10何年ぶりだかで開催の日本国宝展。開催を知ってから楽しみにしていた。にもかかわらず、目玉が土偶とはイマイチだなあと半ばがっかりしていたら、開催の2ヶ月くらい前になって正倉院宝物が特別出品されるとのアナウンス。開催の10日くらい前になってようやくアップロードされた出展リストを検討し、前期と後期に1回ずつ行くことにした。
前期のお目当ては正倉院宝物(国宝じゃないけど)と、源氏物語絵巻だ。土偶が5体揃うのは実は後期になってからなのだった。
博物館に着いたのは開場約10分前。かなりの行列になっていた。9:30になって門が開き、粛々と中庭を進む。平成館の前で待たされて、実際に展示室に入れたのは9:40くらいだった。
入ってすぐの仏足石と、居並ぶ挨拶板(そんなもの読んでないで早く展示を見ればいいのに)、それに玉虫厨子に群がる人が多くて早くも大混雑の様相だった。正倉院宝物はその同じ部屋に展示されていた。
以前見たことのあるものとか東博所蔵のものとかはすっ飛ばして見たのだが、それでも1時間くらいかかった。でも1時間かかったとは思えないくらい、あっという間に感じた。それだけ充実した展示ということなのだろうと思った。
そのあとは、後期にはもう見られなくなってしまうものを中心に、もう1回まわった。
お土産コーナーには「国宝店」とかいう名前が付いていた。家に週刊朝日百科「日本の国宝」があるので、図録は買わなかった。その替わり絵ハガキをたくさん買おうと思ったら、なんとも残念なセレクションで、チケットやチラシにもあしらわれている新国宝・安倍文殊院のポロンちゃんと、今日見た2体の土偶の合計3枚だけ買った。レジはロープで制限するほどの混雑ぶりだった。レジ待ちのとき、自分の前にいた20代くらいの3人組の女性が、3人とも揃って縄文のビーナスのぬいぐるみを持って並んでいる光景はなんだかシュールな感じがした。
あと、土偶のガチャガチャをやった。3回やったら、うち2個が「ごめんなさいもうしません」土偶だった。
平成館を出たら、入場待ちの列がひどいことになってるだろうと思っていたら、誰もいなくてすんなり入れる状態だった(それでも展示室は混んでいたけど)。11:30だったので、東洋館のオークラで昼食をとった。少しだけ待たされたが、こちらはまだ大した混雑ではなかった。食後は、国宝展のためにほとんど国宝がない本館をひとまわりしてから、次の目的地である三井記念美術館へと向かった。
(東京国立博物館・2014年10月18日観覧)
まあまあ興味のあった展覧会。タダ券が手に入ったので、ならば是非、ということで行ってみることにした。10月中なら同じ国立新美術館で開催中のオルセー美術館展も見られる。ついでだからこっちも見てみることにするか。
開場は10時。メトロ乃木坂駅に着いたのは9:50くらいだった。改札を出ると、地下の臨時チケット売り場が大騒ぎ。えっ、そんなに混んでんの、と思ったら、オルセー展のチケットを買う人達だった。
そこらじゅうにオルセー展の案内が溢れていて、あれ、チューリヒ展ってやってんのかな、というくらいな感じだった。チューリヒ展の会場は美術館の1階で、オルセー展が2階。乃木坂駅改札から続く人の波は、美術館に入った最初の角を左に曲がったすぐのエスカレータで分かれ、そのほとんどが2階に上っていくのだった。
到着時は10時ちょっと前だったので、まだ入れないだろうと思っていたら、豈図らんや、すでに開場していた。まだ絵を見る気になっていないうちに流れのままに入場してしまったもんだから、なんだか入りこめずに変な気分のままの鑑賞開始となってしまった。
クリムト、シーレと並び、近代オーストリアを代表する画家の一人なんだそうな。まったく知らなかったが、この展覧会で一番よかった。
予想以上に楽しい展覧会だった。特にココシュカとジャコメッティは大収穫だった。
クレーのマウスパッドと、絵ハガキを10枚買った。絵ハガキは特典が付いていて、5枚買うと作品をあしらったシール、10枚だとブックマークをもらえる。というわけで、モンドリアンの『赤・青・黄のコンポジション』のブックマークをゲットしたのだった。
この時点で11時。オルセーを見たら昼ぐらいになるだろうか。
と、会場を出ると、たいへんな騒ぎだった。2階のオルセー展の行列が2階だけで収まりきらず、1階にも列ができていたのだ。こりゃもう美術鑑賞どころじゃないや、ということで、とりあえず地下のカフェに避難して早めの昼食をとったのだった。サーモンのサンドイッチが美味しかった。
すっかりあてが外れて時間があまってしまった。近くのサントリー美術館で開催中の高野山展は、前売券を買ってはいたが今日は持ってきていない。いろいろ考えた末、五島美術館でちょうど国宝の紫式部日記絵巻が展示されていることを思い出し、六本木から上野毛に行くことにした。
六本木からは乗り換えだなんだで1時間近くかかった。それでもまだ時間は14時過ぎだった。
五島美術館の国宝・紫式部日記絵巻の展示期間は10/11-19のわずか9日間。どうせゲロ混みだろうが、オルセーに比べりゃたかが知れてるだろう。この機会を逃がしてたまるか、くらいついてでも見てやる、と思って行ったら、そんなことはなくて、ゆっくりとかぶりつきで鑑賞できた。
この絵巻は実に素晴らしかった。第三段の貴人たちの衣装は、2種類の黒を使い分けていて、黒の中に黒で模様が描いてある。女房の服も、蝶やらの紋様が艶やかだ。貴人が女房をつかまえて扇子でうりうりしているのが、テレビ時代劇の悪代官が女中をからかっているのとダブって見えて、笑えた。
他には第一段での高欄の釘隠しの描写がよかったし、第二段では赤ん坊(のちの後一条天皇)がどう見ても眠っている坊さんにしか見えなかったりとかいう笑い要素もあった。同じ部屋には江戸時代に描かれた大江山絵巻も展示されていたが、それと比べると紫式部の精緻さがより感じられた。
紫式部の3枚組絵ハガキセットを買ってから、またまた電車で今度は新宿に行き、伊勢丹をぶらぶらしたあと食事をして帰った。
(国立新美術館と五島美術館・2014年10月12日観覧)
俵屋宗達の国宝風神雷神図屏風が5年ぶり「見参」とか。でもそれだけではどうもなあと思っていたら、たぶん見たことのない誓願寺盂蘭盆一品経縁起(国宝)が出典されるという。これは4/6までのわずか2週間の展示だ。この時期なら本館裏庭の桜もきれいだろうし、法隆寺のお面の部屋も開いているだろうし、ちょうどいいか。
で、よくよく見たら、なんと開会後1週間限定の超割引チケットなるものが発売されていた。これ、ドンピシャじゃん。え、発売は1/13まで? ・・・ というわけで、普通の前売券を購入しての観覧となった。
9:20に着いたらまあまあの混み具合。時間になり、4列に並んで入場。しかし今日はダッシュや速足の人がいない。それでどうにも歩みがのろい。しびれを切らして(でも顰蹙を買わないように)じわじわと追い抜いていった。平成館脇の枝垂れ桜がきれいに咲いていた。
もう一度会場を一周したあと、絵ハガキを3枚買った。そのあと最後にもう一度、海北友松の雲龍図と、風神雷神図を見てから会場を出た。それでも10:30だった。
裏庭で桜を見たあと、本館で「博物館でお花見を」なるスタンプラリーをした。本館の展示で桜に関係した作品の近くにあるスタンプを集めるとカンバッヂがもらえるというものだ。バッヂには桜と観音の柄があったが、2人とも観音にした。
平成館に戻ってラウンジの鶴屋吉信の菓子で食いつないでから、法隆寺館に行って久しぶりにお面を堪能した。
独特の、息詰まるほど静かな雰囲気がいいところだが、この日はやけに人が多くてわさわさしていたのが残念だった。そう言えば本館も人が多く、いやに外国人率が高かった。
そろそろ疲れたので東博を去ることにしたが、その前に、iPhone アプリの「トーハクなび」のスタンプラリーをコンプしたので景品を引きかえにまた本館まで行った。景品はなんと風神のカンバッヂだった。公式英語サイトを見ると、雷神のカンバッヂもあるみたいだ。
東博のあとは芸大美術館の「観音の里の祈りとくらし」展を見に行くことにした。
入ったらちょうどトークショーだかなんだかをやっていて、凄い人だかりだった。仕方なく、隣の展示室の芸大コレクションとかを見て時間をつぶすことにしたが、芸大の所有する国宝の絵因果経が出ていたのはラッキーだった。他には曾我蕭白もあった。やはり自分はこの人のマンガちっくな絵が好きになれない。
肝心の観音の里展では、チケットにもあしらわれている重文の千手観音のなかなかシックなクリアファイルが配られて、もうそれだけでトクした気分になってしまった。
狭い会場に18体の観音像が押し込められていた。ほとんどが平安時代の仏像で、うち重文は18体。クリアファイルの日吉神社の千手観音もよかったが、文化財指定のないものにも良いものが多かった。ただ、人が多いし、雑然とした雰囲気だったのだけが残念だった。
観音展のあとに芸大美術館のカフェで滋賀から取り寄せたとかいう大福を食べて休憩し、花見客でごった返す上野公園をそぞろ歩きしたあと新宿に出て、夕食にすっぽん鍋を食べた。えんぺらが超美味だった。
(東京国立博物館・2014年4月5日観覧)
根津美術館に、孤篷庵所有の大名物にして国宝の井戸茶碗「喜左衛門」が来るので見に行くことにした。もしかしたら過去に見たことがあるかも知れないが、少なくとも、茶道具に興味を持ち始めたここ2年ほどの間には見ていない。
この冬、三井・五島・根津の3つの美術館がタイアップして『茶陶三昧』というキャンペーンを打っており、いずれかの入場半券を提示すれば他館の入場料が割引となる。10/14に三井美術館の「国宝卯花墻と桃山の名陶」を観に行ったので(この展覧会じたいは印象が薄く、そのあとに寄った貨幣博物館の方が面白かった)、その半券を使って、根津を割引きしてもらおうという算段だ。ちなみに五島は国宝がなかったのでパスした。
美術館に到着したのは開館直後。どうせ空いてるだろうと思ったらなかなかの賑わいだった。お茶会があるらしくて、そのついでの人が多いようなようす。
展示室に入ってすぐの単独ケースにお目当ての国宝喜左衛門を見つけ、ひとしきり眺めたが、なんだかよくわからん。とりあえず国宝を見るだけは見て、ほかのものを見ようと周りを見渡して、ぎょっとした。
展示されている茶碗はすべて井戸茶碗なのだ。どれもこれも、全部が全部、おんなじ茶碗にしか見えない・・・ こっ、これはレベルが高い。
しかたないので展示室の解説に頼った。てか、最初からこれ見れば良かったのだけれど。
曰く、大井戸茶碗の見どころは、轆轤目、竹節状の高台、高台内の兜巾(とは言っても鏡の上にでも展示しないと見えないし、この展覧会はそうではなかったのだけど)、枇杷色の釉、総釉、高台の
対して小井戸は、大井戸に比べて浅めの碗形、わずかに口径が小さく、高台も小さく低い。あとは大井戸と同じ。
いっぽう、青井戸茶碗というのもある。だが色は青とは限らず、むしろ共通するのは、高台から口径までがほぼ直線、高台が低い、轆轤が強いという点。また、釉薬のかからない火間が見られる。火間は釉薬を柄杓で掛けるとできる。大井戸も柄杓がけをすることはするが、丁寧に作るので、火間は見られない。
そんなこんなで、一回りして二回りめに入ると、おぼろげながらも味が分かったような気がしてきた。特に梅花皮はそれぞれの茶碗の違いが大きく出ていて面白かった。
というわけで、やっぱし茶碗は奥が深いのだということを改めて思い知ったのだった。とりあえず、我々ふたりは細川が一番よかったということで意見が一致した。
このほかの見ものとしては、展示室6の国宝「鶉図」があった。また、根津は青銅器もよい。
庭園の一角にある NEZUCAFE で数量限定のハンバーグとニース風サラダを食べ、新宿で買い物をしてから帰った。
(根津美術館・2013年12月7日観覧)
自分はミュシャにはそれほど興味がない。テレ東の『美の巨人たち』の放送も観たけど、なんかあんまり入り込めなかった。が、運良く招待券をゲットしたので、まあ、観に行ってもいいかな、と思った。
なかなか土日の都合がつかないうちに、会期末が近づいてきた。そこで金曜の仕事上がりに相棒と待ち合わせて行くことにした。美術展はちゃちゃっと切り上げて、そのあとにどっか旨いメシでも食いに行くとしよう。
終業と同時にダッシュしたら、横浜そごうには18時前には着いた。ディナーの予約は19時半なので、時間はたっぷりだ。会場は、空いてるかと思ったら、まあまあの込み具合。やはり仕事上がりっぽい人が多かった。
入ってすぐは、ぽくない絵ばかり。まだ自己のスタイルを確立する前の作品みたいだ。
しかし進むとやがて、いかにもミュシャなキレイキレイ系の絵が登場してきた。ふうん、と思いつつ眺めていると、コーナーを曲がったところで大ポスターが並んでいた。
それは「ジスモンダ」をはじめとする、サラ・ベルナールをフィーチャーした等身大くらいのポスターだった。これらはさすがに見応えがあった。
自分が感心したのは、画よりも総体的なデザインというか、フォントと全体との調和だ。レンガ調だったりポップ調だったりの文字が、背景に見事に溶け込んでいる。「第6回ソコル祭」などは、1862とか1912とかの数字が字としてではなく、完全な装飾デザインと化して配置されていた。
最後に会場をもう1周した。今まで食わず嫌いだったが、初めてミュシャをイイと思った。期待していなかった分、尚更よかった。
絵ハガキはどれも人物部分を大写しにしたものばかりで、自分にとって一番興味深い字の部分が見事にカットされていてガッカリ。そこでいっそのこと、と思い切って図録を買った。図録に掲載された図版は褪色が復原してあって、展示作品よりもキレイなので逆によかったかも。そのほか、数枚の絵ハガキと、ダロワイヨとのコラボ商品のチョコを買った。これはパッケージが「椿姫」のデザインの缶なのだ(これも文字部分がカットされているのがとても残念だ)。
さて、楽しみにしていたディナーはひっさびさのオ・プレチェネッラ。メインにいただいたドンブ産うずらのフォアグラリゾット詰めは濃厚で、どっしりと食べごたえがあった。満足な花金だった。
(そごう美術館・2013年11月29日観覧)
タイトルからして仏頭推しのこの出開帳、実は東金堂の十二神将が揃って間近で拝めるというのも魅力的。いつもは東金堂で横一列に並んでいて、距離も遠いし薄暗いしでなかなかじっくりと見ることができない。
上野駅構内の美術展チケット売り場でチケットを買ってから芸大美術館に向かう。芸大美術館は2004年の興福寺国宝展以来だから9年ぶりだが、その時の印象がとても強くて、今でも館内のようすは結構記憶している。おそらく仏頭は3階の展示室におわしますに違いない。
到着は10時ちょい過ぎ。チケットを買い求める列を尻目にさっさと入場し、「順路は地下からでーす」という案内をものともせずにエレベータで3階に向かった。
3階の展示室にはすでに10人ほどの観覧客がいた。そしてそこは予想どおり、仏頭と十二神将だけのスペースとなっていた。いや、厳密には、仏頭の裏側に特別陳列の深大寺の釈迦如来があったが、そこはいかにも世界が違っていて、仲間外れの釈迦如来は居心地が悪そうだった。
ほかにも扉絵とかもあったけど、なんといっても3階の濃密空間が良かった。満足、満足。
絵ハガキを4枚買ってから、ミュージアムカフェに移動。地ビールセット(曽爾高原ビールと、柿の奈良漬・きびなごのつまみセット)を飲んでから、相棒は大和豚のグリル、自分は大和鶏の照り焼き丼を食べて満腹になってから家に帰った。
(東京藝術大学大学美術館・2013年11月2日観覧)
東博は本館と平成館との連絡廊下に、他の展覧会のポスターが貼りまくられているのだが、4月に大神社展を見に行ったときにそこで何となく目についたのがこのレオ・レオニ展だった。『フレデリック』の栞型の割引券があった。すっとぼけた顔が何とも言えず、イイ。
小学校の国語の教科書でお馴染み、ということらしいのだが、自分はまったく知らない。単純に、絵そのものに興味を持ったので行くことにして、前売券を買っておいた。
どうせ空いてるだろ、と思っていたら、日曜の開館ちょっと後に行ったのに親子連れで結構な混雑だった、というブログ記事を見たので、とりあえず開館10分前に着くように出かけてみた。
朝から強烈に暑くて猛暑日確定の様相だった。駅からなるべく地下道を通って行くことにする。東急本店へは109横の出口が一番近い。地上に出ると、道の向きと太陽の差し込む向きが完璧にシンクロしていて灼熱地獄だった。
道を歩いていて渋谷にしては親子連れが多いなと気になったが、やはりみんなライバルで、Bunkamura へと吸い込まれていく。ざっと数えてみると、我々はだいたい60~70番目くらい。Bunkamura は開館前の行列ができても屋根の下に入れるので安心だ。
小さい子も多くて、さだめし中は阿鼻叫喚の・・・と思ったら、美術館的な雰囲気を察知したのか、小声で話している子供ばかりで、無闇に走り回ったり、泣き喚くような子はいなかった。逆に、美術館的な場所に慣れていない大人の方に声高に話す人がいてうるさいくらい。
作品の展示位置が普通の美術展と同じだったので、子供にはちょっと高すぎると思ったが、手の届くところだとガンガン触られてしまうだろうし、よほど小さい子は抱っこしてあげればいいのだろう。
作品は、彫刻なんかもあったが、ほとんどが絵本の原画。原画はインクとかで塗られてるものと勝手に想像していたが、意外なことに、水彩や貼り絵が多く、色鉛筆や油彩もあったりして、実にバラエティに富んでいた。
みどりのしっぽのねずみは油彩で、仮面を焼くラストシーンでは、焚き火の前のねずみの顔が、火に当たっているようにほんのりとベージュのグラデーションが施してあり、絵本とはいえ中々こまかいなあと感心した。
シオドアとものいうきのこは、きのこで埋め尽くされたシーンがよかった。「Quirp」の吹き出し(このフォントがまたなかなかイイ)のついた一面の青いきのこがポップでおもしろかった。この「Quirp」の意味というか語感が自分にはわからなかったのがちょっと残念だった。訳絵本でも「クイルプ」とそのままになっているようだ。
教科書で有名だというスイミーは、原画はなかったが、なかなか楽しい仕掛けがされていた。一番奥の一角の壁に、小さな魚をたくさん映す映像コーナーになっていたのだ。アクアリウム同様ゆらゆら泳いでいるのを見ているだけでも飽きないのだが、その魚に近づくと魚たちが逃げ出すという仕掛けになっている。それが時折、ちゃんとみんなで大魚の形になったりする。もちろんスイミーはちゃんと目の役をしていた。
親子連れは最初から律儀に順序よく見ているので、開館してもしばらくはこのコーナーまで到達していない。魚を追いかけたりして遊んでみたら、案の定楽しかった。
30分くらいで一通り見終えてショップコーナーに行ってみると、レジの前に行列整理のガイドテープが張り巡らされていた。銀行のATMコーナーにあるようなやつだ。どうやら混雑時には活躍するようだが、幸いまだ行列はできていなかった。絵ハガキ7枚と、フレデリックの携帯ストラップと、(随分早いけど)来年のカレンダーを買った。
最後にもう一周しようとスタート地点に戻ると、人だかりが凄かった。もうじっくり観るのは難しいような状態。まだ10:45だ。スイミー映像コーナーには子供がたくさんいた。みんな遊び方を知らないらしく、大人しく座って眺めていた。親が手本を見せてやらないとだめなのかもしれない。
会場を出ると、入口には相当な列が出来ていた。Bunkamura でここまで凄いのは初めて見た(が、それは自分が印象派展みたいなのに来たことがないからかもしれない)。行列は、子供やベビーカーで雑然とした感じだった。
展覧会の半券提示でスパークリングワイン(又はオレンジジュース)のサービスがある本館8階のレストラン「タント・タント」で食事をしたあと(ここのパスタは絶品だ)、半券提示でイタリアワインが10%割引になる地下のワイン売り場でワインを買い込んでから、帰宅の途についた。田園都市線から見た多摩川のBBQ広場は猛烈な人出で凄まじいことになっていた。朝から暑い一日だったが、結局東京は34.6℃止まりだった。
(Bunkamura ザ・ミュージアム・2013年7月14日観覧)
テレ東系『美の巨人たち』の放送を見て興味を持った展覧会。牧野邦夫という名はこれまで全く知らなかった。作品は個人蔵が多く、これほどの数が集まることは珍しいというので見逃せないと思った。
さらに、4月に行ったばかりの大神社展のチケットがなんと懸賞で当たってしまったので、その後期展示のチェックと合わせて東京へ出かけることとなった。
混雑は大神社展の方が凄いだろうという予想から、まずは上野へ向かった。上野公園に入ると、西洋美術館のラファエロ展の行列が凄いことになっていた。列は角を曲がってさらに続いていた。数百人はいると思われた。
9:25に東博の門前に着くと、並んでいるのは50人くらいだった。しかもこのうち半分は、国際美術館の日に合わせて無料開放の常設展を見にきた人たちで、列が分かれると大神社展はたかだか30人くらいになってしまった。会期中盤を過ぎて残り2週間でのこの有様からすると、たぶん大コケなのだろう。
後期の展示で見たかったのは北野天満宮所蔵の『北野天神縁起絵巻』と、青森の櫛引八幡宮の鎧である。『北野天神縁起絵巻』といえば、雷神と化した天神様が怒ってる巻五の印象が強いが、展示は巻八で、なんだかとてつもなく地味で、かなりがっかりした。青森の鎧は美しかったが、なんだか訴求してくるものがなかった。例えて言うなら、美人なんだけど、なぜか顔を覚えられないファッションモデルとでもいうか。兜から何から一式揃っているのが最大の価値で、美術的にはそれほどのものでないのかもしれない。
というわけで、10時過ぎには平成館を出た。本館でやっていた『古地図と地誌』の展示を見てから(地図好きにとってはこれはなかなか面白かった)、池の端薮で昼食に蕎麦を食べたあと、山手線・西武線と乗り継いで中村橋の練馬区立美術館に着いたのは12:30を少し過ぎたくらいだった。
館内はさほど混んではいなかったが、かと言ってがらがらでもなく、ほどほどの入りだった。会場は1階と2階に分かれていて、順路としては1階から回るのが正解だったが、(我々はそんなことを知らなかったので)2階から見て回った。
かなりの数の作品に千穂夫人のコメントが寄せられていた。
TVでは自画像の多い画家という解説だったが、実際にそのとおりだった。しかもそのクオリティが高いのがいい。展覧会じたいのサブタイトルが「写実の精髄」なのだが、フツーの自画像だけならそう言えなくもないが、現実にはあり得ない光景の中の自画像だったりして、そうすると果たして「写実」と言っていいのかどうか、自分にはちと疑問に思えた。
絵ハガキはセレクションがビミョーで、図録代わりの画集は3,300円もしたので、悩んだ挙句に結局どちらも買わなかった。だが観覧料は500円とイマドキにしては安く、その割には充実した展示で、よい展覧会を見たあとの快い気分を味わえた。
池袋のデパートをぶらぶらしてから新宿に出て、「達 菊うら」で食事をして帰った。
(練馬区立美術館・2013年5月18日観覧)
なかなか公開しない神社のお宝がわんさか出るという噂の展覧会。国宝・重文160件という。が、出品リストを見ると、例によって「○○出土品」とかが多く、正直ビミョー。だが見たことのない国宝もいくつかあるので、一度は行っておいた方がよいだろう。
展示は前期・後期に分かれるが、リストから前期を選択。前期の雰囲気で、後期にも行くかどうか考えることにした。
開場時間ちょっと前に門前に着いたが、入場待ちの列は、列というほどのものでもなかった。まだ会期初めだからか、それとも内容が地味過ぎるのか。
9:30になり、ゆりの木の枝にとまったカワラヒワが鈴のような美しい声で鳴く広場を、平成館へ向けてしずしずと進んで行った。庭の芝で和んでいたツグミが、急に押し寄せた人たちに驚いて飛び去った。
地味に面白かったが、コレといった目玉がない感じは否めない。強いて言えば七支刀がそうなのかも知れないが、それにしてはPRが今ひとつ。『空前絶後の神道美術展』を謳うのならば、三井寺展の黄不動クラスのような、生きている間に一度お目にかかれるかどうかという超レアものが見てみたかった。たとえば吉野水分神社の玉依姫命坐像だとか。
後期でも見たいのは北野天神縁起と、青森の櫛引八幡の鎧くらい。どっちもその気になれば現地に行って見ることができるわけで、そう考えると自分にとってはもう一押し足りない気がして、後期は行かないことにした。
なわけで、11時前には平成館を出た。自分たちにしては早い。絵ハガキもなんだかピンとくるものがなくて買わなかった。カタログは見る気も起きなかった。でも、繰り返すが、地味に面白かった。
本館2階で新指定の国宝・重文展示を見てから、東洋館のレストランゆりの木でかつりんは雉子丼、相棒は伊勢うどんを食した。いずれも、神社展にちなんで伊勢の食材を使ったものだった。ついでに神都ビールという地ビールを飲んだ。
午後は、本館・新装なった東洋館・法隆寺館など、フルコースでじっくり見て回った。博物館を出たのは閉館近い16時半過ぎだった。年に何度かは訪れる東博だが、そこまで長時間いたのは記憶にはない。夕食に新宿ですっぽん料理を食べてから帰宅した。
(東京国立博物館・2013年4月20日観覧)
静嘉堂文庫美術館の所蔵する国宝・曜変天目茶碗が展示中とのことなので、見に行ってきた。
静嘉堂文庫は二子玉川駅から歩いて行ける距離だが、1年ぶりで道がうろ覚えだったので、バスを利用した。美術館に着いたのは10時を10分くらい過ぎていた。思ったより人が多かった。
一碗の中に宇宙を見るかのような神秘的な茶碗とある。自分は万華鏡を連想した。
曜変天目や油滴天目、仁清の吉野山茶壷などの照明には有機ELが使われているとのことで、言われてみれば自然な色だったような。ただ、そのせいかどうかわからないが、壁面の展示ケース内の作品は逆に暗く見えた。付藻茄子などは現物よりも絵ハガキの方がよく見えるほどだったのだ。ガラスの反射も見難さを増している。そういえば、新装なった根津美術館のガラスは反射がなく、まるでガラスなんかないように錯覚するほどで、凄かったのを思い出した。
帰りは二子玉川駅まで歩いて行った。
前年にも静嘉堂の帰りに寄った、高島屋にある『金澤の寿司 華爛』という店で昼食をとった。やっぱり穴子は美味かった。酒は白穂乃香ビールを飲んでから、能登飲み比べセット(遊穂・池月・千枚田)に移った。ランチセットにほたるいかがなかったので追加し、調子に乗って、なめらという魚の薄造りと、のど黒の蒸し握りというのも追加した。そして池月を追加で飲むことにした。やっぱりほたるいかは美味かった。なめらはもっちりとした食感と甘味がこれまた美味だった。少し待たされてから出てきたのど黒は、握りというよりは蒸し物の範疇だろう。これまた繊細な味わいがよかった。そしてこの店は、寿司屋なのにプリンが激しく美味い。
大満足で店を出たのだが、懐がシベリア並みに寒くなった。
(静嘉堂文庫美術館・2013年3月16日観覧)