段々と人が増えてきて、11時過ぎには横4mほどの展示ケースの前は人でいっぱいになった。
帰りは二子玉川駅まで歩いて行った。野川沿いは菜の花がとてもきれいだった。
駅に着くとちょうど昼だったので、高島屋の9階にある『金澤の寿司 華爛』という店で昼食をとった。ほたるいかと穴子が出色だった。ほたるいかをこんなに旨いと思ったのは初めてだ。酒は菊姫の『先一杯』というのを勧められるままにいただいたが、これがどんぴしゃだった。旨味があって、軽やかで、昼に飲むにはいい。調子に乗ってそのあと能登飲み比べセット(遊穂・池月・千枚田)とかを飲んだら、すっかりできあがってしまった。
(静嘉堂文庫美術館・2012年4月30日観覧)
「ボストン美術館展」って、なんか前にも行ったことあるなあと思っていたら、西洋画の展覧会だったり、浮世絵の展覧会だったりしたのだった。名古屋にはボストン美術館の分館があって(今回の展覧会も巡回するらしい)、旅行途中に北宋徽宗皇帝の『五色鸚鵡図』を見に寄ったこともあった。
そんなボストン美術館が『日本美術の至宝』っていうんだけど、どんなもんなんだろう。
門前到着は9:20。このテの有名展覧会は混雑しがちで、そうなると時間前に門内に客を入れて中庭で待たせることもあるが、この日はそこまでひどくなかった。まだ会期の前半だからなのかもしれない。
事前のリサーチでは、展示室が混雑すると絵巻物が見にくくなるというので、まずは速攻で2つの絵巻を見に行った。
平治物語を食い入るように見ていると、後ろから「会場内混雑してまいりましたので先頭の方は止まらずに少しずつお進みください」と係員の声。ふと気づくと自分の右にすんごい列ができていた。知らず知らずのうちに渋滞を引き起こしていたらしい。まだ9:55でこの人だかりは凄い。おそらくもうこれより後の時間は、立ち止まっての絵巻鑑賞は不可能だろう。
全部見終わってからもう2周した。第1室の絵画と、その次の絵巻はとにかく混んでいた。そこいくと、後半の屏風絵なんかはモノが大きいせいもあるのか、客も適度にばらけていた。
お土産コーナーでは吉備大臣と平治物語の絵葉書を買った。図柄は、吉備は冒頭の楼閣に閉じ込められる部分、平治は牛車が押し合いへし合いしている部分で、平治はともかく、吉備は場面選定がイケてない。
さらに、ミニチュアアートのガチャガチャを3回もやってしまった。1回300円もする。出てきたのは、平治物語絵巻と、等伯の龍虎図と、光琳の松島図だった。こちらの平治は、絵葉書と違ってちゃんと御殿炎上の部分がフィーチャーされていた。
平成館を出たのは11時すぎだった。このあと常設展を見たいが、見終わると昼になってレストランが混んでしまう。そこでちょっと早いが先に昼食をとることにした。東洋館の「ゆりの木」に行った。
ボストン展とタイアップした限定特別メニューの穴子丼とフォアグラ丼を注文し、ボストンビールセットでちびちびやった。料理を待つ間に先ほどのガチャガチャのミニチュアアートを開けてみると、あんまりな品質に泣きたくなった。これを3つも買ってしまったオレは・・・
穴子丼というと、甘くてべちゃべちゃのタレが天ぷらを台無しにしたりする店があるが、これはほのかに甘いくらいで良かった。もうちょっと油切れがよいともっと旨かっただろう。フォアグラ丼のフォアグラは西京漬になっていて、これがよく合う。まわりにはソテーしたズッキーニなどの西洋野菜が添えられていて彩りもよかった。
限定に釣られて注文したが、どっちの料理も結構重くて、食べ終わったら眠くなってしまった。
食後に本館へ向かった。
2階の国宝室には、東博が所蔵している平治物語絵巻『六波羅行幸巻』がボストン展に合わせて出品されている。ボストンの三条殿夜討を見た後では、そもそもそんなに激しいシーンじゃないということもあるのだけど、ちょっと迫力に欠ける。また絵の状態もボストンの方が良さそうに思えた。それでも精密な人物描写はなかなか良い。
いつもは特別展の会期中でも国宝室なんてがらがらなのに、これはボストン展のついでに寄る人が多いのだろう、なかなかの行列ができていた。
本館をぐるりとまわったあと、今度は1回400円もする東博公式考古学ミニチュアのガチャガチャをついやってしまった。『踊る埴輪』が欲しかったが、出てきたのは『人面付壺形土器』だった。製作はあの海洋堂で、ボストン展のしょぼいミニチュアと違って質感も良く、手にとると重量感がある。同じ Made in China なのに、この違いはなんなんだろう。100円だけの差なら、こっちの方が断然イイ。
あとは法隆寺館へ寄って、仏像の写真を撮りまくってから、博物館を後にした。
(東京国立博物館・2012年4月21日観覧)
「平家納経」がやってくるというので、雨予報の土曜日、江戸東京博物館へ出かけた。
前日には東京・横浜が初雪を記録し、この日もその余波でむちゃくちゃ寒かった。両国駅に着いた頃、ちょっとの間だけ、雨は雪に変わったりした。会場には10分前の9:20に着いた。江戸東京博物館はロビーが広くて、早く着いてもゆったりと待てるのはいいところだ。
まだ朝早いせいか、はたまたこの寒さと悪天のせいか、それとも王子駅付近の火災で京浜東北線が止まっているせいか、なんだかわからないがとにかく空いていた。
それでも会場入口周辺は例によって人が多かったので、とにかく奥へと突き進んだ。なにしろ、この展覧会では、平家納経にしか興味がないのだ。
他の展示物はほとんど見ないで、平家納経だけを見て過ごした。1時間くらいするとだんだん混んできたので退散することにした。
江戸東京博物館は何度か来ているが、ここはいつも東京見物の団体客が多くて、フツーの美術展とはまったく雰囲気が違う。うるさいし、タバコ臭かったり酒臭かったりするし、なにしろ団体客は美術になんか関心ないのだ。そんなわけではっきり言って鑑賞環境は悪い。さらに今回はそれに加えて、歴史解説らしきイメージ映像が会場でエンドレスで流れていて、しかもそれが寄りによって平家納経コーナーだったので、もう最悪。カナル型イヤホンを耳の奥の方に突っ込んで音楽を聴き、それらの騒音をなんとか掻き消した。iPodからランダムで再生されたのはコルトレーンのバラードで、優しいサックスの響きが平家納経によくマッチした。
「平氏ニュース」とかなんとかいう、新聞体の解説なんかあったりするところからして、やはり美術品の展示館というよりはエンタメ系博物館のような施設なんだろう。まあそう思えば納得できなくもないんだけど、でもなにもこれほどの佳品をそんなへんてこなところで見せなくたっていいのに、とかいう気もしたのだった。だって、こんなんじゃ、落ち着いてじっくり味わえないじゃない。
気に入った陀羅尼品は絵葉書になかった。檜扇のはあったが恐ろしくセンスのない写真だった(扇子だけに)。しかたないので願文と法師功徳品の絵葉書を買って会場を出た。
腹が減ったので、最上階の7階にある桜茶寮という店に入って早めの昼食をとった。平清盛展とタイアップの広島産牡蠣めしはなかなかだったが、その前に飲んだごぼうビールがとてもよかった。ごぼうの香りがする不思議なビールは、飲むとその成分のせいかほんのりと甘みを感じる。
いい気分になって博物館を出て、新宿で買い物をしてから帰った。
(江戸東京博物館・2012年1月21日観覧)
茶碗のような焼物には前から興味はあったのだが、BSアニメ『へうげもの』を見始めてから茶道具全般に興味がわいてきた。畠山記念館に、関連番組の『へうげもの名品名席』で紹介された楽茶碗「早船」が出ているので、散歩がてら、見に行ってきた。
畠山記念館は、荏原製作所の創業者である畠山即翁が生前蒐集した日本美術を展示している。年に4回展示替えをしているようだ。この日は秋季展の期間だった。題して「茶人 畠山即翁の美の世界」。
最寄り駅は都営地下鉄の高輪台だが、五反田駅から歩いて行った。駅前の広い坂は相生坂といい、この下を地下鉄が通っている。歩きやすかったが、元々は急峻な坂道だったそうな。高輪台駅から先はちょっと道が分かりにくかったが、ある程度目星をつけておけば、あとは電信柱に付いている案内が頼りになるだろう。
入館はスリッパ履き替えなので、脱ぎにくい靴を履いていくとほんのちょっと面倒かもしれない。
記念館を出てから品川方面へ散歩。『タモリのTOKYO坂道美学入門』で知った高輪消防署二本榎分署が見えてきた。
レトロでいい。しげしげと眺めていると、入口の張り紙の下の方に「見学希望者は受付に・・・」の文字が。えっ、中を見せてくれるの。恐る恐る入るとすぐ受付があった。受付氏はすでに我々を察知していたらしく、「見学ですよね」と向こうから声をかけてもらえた。
内部見学は署員の案内つき。現役の公署でもあるし、へたなところに入られたり、怪我でもされたりするとマズイのだろう。しかも記念絵ハガキ付きである。それでももちろん、タダなのだ。
2階の踊り場を眺めてから3階へ。階段の手すりのシックながらも冷徹な印象の素材は、赤大理石とコンクリを混ぜ合わせたもので、それをピカピカに磨き出したものとのこと。円筒型の3階はかつての講堂で、現在はささやかな資料室となっており、古い消防用具などが置いてあった。それからバルコニーに出て望楼を見上げた。いい雰囲気だ。完成した頃は周囲に高い建物はなく、東京湾まで見渡せたとか。
最後は駐車場に降りて、消防署のイメージのあのすべり棒を見たり、停めてある消防車両を見たり。東京消防庁にも9台しかないというキッチン車両は中も見せてもらえた。なかなかない、よい体験だった。
桂坂を下りたあと、特に行くあてもないので、今度は高輪プリンスまでまた坂を登って旧宮家の邸宅だった貴賓館を眺めてからラウンジでケーキを食べたりしてのんびりしたあと、品川駅へ。途中ウィング高輪に秋田県のアンテナショップがあったので寄ってみると、「アンテナショップスイーツNo.1決定戦 ASS-1グランプリ」で1位をとったという「まち子姉さんのごま餅」なるものがあったので買って帰った。
(畠山記念館・2011年11月26日観覧)
早来迎が来るというので早割チケットを購入しておいた。早来迎は11月13日までの展示なので、いなくなってしまう前に見に行った。
早来迎の入れ替わりは山越阿弥陀だが、これは以前見たことがある。早来迎じたいも京博でたまに展示されることがあるらしいが、自分は未見だ。
開場10分前の9:20頃に会場に着いた。列は100人程度で大したことはなかった。e-チケットもちゃんと印刷してきたので、バーコード読み取りもスムーズだった。
それでも第1会場の入口は列ができていた。展示リストを見ると第4章に早来迎があるらしいので、第2会場から入ることにした。こちらは人がほとんどいなかった。この日は順番どおりにまわる人ばかりだったようだ。うっしゃ、ラッキー。
で、第2会場を出て、第1会場からまわりなおした。第1会場の方は典籍や絵が中心。
結局第1会場は流し見して、ふたたび第2会場へ。じっくり見てから平成館を出た。東博の特別展にしては空いていて、気持ちよく鑑賞できた。早来迎の絵ハガキを買おうと思ったが、印刷があんまりにもあんまりだったので止めた。図録はそもそも買う気がなかったので、今回はお土産なしという結果になった。
あとは法隆寺館、本館とまわった。法隆寺館は大好きなお面の部屋は閉まっていたが、聖徳太子絵伝が出ていた。これは随分久しぶりな気がする。本館には、毎週観ているBSアニメ『へうげもの』の主人公・古田織部の作品などがあった。茶杓はテレビのまんまだし、無礼極まりない(らしい)手紙なんかは、あの番組のあの古織様のイメージにぴったりだと思った。長次郎の茶碗なんかも面白い。どうもあの番組(と、合わせて放送される『へうげもの名品名席』)を見始めてから、自分は茶道具の見方が変わった気がする。
裏の庭園の公開時期だったが、もちろん紅葉はまだまだで、鳥もカラスとカルガモしかいなくて特に収穫なし。
最近は昼食は博物館内で済ませることが多かったので、今回はちょっと考えて、上野名物の豚カツを食べに行くことにした。御三家のうち博物館に一番近い双葉は行列ができていたので、次に蓬莱屋に行ったら入れた。いやに黒い衣のカツを見たときは、これ失敗作だろ、と一瞬思ったが、ちゃんと柔らかくて旨かった。衣もサクサクだった。不思議だ。生ビールを2杯飲んだら気持ちよくなった。
(東京国立博物館・2011年11月5日観覧)
西洋美術のピカソや印象派と同様に、空海関連の展覧会は食傷気味だ。企画を知ったとき「また空海かよ」と思った。しかし「国宝・重要文化財98.9%」を謳っているので、しかたなく早割チケットを購入しておいた。夏は山登りをするのでなかなか観に行けなかったが、9月に入ってようやく時間ができた。
正直言ってまったく期待していなくて、東寺の仏像を間近に見られるという一点だけが興味の元だった。なわけで、いつもは美術系のブログなどで情報収集してから出かけるのだが、今回はまったくそんなこともせず、PDFの作品目録も事前にダウンロードしたのだが、あまりの見難さに読みもせず。
電車の時間も調べずにテキトーに出かけたら上野駅に着いたのは9時半を少し過ぎたころだった。台風接近の最中という影響もあるのか、電車は結構すいていた。
電車もそうだが、博物館もさほど混んでいなかった。平成館の入場口も人は少なかった。今回はペアチケットの紙はファインモードで印刷してきたので、バーコード読み取りもスムーズだった。
どうやら聾瞽指帰やら風信帖やらが出ているらしいが、典籍は今更感がたっぷりで、優先順位は低い。第一会場の終わりの方に仏像があるっぽかったので、とりあえずそちらから入ってみた。
帰り際に第1章の部屋にも入ったが、人が多くてやはり典籍類はよく見られなかった。聾瞽指帰が1巻まるまる全部を展示してあったのには驚いた。
仏像の展示は、へんな立体曼荼羅がどうとかよりも、ライティングがよかったと思った。陰影もあまりくどくなく、双眼鏡で見ると立体感がいや増す。
法隆寺館のオークラで早めのランチを食べて、法隆寺館・本館をのんびり見てまわった。
法隆寺館のお面の部屋は開いていた。本館は2階の貴賓室が特別に開いていて、中を見ることができた。相変わらず刀のコレクションが良かった。ちょっと意外だったのは、数年前オークションで巨額で落札されて有名になった運慶作の大日如来像が展示してあったこと。どうやら東博に寄託されているようだ。
(東京国立博物館・2011年9月3日観覧)