KATZLIN'S blog

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みちのくの仏像2015-03-01 20:43

昨年春に会津を旅行した際、勝常寺の住職が、「今度の冬に上野の博物館に薬師像を貸し出す」と言うのを聞いて以来、ずーーーっと楽しみにしてきた展覧会。しかも相棒がチケットをタダでゲットしてきて、もうテンション上がりまくりの日々であった。
気になるのは、会場が本館特別5室ということで、かなり狭いということだ。それはつまり展示数が少ないと言うことでもある。リストを見るとたったの19点。BS日テレ『ぶら美』で「仏像スペシャル」と銘打って法隆寺館とか東洋館に行っていたのは、1時間の放送枠を満足できなかったらに違いない。
みちのくの仏像展


どうせ人気なくて空いてるだろうと思ったが、念のため開館一番に行くことにした。9時半に着くと、案の定、人はさほど多くはなかった。ま、こんなもんだろうと思ったところ、特別5室の入り口はかなりの混雑。そう、人は少なくても、それ以上に、会場が狭いのだ。アブネー、早めに来てよかった。

聖観音菩薩立像(岩手 天台寺・重文)
No.1。美しい鉈彫りの仏が入り口で出迎えてくれた。正面から見るとスマートに見えるが、少し角度を変えると、意外なほどに腹部がぽってりしている。それもまた美しい。土偶もそうだが、東北って、独特の美意識というか文化が面白い。
薬師如来坐像(宮城 双林寺・重文)
No.6。優しい顔立ちの薬師像。一木なのにほとんどひび割れがないという稀有の仏像だ。
薬師如来坐像および両脇侍立像(福島 勝常寺・国宝)
No.8。博物館の照明のもとでじっくり鑑賞できた。防火と文化財保護の点から寺では宝物館に安置され本尊と離ればなれになっている脇侍がちゃんと脇に揃い、本来の三尊で拝めるのがいいところ。
薬師如来坐像(岩手 黒石寺・重文)
No.9。対面の双林寺の薬師と違って、目が吊り上がって一見怒っているように見える仏像。下から見上げると優しくなるに違いないと予想して屈んでいろんな角度で見てみたけど、そのままだった。
十二神将立像(丑神・寅神・卯神・酉神)(山形 本山慈恩寺・重文)
No.15。鎌倉期のリアル系仏像。卯神の頭のウサギがあまりにも可愛すぎて、怒れる神の形相とのギャップがおもしろい。
十一面観音菩薩立像(宮城 給分浜観音堂・重文)
No.16。頭に塔がにょきっと生えてるという、いっぷう変わった仏像。背の高さでは会場イチの巨像だ。ぱっと見で違和感を覚えるのは、体のバランスがひどいからだろう。しかしよくよく考えてみれば、法隆寺館に沢山おわします飛鳥時代の金銅仏なんかはみんなこんなバランスのような。岬の高台に安置されているということだが、これこそ、海から見上げるとちょうどよい姿になるのかも知れない。

あっという間に見終わった。人の動線がぐちゃぐちゃなうえに、みんな仏像を見上げながら移動するから、あちこちで人とぶつかりそうになった。再入場可能というので一度外に出て、本館を見学した。特集展示の水滴が面白かった。江戸時代の工芸はホントに奥が深い。
水滴
そのあとは法隆寺館に行き、1階のオークラでコエドビールを呑みながらまったりと昼食をとった。庭では冬鳥のシロハラも食餌をしていた。
食後に法隆寺館と東洋館を見学し、最後にまたみちのくの会場をぐるりと周り、絵ハガキを数枚と別冊太陽の東北仏像特集を買って帰った。
(東京国立博物館・2015年2月7日観覧)

特別展 動物礼讃 大英博物館から双羊尊がやってきた!2015-02-26 23:35

青銅器好きの自分がこの展示に魅かれたのは、なんといっても大英博物館の双羊尊だ。この特異な形の青銅器は世界にたった2つしか伝わっていない。その一方がロンドンからやってきて、もう一方の根津美術館のシンボルとも言える双羊尊と対面するというのだ。もしかすると、この2つが並ぶなんて歴史上初の大事件かも知れない。ああもう、居ても立ってもいられない。


催しじたいは、未年だからとイギリスの羊を呼んで、さらに展覧会としてテーマを打ち出すために「動物」関連の作品を集めたと推測。
まあ、こんなマニアックな展覧会は人も少ないに違いないと、テキトーな時間に家を出たら青山に着いたのは昼過ぎ。とりあえず美術館に入り、庭にあるネズカフェでミートパイを食べて腹を落ち着かせてからの鑑賞となった。

会場に入ると、あまりの驚きに思わず声をあげてしまった。京都の泉屋博古館の世界的名品、虎卣こゆうが目に飛びこんできたのだ!!!!!!!
なにしろ双羊尊にしか興味がなく、展示リストをロクに見ていなかったので、まったく知らなかったのだ(実は、よくよく見たら、事前に入手していたチラシの左上にちゃんと虎卣が載っているのだが)。この虎卣も泉屋以外にはフランスにしかないという珍品である。ぱっと見、人が食べられているように思えるが、人を守っているのだという解釈する人もいる。
そして部屋をくるっと見てみると、極上の青銅器がわんさかと、あるわあるわ。泉屋が冬季閉館中とはいえ、よくもこれだけ出してくれたものだと狂喜乱舞である。

そして双羊尊である。2つが隣りあって並んでいる姿を勝手に想像していたのだが、それぞれ別のケースで斜交いに置かれていた。みんな行き来して見比べていた。
双方は似ているようでいて、口やら髭やら腹やら体の模様やら、意外なほど違いが多く、よくよく考えてみると似ているのは大きさと雰囲気だけ、と言った感じ。ロンドンの方が緑青が多いように見え、そのぶん根津よりも古ぼけているように感じられた。近年では、2つは制作年代が違うのではないかという研究もあるらしい。

ミミズクを象った泉屋の戈卣かゆうと、つまみのへんてこな猿が愉快な根津の黄瀬戸獅子香炉の絵ハガキを買った。大英博物館の双羊尊はクリアファイルはあったが絵ハガキがなかったのが残念。
(根津美術館・2015年1月31日観覧)

ホイッスラー展2015-02-18 19:40

ホイッスラー展

この展覧会の開催は知ってはいたけれど、特に観に行く気はなかった。しかし相棒が同僚に聞いたところでは、なかなかよいという話。しかも「これ、やらかしちゃったんじゃね?」と心配になるくらい空いているという。
じゃあ行ってみてもいいかな、と興味を持ったところで『ぶらぶら美術・博物館』で取り上げられた。たしかに、なかなか面白そうだ。


相棒と昼に横浜で落ち合って昼食にピザを食べ、のんびりと美術館へ向かった。着いた時は15時になんなんとしていた。
横浜美術館
美術館前はなんだか人混みが凄かったが、これはどうやら目の前の広場で開催中の車の展示イベントのせいらしい。美術館のエントランスはやはり空いていた。しかし会場に入ると、なかなかの混み具合。少なくとも「やらかしちゃった」というほどは空いていなかった。会期が進んで巻き返したのか、それとも『ぶら美』放送の効果か。

展示は大きく人物画・風景画・ジャポニスムに分かれていた。ぶら美ではホイッスラーの生涯を年代順に追う構成だったから、そのつもりでいるとちょっと違和感を覚えるかもしれない。また、ぶら美でまったく触れられなかった「ピーコック・ルーム」なる部屋があった。かなり大きなコーナーなのに、ぶら美が完全スルーだったのが不思議なくらいだ。自分はあんまし興味が湧かなかったのですっ飛ばしたけど。
人物画はピンと来なかったが、風景画には良いものが多かった。気に入ったのは、月並かもしれないが、ノクターンシリーズだ。ノクターンシリーズはジャポニスムコーナーに配されていた。水墨画の影響がどうとか言う説もあるようだが、そんな能書きは要らないと思う。ていうか、こんな真っ黒な水墨画ねえだろ、と思う。

常設展は、シュルレアリスムの部屋はいつもどおりだったが、前衛美術が良かった。
常設展 ホイッスラー展看板
絵ハガキを買って美術館を出た。すぐ近くのウミリアというイタリアンで夕食を楽しんでから帰った。
(横浜美術館・2015年1月24日観覧)

高野山の名宝2014-12-18 23:55

高野山の八大童子が10年ぶりに8人揃って出開帳というので、早割ペア券を買って待ち構えていた。実は、我々はその10年前の展覧会(「空海と高野山」東京国立博物館)も見に行っていて、ちゃんと図録も買ってある。チケット購入後に発表された出品リストを見てみると、その展覧会とかなりダブっていて笑えた。でも8人揃って拝める機会はそれ以来というのだから、べつに構わない。
看板


のんびりめに家を出て、クリスマス飾りのミッドタウンに着いたのは11時過ぎ。前の週に見に行った職場の同僚によると「そんなに混んでない、作品数が少ないからすぐ見終わる」という話。しかし3階の会場入り口に到達すると、ロッカーに人だかりが。しまった、こりゃあ出遅れたか。
と、焦ったが、仏像などの大きなものがメインなので、作品前に大行列、というようなことはなかった。

記憶とは適当なもので、10年前に全員にお目にかかっているはずだが、チラシになったりするアイドル的な矜羯羅(こんがら)童子と制多伽(せいたか)童子以外は覚えがない。というわけで新鮮な気持ちでの対面だった。
やはり矜羯羅、制多伽は素晴らしい。あと、恵光(えこう)もなかなかよい姿。鎌倉仏ならではの描写に惚れ惚れしてしまう。よく見ると、みんなアンクレットなんか着けてたりして可愛らしかったりもする。

ところでこの展覧会のチラシには『運慶作の国宝、八大童子勢ぞろい』とある。まるで8体とも運慶作のような表現だが、指徳(しとく)童子と阿耨達(あのくた)童子は室町期の後補である。指徳童子なんか姿がまんま四天王だし、阿耨達童子はヘンテコな竜みたいなのに乗っちゃってるところからして明らかに他の皆さんと違う。2人ともどう見たって「童子」に見えない。それになんてったって、出来が悪い。これで国宝はありえないでしょ、とか話していたら、案の定、(つけたり)だった。そりゃそうだ、鎌倉時代より後の国宝仏なんて聞いたことないもの。まあ附も国宝には違いないんだろうけど、言うなれば「おまけ」なのだから、さも国宝本体のように堂々と名乗るのはどうかなあと思う。いや、それ以前に、運慶作を標榜しているのが気にいらないのだけど。で、新薬師寺の十二神将の宮毘羅大将が1人だけ国宝指定されていないことを大っぴらにしているのを思い出して調べてみたら、附どころか、そもそも文化財指定されていないのだった。
しかし一番驚いたのは、帰宅後に高野山公式サイトを見て知ったのだけれど、あの指徳童子と阿耨達童子のお姿は、「秘要法品」なる書物にそのまんま同じ見本が載っている、ということなのだった。

同僚の証言どおり、確かにすぐに見終わってしまった。もう一周してから会場を出た。図録は10年前のものがあるので買わなかった。8人勢揃いしている絵ハガキを買って、帰った。
(サントリー美術館・2014年11月30日観覧)

再び東山御物の美2014-11-28 23:24

後期の見所は、なんといっても徽宗皇帝筆の桃鳩図。公開が10年ぶりくらいというレアアイテムだ。で、さらに、公開期間がほんの1週間程度とさらにプレミア感に拍車がかかる。このお宝を拝むには、休日と合わせるとなると勤労感謝の3連休しかチャンスがない。
まあでも、前期に行った感じからするとどうせ空いているだろうと、土曜の午後に悠々と出かけることにした。


相棒と待ち合わせて昼食をとったあと、東京の三井本館に着いたのはもう3時近かった。
7階の美術館に直結するエレベータを降りると、1か月前と変わらない雰囲気。前回の半券を提示してリピーター割引でチケットを購入し、中に入ると、意外にも展示ケースに人が群がる状態で、明らかに前期よりも混んでいた。

徽宗筆 桃鳩図(個人蔵・国宝)
No.1。ケースの前が人だかりになっていた。とは言っても10人ほどが群がる程度で、どこぞの金印みたいな行列を作るとかそういうことではない。その10人とて波があり、うまく乗れれば間近でバッチリ見られるのだ。
かつて、同じ徽宗筆「五色鸚鵡図」を名古屋ボストン美術館で見たことがあるが、まあ暗いし薄いしで見難いことこのうえなかった。その先入観があったのだが、それを完全に吹き飛ばすくっきり度でびっくり。ハトの眼の周りの襞もよく見えた。この気品はどうだろう。前の日に見た東博の国宝展にも宋画のよいものがあったが、これも負けず劣らず素晴らしい。凄くよいものを見た気がしたのだった。
世界史の教科書に登場する徽宗は文人皇帝でどうのこうのと書かれるが、そう言うと下手の横好きみたいに思ってしまうが、実はプロ級の腕前なのだ。
伝徽宗筆 秋景山水・冬景山水図(金地院・国宝)
No.3。小さな猿と小さな鶴をみんな探していた。樹上の猿はすぐわかったが、鶴は難問だった。
牧谿筆 漁村夕照図(根津美術館・国宝)
No.41。漁村夕照図は過去にも見ているが、やはり墨の濃淡でもやっとした景色を表現するのが絶妙で、やっぱり感心。
伝牧谿筆 翡翠・鶺鴒図(MOA美術館)
No.44。そもそも実物が白黒のセキレイはともかく、あのカラフルなカワセミを墨の濃淡だけで表現しちゃっているのが凄い。枝に止まってる脚とか短い尻尾とか、実によく観察していると感心。

馬蝗絆や飛青磁花生や油滴天目は前回同様(当たり前か)、美しかった。
最後にもう1周してから会場を出た。客の単眼鏡使用率が異様に高かった。どこぞの国宝展とは大違いで、それだけマニアが集まったということが言えるだろう。もちろん団体客なんかいる訳がない。美術が本当に好きな人しか来ないのだ。

会場を出るとすでに17時になんなんとしていた。近くのフランス料理店に電話してみると席が空いているというので、三越で時間をつぶしてから行った。思ったより高かったが、思ったよりはるかに良い店だった。いろいろと満足できた一日だった。
(三井記念美術館・2014年11月22日観覧)

再び日本国宝展2014-11-24 21:50

前期は10月19日に行っており、後期はいつにしようかというのが思案のしどころだった。いよいよ金印がやってくるので混雑は必至だ。
加えてテレビ番組の宣伝攻勢も強まってきており、すでに放送ずみの『日曜美術館』『ぶらぶら美術・博物館』(←見逃した!!)に続き、『美の巨人たち』でも善財童子がとりあげられる。一風かわったところでは、なんと『もしもツアーズ』でも放送とのこと。
そこまで一般人の間でも知られてしまっては、もう土日なんかに入ったら大変なことになるに相違ない。ということで、仕事のやりくりをつけて、金曜午後に突入することにしたのだった。


相棒と上野駅でおちあい、エキナカで軽く昼食をとった。この間、公式サイトの混雑状況を確認すると、12時過ぎに入場規制が始まって、入場待ち時間が40分とのこと。陽気もいいし、それくらいなら待ってもいいだろうと予定どおり突入することにした。
正門付近は閑散としていて「ホントに混んでんのかな」とも思ったが、平成館まで行くと確かに行列が出来ていた。入口から噴水を半周したあたりが最後尾。これで40分か、ふむふむ。
我々が並びはじめたのが13:55で、入場は14:20過ぎ。実際に待ったのは、だいたい30分くらいだった。後期になって展示されたものを中心に見てまわった。

普賢延命菩薩像(持光寺)
No.40。これまで仏画はスルーしがちだったが、これは目にとまった。4頭の象に乗る菩薩の絵。平安仏画なんだろうけど、インド感満載だ。あとで調べたら、通常非公開で滅多に展示されない超レア物なのであった。
土偶 中空土偶(函館市・縄文文化交流センター)
No.48。北海道唯一の国宝。頭と脇から、中が空洞なのが分かる。どうやって作ったんだろうとか、どうしてわざわざ中空にしたんだろうとか、古代の蝦夷の知恵に感心。
山越阿弥陀図(禅林寺)
No.82。有名な山越阿弥陀。過去に、ここ東博の国宝室で見たことがある。今回見て、ずいぶん綺麗だなと思った。臨終に際して阿弥陀の指と死者の指を糸で結んでおくとかいう話を聞いたことがあるが、糸を通した穴はよく分からなかった。
孔雀明王図(仁和寺)
No.85。これまで仏画はスルーしがちだったが、これまた目にとまった。正面を向いた孔雀の首のうねり具合がなんとも言えず、「降りたった瞬間の動きを表している」と言われると、そんな気になる。「世界一の北宋画」「最高峰」「傑作中の傑作」など、説明板でも大絶賛の一品。仁和寺公式サイトの画像を速攻で保存した。
紅白芙蓉図(東京国立博物館)
No.101。東博が自前の作品で数稼ぎしたな、と思わず邪推したが、これがなかなかイイ。右の白芙蓉から左の紅芙蓉に向かって徐々に紅くなるさまが美しかった。これまた「南宋画の最高峰」と絶賛の説明板なのだった。

入場規制がされていることもあって、場内は混んではいるけどまあ想定の範囲内というところか。金印は過去にじっくり見たので今回は華麗にスルー。だって、間近で見たい人の行列が、もんのすごいことになっているんだもの。

2周してから土偶ガチャガチャをやったら、中空土偶が出てきた。前回、合掌土偶と縄文の女神が出ているから、これで3つになった。縄文のビーナスが出るまでやろうかと思ったが踏みとどまった。国宝店は凄い盛況ぶりだった。
ガチャガチャの土偶
(東京国立博物館・2014年11月21日観覧)

御法に守られし 醍醐寺2014-11-07 23:38

醍醐寺展看板
東急東横店でイタリアフェアが開かれるということで、ワインなど食材の買い出しに出掛けることにした。折角渋谷まで行くのに買物だけではもったいないので、何か展覧会と組み合わせようということになり、調べてみると松濤美術館で醍醐寺の絵因果経が全場面展示中というので、ついでに行ってみることにした。
ついでのつもりだったのだけど、(そのせいもあってか)予想外に満足の展覧会だった。


どうせ空いているだろうと遅めに家を出た。井の頭線を神泉駅で降りて徒歩数分の松濤美術館に着いたときはすでに午後になっていた。
果たして、予想どおり、美術館は入口からしてひっそりとしていた。購入したチケットの番号は1295と1296だった。地下の第一会場に入ると、いかにも絵巻らしい横長なケースに人々が一列に並んでいるのが見えた。

閻魔天像(国宝)
No.8。一目見たとき、すぐに「さてはキャプション間違えたな」と思った。いや、だって、これ、どう見ても閻魔じゃなくて、観音像に見えるんだもの。この人が嘘つきの舌を引っこ抜くあのおっかない大王とは思えない。
と、思いつつその解説をよくよく読むと、どうやら現在我々がイメージする怖い閻魔が確立する前の、たいそう古い、空海が請来した曼荼羅の絵像に通じるものとのこと。へえええ、これはちょっとびっくりした。単独像として「最古かつ最良の優品」だそうな。
いやいやこれは、非常に純粋に、大層驚いた。少なくとも図鑑で見て知っているはずなんだけど、やっぱりそういう本の解説なんかと違って、実際に見るとインパクトがでかい。この体験だけで、来た甲斐があったと思った。
過去現在絵因果経(国宝)
No.1。奈良時代のもので、日本最古の絵巻ともいう。既視感があるのは、割と最近、芸大所蔵のもの(国宝)を見たばかりだからだろう。あと、奈良国立博物館の入場半券がコレなのが印象深い。解説を読むと、絵因果経じたいは8巻仕立てなのだそう。
しかしなにより、全場面展示がよかった。通常このテの絵巻は長い巻物の一部分の展示となるのだが、この日は全場面を見ることができたのだ。やはりストーリーがよく分かる。
「骨と皮になった悉達太子を見て元家来が悶絶」「菩薩になった太子が歩くと500羽の青雀が太子の周りを飛びまわる」「魔王が太子を矢で射ようとするも、矢は空中で蓮華に変わってしまう」などの迷シーン、もとい、名シーンが続き、クライマックスは魔王の軍勢が太子の瞑想を妨害する場面だ(チケットやチラシにもあしらわれている)。この化け物の軍勢の素朴な描写が現代の我々にはユーモラス。この絵巻は奈良時代の作だが、同じ頃の仏像が「大らか」と評されるのと同じような、生き生きとした雰囲気が感じられた。なにしろもう、オモロすぎる。
最初はこんなに拙かった絵巻が、300年後に源氏物語絵巻や紫式部日記絵巻のように昇華していくことを思うと、文化の変遷とは非常に面白いものだと改めて思ったのだった。
信長、秀吉、家康の書状(国宝)
No.42〜44。2013年に新たに国宝に指定された『醍醐寺文書聖教』の一部。天下人3人の自筆文書が並んでいるさまは、歴史ファンは萌えるかもしれない。以前京都の豊国神社で見た秀吉の書状はえらく字がヘタクソだった印象だったが、この文書はサマになっていた。

2周した。冷静に展示数から考えれば、入場料1,000円は高いと思う。しかし、絵因果経が見られるんだ、くらいの軽いノリで行ったところにあの閻魔天像が見られて、しかも静かな環境で、すっかりトクした気分になったのだった。
区立美術館の企画だからか、展覧会オリジナルのグッズは図録のみと寂しかった。いや、というより、図録を作るほど気合が入っているという見方の方が正しいだろう。値段も1,200円と安いから買っちゃおうかな、とも思ったが、結局やめた。今はやや後悔している。

ワイン
美術館を出てからは予定どおりに東急東横店に行った。会場の半分は立ち飲みバルになっていて、ワインを飲んだり、ラザニアを食べたりしてから帰った。東横店ではイタリア展は初開催らしいが、見かけたことのないワインもたくさんあって、これまた予想以上に楽しかった。
(渋谷区立松濤美術館・2014年11月2日観覧)

特別展 東山御物の美 --足利将軍家の至宝--2014-10-19 23:12

この秋は国宝の展覧会があちこちで開かれている。もちろん、日本国宝展が最大のものなのだろうが、実は三井のこの展覧会も見逃せない。全部で12もの国宝が見られるのだ(もっとも、展示替えがあるから、全部見るには3回行かないといけないのだけど)。


昼過ぎまで東博で日本国宝展を見たあと、上野から山手線に乗り神田で降りて、三井本館に着いたのは14時半くらい。
混雑具合は、というと、ほどほどだった。テーマもそうだけど、出品作品がシブすぎる。

青磁輪花茶碗 銘馬蝗絆(東京国立博物館・重文)
No.59。青磁の美しさに足が止まった。輪花ということで、縁に小さく6つ切れ目が入り、上から見ると6片の花弁のような意匠になっている。
解説を見ると、義政所有の頃、割れてしまったので替わりを求めたところ、これほどの物はもう作れないということで鎹を打ってそのまま返ってきたという逸話が。また、青磁茶碗でもっとも美しいとあった。実に素晴らしい。
油滴天目(大阪市立東洋陶磁美術館・国宝)
No.55。5つの国宝天目のひとつ。天目茶碗では曜変が最上とされるようだが、この油滴も素晴らしい。静嘉堂の重文の油滴よりも模様が細やか。縁の金が燦びやかなのが印象的だった。
李迪筆 雪中帰牧図(大和文華館・国宝)
No.10。相当前に、奈良の大和文華館で見た記憶があるが、そのときから結構好きな絵。久々の対面なのだが、こんなに暗かったっけ、という印象。ただしそのせいか、木に雪が積もっている様が強調されているような。
伝馬麟筆 梅花小禽図(五島美術館・重文)
No.20。ムムッ。この鳥、コガラだと思っていたら、解説にジョウビタキとある。そう、よくよく見たら、腹のオレンジ色が背景に溶けこんで分かりにくくなっているだけなのだった。いやそれよりも、ジョウビタキはこんな仕草しないだろ、という気がしたのだった。
伝銭選筆 宮女図(個人蔵・国宝)
No.49。公開は5、6年ぶりとかというレア物。唐代には女官の男装が流行ったという話だが、そもそもなんでこの人が女と言えるのかが自分には分からない。このお宝を味わうには、自分はまだまだ研鑽が足りないようだ。
梁楷筆・大川普済賛 布袋図(香雪美術館・重文)
No.24。なんとも愉快な布袋さんの絵。展示室4の一角に梁楷が並んでいて、それがどれも自分のツボにはまった。こういう諧謔趣味な水墨画って、絵心のある坊さんが手なぐさみで徒然に描いたようなイメージを勝手に持っていたが、梁楷は歴とした画家である。
伝梁楷筆 六祖破経図(三井記念美術館)
No.26。六祖(慧能)が経を破って「不立文字」「教化別伝」を説いたというシーン。元々はNo.27の『六祖截竹図』と対なんだとか。筆のかすれ具合とかユーモラスな動きから、鳥獣人物戯画に描かれている、相撲に勝って気を吐いている蛙を連想してしまった。
伝梁楷筆 六祖截竹図(東京国立博物館・重文)
No.27。六祖が竹を切った瞬間に大悟を得たというシーン。この解説を読んで初めて、同室に展示されているNo.23出山釈迦図(国宝・東京国立博物館)が同じ梁楷の絵と気付いた。作風がぜんっぜん違う。それもこの梁楷の懐の深さということのようだ。

2周した。一言で言って、とてもよい展覧会だった。とにかくシブい。これだけの出物があっても東博みたいに混んでないのがまたイイところ。
絵ハガキは、この展覧会のために特別に作られたものではなく、所蔵するあちこちの施設のオリジナルのものを売っているだけなのは残念だったが、それでもジョウビタキと截竹と雪中帰牧図の3枚を買った。

三井を出てからは東京駅の大丸に行き、ちょうど開催されていた「世界の酒とチーズフェスティバル」でワインを楽しんだ。一日中立ちっぱなしで腰が痛くなった。
(三井記念美術館・2014年10月18日観覧)

日本国宝展2014-10-19 17:03

10何年ぶりだかで開催の日本国宝展。開催を知ってから楽しみにしていた。にもかかわらず、目玉が土偶とはイマイチだなあと半ばがっかりしていたら、開催の2ヶ月くらい前になって正倉院宝物が特別出品されるとのアナウンス。開催の10日くらい前になってようやくアップロードされた出展リストを検討し、前期と後期に1回ずつ行くことにした。
前期のお目当ては正倉院宝物(国宝じゃないけど)と、源氏物語絵巻だ。土偶が5体揃うのは実は後期になってからなのだった。
日本国宝展


博物館に着いたのは開場約10分前。かなりの行列になっていた。9:30になって門が開き、粛々と中庭を進む。平成館の前で待たされて、実際に展示室に入れたのは9:40くらいだった。
入ってすぐの仏足石と、居並ぶ挨拶板(そんなもの読んでないで早く展示を見ればいいのに)、それに玉虫厨子に群がる人が多くて早くも大混雑の様相だった。正倉院宝物はその同じ部屋に展示されていた。

鳥毛立女屏風(正倉院宝物)
No.S02。高校時代に志賀直哉の『暗夜行路』を読んでこの絵の存在を知り、いつか実物を見てみたいものだと思っていたが、それがようやく叶った。思っていたよりずいぶん色が薄かった。鳥の羽はほとんど欠落しているという。ほとんど、ってことはどっかに残ってるんだろうと思って探したが、とうとう分からなかった。
楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(正倉院宝物)
No.S04。超有名なお宝。正倉院宝物と言えばコレという人も多いのだろう、みな口々に「あっ、教科書のやつだ!!」と言っていた。それにしてもこの螺鈿の細工は凄すぎる。でかい花の真ん中のこの飴みたいな固まりは、瑪瑙かなんかですか。で、有名なこの螺鈿は琵琶の裏側であり、表側には数人の人が楽器を演奏している絵が描かれている。で、やはりみな口々に「えー反対側ってこんなだったんだ!!」と言っていた。この表側の人が変な踊りを踊っているように見えるのが笑えた。
緑地彩絵箱(正倉院宝物)
No.S06。緑のあざやかなきれいな小箱。残念ながら、人の波が凄くて近寄るのを断念し、人垣の隙間から望遠鏡で見た。
一字蓮台法華経(大和文華館)
No.26。料紙が絢爛豪華。実に美しい。
当麻曼荼羅縁起絵巻(光明寺)
No.33。井戸掘りの場面で当時の大工仕事のようすが分かるとか。石仏を彫っているシーンもなかなか面白い。
土偶 縄文のビーナス(茅野市・尖石縄文考古館)
No.45。この展覧会の目玉のひとつ。頭の上までぐるぐる模様になっているのが帽子みたいでおもしろい。これ、そのまんま着ぐるみにするだけでゆるキャラになれそうだ。
土偶 合掌土偶(八戸市埋蔵文化財センター)
No.49。一目見た瞬間に、訳も分からず、なんとも言えない寂しい気分になった。第一印象は最悪だったのだ。しかし全展示を見終えて再びこいつの前に立ったとき、ふと、「ごめんなさい、許してください」と懇願している仕草のように見えた。そうか、それでマイナスイメージが先行しちゃったんだ。そうして理由が分かると、今度はこいつがとても愛らしくなってきたのだった。
こいつは何か重い罪を犯したのだろうか。合掌しているというのは現代の我々が勝手にそう見ているだけで、実はこれは両手を繋がれている表現なのではないのだろうか、などと勝手に考えたりした。
寝覚物語絵巻(大和文華館)
No.70。美しい料紙の絵巻だが、絵に比べて詞がずいぶん多いように感じた。
信貴山縁起絵巻(朝護孫子寺)
No.69。展示は尼公(あまぎみ)巻。大仏の前で尼公が寝たり祈ったりする有名な異時同図は、展示の上のパネルでよく分かるようになっていた。
源氏物語絵巻(徳川美術館)
No.67。前週に紫式部日記絵巻を見たばかりだが、それに優るとも劣らない精緻で優美な素晴らしい絵巻。この下膨れた顔の輪郭の曲線と、メーテルや森雪も顔負けの長い目の組み合わせはまったく官能的だ。詞の方の料紙も燦びやかなうえに字も美しく、まさに日本美術の極上のものを見た、という満足感でいっぱいになった。
展示ケースの位置が単独だったので(他作品と並んでいなかった)、いったん人だかりが出来るとそれがなかなか解消せず、正面の位置に入るのに苦労した。さらに、見終えて移動しようとすると人をかきわけねばならず、押し合い圧し合いでたいへんだった。
金銅能作生塔(長福寺)
No.93。細かい金工芸に感心。塔頂部が人の歩みでゆらゆら揺れていて、大丈夫かなとちょっと心配になった。
法然上人伝絵巻(知恩院)
No.95。前期の展示は巻第七。空から仏が下りてくるのを見るシーンでは、鳳凰のような架空の鳥と、オシドリのような実在の鳥が、まったく違和感なく混在しているのが面白かった。
琉球国王尚家関係資料(那覇市歴史博物館)
No.100。(6)の黒漆雲竜螺鈿東道盆(とぅんだーぶん)が凄かった。螺鈿というとベージュをイメージするが、この螺鈿は虹色なのだ。照明の加減なのか何なのか青味が強く輝いて、実に美しかった。
この琉球王家資料や土偶なんかは、これまで国宝のなかった地域のものだから無理矢理指定したんだろうな、と高をくくっていたのだが、ところがどっこい、やはりそれ相応のものだったのだ。
玳玻天目(相国寺)
No.109。美しい玳玻天目。5つある国宝の天目茶碗でも、玳玻はこれだけだ。単眼鏡を使ってどアップで見るとキラキラと輝くさまが見事だ。
薬師如来坐像(奈良国立博物館)
No.114。小さな像だが、なかなかの優品。一木造で、いかにも平安時代な大らかなところがイイ。

以前見たことのあるものとか東博所蔵のものとかはすっ飛ばして見たのだが、それでも1時間くらいかかった。でも1時間かかったとは思えないくらい、あっという間に感じた。それだけ充実した展示ということなのだろうと思った。
そのあとは、後期にはもう見られなくなってしまうものを中心に、もう1回まわった。

お土産コーナーには「国宝店」とかいう名前が付いていた。家に週刊朝日百科「日本の国宝」があるので、図録は買わなかった。その替わり絵ハガキをたくさん買おうと思ったら、なんとも残念なセレクションで、チケットやチラシにもあしらわれている新国宝・安倍文殊院のポロンちゃんと、今日見た2体の土偶の合計3枚だけ買った。レジはロープで制限するほどの混雑ぶりだった。レジ待ちのとき、自分の前にいた20代くらいの3人組の女性が、3人とも揃って縄文のビーナスのぬいぐるみを持って並んでいる光景はなんだかシュールな感じがした。
あと、土偶のガチャガチャをやった。3回やったら、うち2個が「ごめんなさいもうしません」土偶だった。
土偶

平成館を出たら、入場待ちの列がひどいことになってるだろうと思っていたら、誰もいなくてすんなり入れる状態だった(それでも展示室は混んでいたけど)。11:30だったので、東洋館のオークラで昼食をとった。少しだけ待たされたが、こちらはまだ大した混雑ではなかった。食後は、国宝展のためにほとんど国宝がない本館をひとまわりしてから、次の目的地である三井記念美術館へと向かった。
(東京国立博物館・2014年10月18日観覧)

チューリヒ美術館展 と 国宝・紫式部日記絵巻2014-10-13 23:46

チューリヒ美術館展 --印象派からシュルレアリスムまで

まあまあ興味のあった展覧会。タダ券が手に入ったので、ならば是非、ということで行ってみることにした。10月中なら同じ国立新美術館で開催中のオルセー美術館展も見られる。ついでだからこっちも見てみることにするか。
チューリヒ美術館展


開場は10時。メトロ乃木坂駅に着いたのは9:50くらいだった。改札を出ると、地下の臨時チケット売り場が大騒ぎ。えっ、そんなに混んでんの、と思ったら、オルセー展のチケットを買う人達だった。

そこらじゅうにオルセー展の案内が溢れていて、あれ、チューリヒ展ってやってんのかな、というくらいな感じだった。チューリヒ展の会場は美術館の1階で、オルセー展が2階。乃木坂駅改札から続く人の波は、美術館に入った最初の角を左に曲がったすぐのエスカレータで分かれ、そのほとんどが2階に上っていくのだった。
到着時は10時ちょっと前だったので、まだ入れないだろうと思っていたら、豈図らんや、すでに開場していた。まだ絵を見る気になっていないうちに流れのままに入場してしまったもんだから、なんだか入りこめずに変な気分のままの鑑賞開始となってしまった。

セガンティーニ
No.01、02。入場してすぐにセガンティーニの絵が2枚、どーんと飾ってある。印象派のように見えなくもないけど、だけどあんなにモヤっとしていない。自分は輪郭のキリっとした絵が好きなので、これは気に入った。F16まで絞って撮影した写真のような、背景の奥の方までカリカリな感じがイイ。
これまで完全に忘れていたのだが、大原美術館にセガンティーニの「アルプスの昼寝」という作品(有名なんだそうな)があって、それをBS日テレ『ぶらぶら美術・博物館』で1年ほど前にとりあげられていたことを、帰宅してから調べて思い出した。
ココシュカ
No.35〜39。wikiによるとクリムト、シーレと並び、近代オーストリアを代表する画家の一人なんだそうな。まったく知らなかったが、この展覧会で一番よかった。
それにしても、この、ものすごく、人を不安にさせる表現はいったいどういうことなんだろう。『恋人と猫』(No.37)なんかは、遠くから見ると、亡霊だか悪霊に襲われている女性の絵かと思った。解説を読むと、第一次大戦の従軍を経て精神を病んだとあった。この絵は1917年の作品だが、1947年の『モンタナの風景』(No.39)は絵のタッチこそ同じだが真逆の明るい作風。
クレー
No.47〜50。クレーは好きな画家だ。相変らずの安定感。どこがいいのか、と聞かれたら全く説明できないのだけど。
コンポジションのようなのもいいけど、抽象のようでいて抽象じゃない、落書きみたいな作品がどういうわけかツボにハマる。で、今回のそれは、『狩人の木のもとで』(No.50)なのだった。
アウグスト・ジャコメッティ『色彩のファンタジー』
No.53。抽象絵画の部屋で目を奪われたのがこの作品。タイトルどおりの色彩感覚もよかったが、なんといっても、色の着いたキクラゲを貼りつけたような画法がおもしろかった。この陰影は、絵ハガキや図録では分からないだろう。
アルベルト・ジャコメッティ
No.69〜74。名前は知っていたけど、(たぶん)実際に作品を見たことのない作家。しかしこれが素晴らしかった。魚のマンボウのように、にょーんと伸びた人物は、それでも正面から見るとちゃんと人間に見えるのが凄い。それになんてったって、おもしろすぎる。
ところでちなみに、上述のアウグストは親戚なんだそうな。

予想以上に楽しい展覧会だった。特にココシュカとジャコメッティは大収穫だった。
クレーのマウスパッドと、絵ハガキを10枚買った。絵ハガキは特典が付いていて、5枚買うと作品をあしらったシール、10枚だとブックマークをもらえる。というわけで、モンドリアンの『赤・青・黄のコンポジション』のブックマークをゲットしたのだった。

この時点で11時。オルセーを見たら昼ぐらいになるだろうか。
と、会場を出ると、たいへんな騒ぎだった。2階のオルセー展の行列が2階だけで収まりきらず、1階にも列ができていたのだ。こりゃもう美術鑑賞どころじゃないや、ということで、とりあえず地下のカフェに避難して早めの昼食をとったのだった。サーモンのサンドイッチが美味しかった。
すっかりあてが外れて時間があまってしまった。近くのサントリー美術館で開催中の高野山展は、前売券を買ってはいたが今日は持ってきていない。いろいろ考えた末、五島美術館でちょうど国宝の紫式部日記絵巻が展示されていることを思い出し、六本木から上野毛に行くことにした。


秋の優品展 絵画・書跡と陶芸

六本木からは乗り換えだなんだで1時間近くかかった。それでもまだ時間は14時過ぎだった。
五島美術館の国宝・紫式部日記絵巻の展示期間は10/11-19のわずか9日間。どうせゲロ混みだろうが、オルセーに比べりゃたかが知れてるだろう。この機会を逃がしてたまるか、くらいついてでも見てやる、と思って行ったら、そんなことはなくて、ゆっくりとかぶりつきで鑑賞できた。

この絵巻は実に素晴らしかった。第三段の貴人たちの衣装は、2種類の黒を使い分けていて、黒の中に黒で模様が描いてある。女房の服も、蝶やらの紋様が艶やかだ。貴人が女房をつかまえて扇子でうりうりしているのが、テレビ時代劇の悪代官が女中をからかっているのとダブって見えて、笑えた。
他には第一段での高欄の釘隠しの描写がよかったし、第二段では赤ん坊(のちの後一条天皇)がどう見ても眠っている坊さんにしか見えなかったりとかいう笑い要素もあった。同じ部屋には江戸時代に描かれた大江山絵巻も展示されていたが、それと比べると紫式部の精緻さがより感じられた。

紫式部の3枚組絵ハガキセットを買ってから、またまた電車で今度は新宿に行き、伊勢丹をぶらぶらしたあと食事をして帰った。
(国立新美術館と五島美術館・2014年10月12日観覧)